鍋の最後は雑炊派
なんだか最近タイトルが食べ物へ一直線。
もうすこしまともな方がいいのだろうか。
私が倒れていた間にどこまで説明してくれたのかをカイトから聞いて、
やっと一息ついた所為なのかカイトの制服が前とは違ってものすごく立派なものになっているのが目に付く。白い式服に私達の今の時代では有り得ない金の細工を施した肩パット、右肩から腰に斜めにこれまた金色のみつ編みのような縄が掛けられており、なんだかとっても……
「………。カイトその格好なんだか騎士みたい」
「……騎士みたいじゃなくて騎士だぞ」
と微妙な顔をして言われるが、そんなん最近忘れつつありましたよ。だってそういう出来事って最初くらいなものですよ、カイトさん。
「あー、そうだった。」
((軽い……。))
(なんか普通の女の子だなぁ…?)
しかし、お腹がすいた。とはいえ、こんなときにそういうのもなぁ。いやでもお昼ご飯食べてから優に7時間はすでに過ぎている。もう限界だ。頭も回んない。
「カイト、カイト」
「ん?」
「何でも良いから小腹が満たせそうなものない?」
と残りの三人には聞こえないようにカイトに耳打ちする。
できれば温かいものだとなお嬉しい。野菜スープとか。
「……。」
“こんな時に何言ってんだ、お前アホか、いやアホなのか?”とカイトの目が口以上に物を語る。
「わかってるよ。今がそういうときじゃないって。でもさぁ、もう私半日以上何も食べてないから頭回んないんですよ。一応固形食はあるけど味気ないことこの上ないじゃないよ」
「んー。では軽食とります? 俺達もそろそろ何か食べてから最終確認入るつもりだったしとはいえ、これまたウチの上司の許可が必要だけど」
まぁ、不審者と食事の席を一緒にすることを許すほど彼は酔狂なのかしら、ねぇ。
……無理でしょう、普通。
とりあえずは、とカイトを手で少し離れるように合図して
「お待たせして申し訳ありません。このように座ったままで申し訳ないのですが、メイ=フジミヤと申します。一応あなたからすれば異世界人に当たり、カイト様の知り合いではあるつもりです。
どうぞ、よろしくお願いいたします」
なんて、営業スマイルを駆使しつつお嬢様言葉を使ってはみるものの、そういえば身分の低い者から先に声をかけていいんだろうか……?
しかし私はどこに位置づけるのかも微妙だけど、だって私はこの世界の人じゃないし、その前に戸籍なしの身元の怪しい人じゃないんだろうか。それに少なくともカイトの上司には当たるのだから彼はそれなりに上の身分の人だろう。
「あぁ、御紹介ありがとう。私は第三王子のセシル=フォン=アイカシア=エレイだ。どうぞよろしく」
名前長いな、というかおうじ、さま? 王子様。
「…………。」
「そしてそちらは俺の同僚のユリウス、とヒューイだ」
とカイトがそれぞれに指をさして紹介してくれる。
「ヒューイです。芽衣さんよろしくお願いします」
「ユリウスだ。……よろしく」
「……、カイトさん」
「どうした、芽衣?」
「王子付きなんでせうか?」
「まぁ、そうだな」
「………。それにご飯一緒に食べないか? と提案するのは極刑につながらないのでしょうか」
「多分、ない」
「多分ー!?」
「えーっと殿下、とりあえず軽食とりません?
