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ある日の午後  作者: ラゼル
Chapter 4
52/72

無自覚って性質悪いよね。

明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。


彼の無自覚な行動に心臓をバクバクさせながらも、なんとか顔に出さないように奮闘して、髪型も整えてもらった。髪を巻くのは時間がかかるので編みこみをするらしい。本当に器用だよな。


 私は他の人のなら出来るけど自分の出来ないんだよなぁ、ヘアアレンジ。


 肩より少し下まである髪をきっちり左右に分けてみつ編みが見えるように表に編みこんで残った髪をグッと中に入れて前髪もクリームで固められる。これ、動いても髪形崩れないだろうなぁ、すごい。しかしこれ外す時も大変だぞ。お風呂入んないと元の髪型に戻らないかも。



「完成です。ふふ。やっぱ僕ってこういう才能ありますね」

 え、悦に入ってます……? とは口に出さずにずり、と軽く身を後ろに退く。


 この人との距離感のとり方がわからん。向こうからガッと来るので取り様がない様な気もするけど。


「じゃ、僕カイト先輩の髪やってきますので出来るだけ動かないでその格好崩さないように頼みますねー」と上機嫌でカイトの方へ向かっていった。


 暇なのでカイトのほうの仕上げを見学することにした。いつもより格好付けてっていうのか、前髪を上げておでこを出して、トップの髪を少し遊ばせる。そして後ろ髪もセクシーに見苦しくない程度にたらす……。


 侮れねぇ……ヒューイさん。ツボ分かってるわーとごくりと唾をのむ。


 ――そういや、私の格好どんなんだろ、鏡見たいけど動くなって言われたしな……。


「……ふぅ。終わったか。こういうのはやっぱり性に合わんな」

と襟元を崩そうとするも、ハッと我に返る。そりゃあこれから宴だもん始まる前に崩しちゃ本末転倒ってもんだ、とうっかり笑って口元を押さえようとするも、私もハッと我に返る。


 口紅塗ってたんだった……。あぁ、だからメイク苦手なんだよなぁ。うっかりうつぶせにベットに転がることも出来やしないし、目もぐりぐりと拳では擦れない。鏡見ながら綿棒でちょいちょいと直すとかしない……と、この後を思うとげんなりする。


 ひょいとカイトと目が合い、お互いの今の心情が通じ合ったようで、疲れた笑みを交わす。

おつかれさまでーす、いえいえそちらこそご苦労様です、なんてね。


「あ、カイトかっこいいね」

 と右と左の手を合わせて言う。


 そう、只でさえいつもより豪華な白い式服だったのに、さらに手袋プラスに髪型もヒューイさんの気合が入っていつもより上品だし。でもそれが逆に男の人本来のパーツをより際ださせている。


 素手なんてけっこう豆とか多かったくらいだもんなぁ。顔が綺麗だからそれが不似合いで目に付くんだ。


「そうか……?」

と笑いながらもあんまり嬉しそうじゃないなぁ……、まぁ言われなれてるわな。


「うん、女の人ゾロゾロ釣れそう」

えぇ、この色気は伊達じゃないな、うん。それに……少し怖いくらいだしな。


「……女がそんな事いうもんじゃねぇよ、姫さん」

……うん、お姫様より姫さんの方が響きは好きだよ。ナイス。


「いいじゃない、褒めてるんだし」


「まぁ褒められるのはあり難いけど、でも


――と言いかけながら深い青の目が私の目を貫く。


……なんかお前冷たいな。機嫌悪いの?」


「……え」

そう見えた……? 別にそんな事ないと思うけど。


「そんなことないと思うけど……」

と首を傾げる。そりゃあ怒涛の展開で多少疲れてるとは思うけど、カイトに当たるくらいにはイラついたり、怒ったりするようなこともなかったと思うし……。


「もしかして、先刻の飯でからかった事まだ怒ってんのか?」


「いや、さすがにそんなこともう気にしてないけど……、ていうか私そんなに心せまくないわよっ!」

「ほら、なんかピリピリしてる……。大丈夫か?」

 とカイトの手が私の手を包む。


「そんなこと……っない」

 と反射的に手を抜こうとするも……抜けない。


「……手を離して」

「ヤダ」

 ……子供みたいな言い方。だけどそれは逆らうことをよしとしないもの。


「………。」

 手を離される事もなく、私だけは目線を下にやって互いに沈黙を続ける。


カイトは私の手をぐっと捕まえたまま……、何がしたいんだろう。


ふ、と目の前でため息をつく音が聴こえる。

「……そろそろ時間だ。いけるか」

「えぇ、大丈夫」

 ……に決まってるじゃない。

「……手を」

「うん」



――そして私の右手を引いてカイトの部屋を後にした。



このお話とは別の新作をアップしてます。気が向いたら読んでくれると嬉しいです。幼馴染もの?です。



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