微睡む猫のちょっとした意地
芽衣を呼びに俺が部屋に戻ると、そこにはずたずたになったシーツと
その部屋の隅で俺のシャツを着、その上にコートを羽織るという、とりあえず寒いからという格好の芽衣が足を抱え小さく三角座りをしていた。
しかもぶつぶつと独り言を呟きながら。
そしてその背中には哀愁が漂う。裸足の足は床にそっと差し出されていた。
……なんだか声がかけにくい。というか声をかけたくない。
という風に結論を出したカイトは傍らで逆さまになって倒立をしながら腕立てをし、トレーニングをこなしているチャキに声をかける。は、は…と呼吸音が一定の間隔で漏れてくる。
ていうかお前ら何やってんだ……ここ俺の部屋!
そして聞いて見たところ”起こしただけ”と言われ、じゃーなんでシーツボロボロだよ、と問えば
今度は”起きなかったから”と返事がかえって来る。
「起きなかったからってナイフ投げる奴があるかぁぁぁぁあ………!!」
芽衣が叫ぶ。チャキに物申したいようだ。
「何なんだ。カイトの顔の次はナイフですか? 朝から襲撃とか私何かした?」
オイ、ナイフと俺の顔同列かよ……。「ていうか顔のすぐ横にナイフが刺さってるとかないわー」確かに心臓に悪いことこの上ないな。
「起きなかったじゃん」
「殺気で起きたくなかったわ! あ、カイトごめん。シーツ……」
「防ぐのに使ったのか?」
ナイフを。
「うん。あ……もう足が冷たい」
冷たさが感じる程度には我に帰った芽衣である。
「起きたんだから。いーじゃん」
「いーじゃん、で何でもすむと思うなよ。アンタ私のこと嫌いだろ」
「嫌いだな」
「………そう」
ケッと嘆息する芽衣。
「ふつーないよね。朝から襲撃」
睡眠の邪魔しやがってと低い声で芽衣は唸る。
まぁ……と俺は何とも言えない顔をした。なぜならば
「カイトさん。いつものことですよね」
とチャキが目で語る。
ですよねー。
俺には朝から乗り込んでくるバカな知り合いがいる。残念ながら。
俺だってゆっくり眠りたいわ。自分の部屋でくらい。しくしく。
「どうしたの……?」
「何でもナイデス」
「………???」
「あぁ、芽衣これ今日の着替えだ」
と手渡したのはセシルさまが手配して置いたらしいこの国の普段着だ。最近冷え込みが激しくなってきたので、それなりに分厚い生地で、それは少し重い。
「ありがとう。じゃ、悪いけど二人とも出て行ってくれる?」
今の芽衣は機嫌が悪いらしい。目が笑っていませんな。
「というわけで、チャキが芽衣を連れて来ないから俺が来たわけなんだが」
と寒い廊下で芽衣を待つ2人。
「あー。やろうと思えばできたんですけど。寝起きなせいか暴れる、暴れる。毛を逆毛立てて威嚇されましたよ」
まぁ痛くも痒くもないですが、と付け加えるチャキだった。相変わらず可愛げがない。とはいえカイトと比べ背の低いチャキはカイトからすれば頭の天辺が見えるのみなので、表情からその可愛げのなさを察したのではない。
屈まないと見えないしな、顔。
……へぇ、と相槌をうつも。ここではその反応も当然かとも思う。チャキも昨日あったばかりの人間で、しかも顔すら晒していないのだからと、くあ…と浮かんでくる欠伸をぐっと手で咄嗟に押さえた。
「おまたせ。それで私を呼ぶってことはこの前のことは一段落ってことなのか」
と服を着換え終わった芽衣がバン、と音を立てて扉を開けた。
「ふぁ……、あぁ」
欠伸が結局出てしまった。
「でも私が居ても居なくても意味はないでしょ?」
「あー。まぁ行けばわかる」
廊下で言うにはその内容は憚られたので俺は言葉を濁した。
それに芽衣はふーんと言うのみだった。
「じゃ、いきましょー。カイトさん」
「あぁ、芽衣。手」
「あー、ありがとう。でもいいや大丈夫」
差し出されたカイトの手を避け、チャキを追って芽衣は歩き出した。
「え……。」
その場に取り残されたカイトは芽衣の態度に首をかしげつつも、彼らを追っていった。
すいません、久しぶりの投稿ですが。短い上にあんまり進んでません。
でもきりがいいのでここで。