芽衣もお腹すいてるみたいですし、俺厨房から取って来ますよ」
「………カイト」
あぁ、やっぱり上司さん、もとい王子様もこめかみを押さえている。
なんというかフランクな関係なんですね、あなた方。
「……わかった。一緒に食べるかどうかは後にしてとりあえず取ってこい」
「了解です。じゃ、いい子にしてろ、芽衣」
とおでこをツイと人差し指で突かれる。子どもじゃないんだけどなぁ、とは思いつつも、一声を律儀に掛けてくれる心遣いにちょっぴりほっこりしながらおでこを手のひらで押さえる。だが、しかし今の状況はというと。
――そして私は見知らぬ人達と密室に残されました、と。
「えーっと、何か質問あれば出来るかぎり答えたいと思うんですけど、
それとも今忙しい感じですか? カイトの制服もいつもと違うようでしたし」
ととりあえず友好な態度を示してはみるものの、微妙に警戒されている感じがひしひしと……。
彼らの紹介も少しそっけないものだったし、命令があればさっくり私のことも殺すだろうなぁ。
でも、おなか空いたよ。ひもじいよー。
「あぁ、今日はうちの親父の聖誕祭だからな。式典用の服装なんだ。それと、申し出は、ありがたいのだが、何から聞いたものか」
とは、王子様。確かに。こんな状況で何から聞けばとはいってもなぁ。私のプロフィールなんて聞いても役に立たないだろう、友だちになりましょう、とかいう状況ならまだしも。というか親父様ということは国王様。なんだかどんどん現実離れしてきたぞ。まぁ、トリップしているのだから、今更でしょうかね。
「とりあえず、年は? それとどこまでカイトはこちらのことを話している?」
女性に年を聞くのは基本的にマズイんじゃないでしょうか。一般的に。こちらではそういう事はなかったりするのだろうか。
「21です。それとカイトには、そうですね……そこそこ上の立場で騎士をしていて、同僚がいるということ、国の名前、言語、あとは…、アレ? 私それくらいしか知らないです」
あぁ、私達そのときそのときの気分で話すから、プライベートな話題少なかったから。
あとは、そうだな。殿下がお風呂持ちの人だって言ってたくらいだろうか。
「俺よりも年上…? いや、失礼。しかし、意外だな、普通人を匿うのなら、寝堀りはほり訊くものじゃないのか?」
と怪訝な顔をされる。いや、まぁそうなんですけど。というか年を聞くのはやはりこちらでもある程度失礼には当たるようだ。
でも何で聞かなかったんだろう? 異世界が気にならなかったといえば嘘になるけれど。
……あぁ、そうか。彼は日本の文化、慣習を知らないから、どこからどこまで違うのかを知識をお互いに擦り合わせながら話し合うということが少し面倒だったのかもしれない。それに普通に話してるだけで楽しかったというのもあるかも。
うん、うんと一人で納得していると。後ろから熱い視線を感じる。
とはいえ、王子様を前にして顔だけ後ろに向けるというのは無作法なような気がして、
目の前にいるセシル様とやらに言う。
「あの、なんだか後ろから熱い視線を感じるのですが、気のせいなんでしょうか……?」
「………。」
「……あー。」
なんだか目の前にいるユリウスさんともどもセシル様も何とも言えない顔をしている。
何なんだろう。
「メイ=フジミヤ。 私は聞きたくないから、知りたいならあなたが直接聞いてください」
「……そうですか。なんだか聞かないほうがいいような言い方ですね」
とはいえ、なんだかセシル様、なんだか慣れないな、セシルさんと心の中だけで呼んでもついうっかり口に出ちゃいそうだから、やっぱりセシル様、とこのまま話し続けるのもなんだか間が持たないし、とりあえず聞いてみようかな、と後ろを向いてみるとキラキラした目がこちらを向いている。
――この状況でこの目!?
と慄きつつも無言でいるのが居心地が悪くて後ろにいる男性というには若いとはいえ、少年というほど幼くはないふわふわした髪をした男の子に微妙な答えが返ってくるような予感を抱きながらも彼に質問をしてみる。
「えと、ヒューイさんでしたっけ。あの、私に何か…? 気になることがあるなら答えますよ」
「いいんですかー! じゃあ、じゃあ何か特殊能力ってありますか?
血の色は僕達と同じなんですか? それと、触ってみても良いですかー!」
と手をわきわきしながらも、こちらに身を乗り出してくる。
「………。」
なんだろう微妙に寒気がするこの質問。このこ可愛い顔して何言ってんだ。単なる好奇心なんだろうか。いや、そう思いたい。だって可愛いのにもったいない。
4万PV突破です。ホントに書き始めた頃には予想も付かない事態です。ありがたいなぁ……。
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ヒューイさんが一番初期設定からどんどん離れている人だったりします。完結時にはどうなってるのか、ドキドキします。




