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ある日の午後  作者: ラゼル
Chapter 4
46/72

なんだか、ラーメンが食べたいなぁ。

今度はカイトSideです。

少し長め、ですかね。


タイトルは今の芽衣さんの心境です。

今日は国王様の聖誕祭、というわけで俺もユリウスもヒューイも衣装に着替え、セシル様も身支度を整えていた。だからといってセシル様を一人にするわけにもいかないので、今はユリウスがお傍に控えているはずである。


 葉が赤や黄色に染まっている落葉樹やもう花の盛りを終えてしまった王宮の端にある庭園の横を通る。王宮内には春、夏、秋、冬それぞれの季節に合わせた庭が一つずつあり、こことは違う秋の庭園には薄紫や薄桃色の花が慎ましく品良く植えられている。庭園には椅子や机が置いてあり、読書するのもまた風情があるだろう。


 しかし今日は本番前のお昼過ぎということで、宴の最終調整で王宮内はすこしバタバタしているので怪しい者がいないかも警戒しつつ更に執務室に卸したての黒いブーツで足を進める。これまたいつもより装飾過多な代物だ。 やれやれ。


 だけど、本当にいつもより動きにくい衣装だ。こういう宴には格式が不可欠とはいえ、警備上はちょっと問題ありだ。

 まぁ、それ以上にこういう格好は肩が凝ると言うのが本音ではあるが。

殿下も似たような心境だろうなぁ、ユリウスとヒューイはどうだろうか。


 そんなことをつらつらと考えながら歩いていると執務室の扉が見えてくる。

そしてドアノブに手をかけ、開く。



「よっすー殿下。 ご機嫌いかがー? 準備できまして?」

 と冗談交じりに声を掛けると沈黙がかえってくる。いったいどうしたものかと中の様子を少し警戒して窺うと、ユリウスの腕の中には女とおぼしきものが引きずられていた。

 しかしこんなところに侵入するなんてしかも今日のような人の多い日に、というより多いから、こそか。


 どこの馬鹿かとその人物を観察するとなんというか……ものすごく見覚えのある女だった。

 半ば信じられない気持ちでとはいえある種の確信を持って、そいつに声を掛ける。


「……芽衣?」

 ピクリと身体を揺らし反応はしたが返事はない。更になんというか周りから微妙な空気を肌に感じ、一応セシル殿下にどうしてこうなったかを尋ねては見るが殿下もまだ全てを把握していないようだ。

 ヒューイも一応傍にはすでに控えているようで、いつものおしゃべりな様子は鳴りを潜めこちらを隙なく注意して立っている。


「知り合いか?」

 とセシル様に尋ねられたので、芽衣が異世界に行ったときに世話になった御仁だと伝えると納得されてコイツの全責任を暗に俺に丸投げされた。とはいえ早くコイツを落ち着かせた方がいいだろうと腕を引き胸元に引き寄せる。すると、するりと肩から力が抜ける。少しは緊張していたのだろうか、まぁ不幸中の幸いか、こいつらでよかったな芽衣捕まえたの。しかしこいつほぼ無抵抗でユリウスに引きずられていたようだが、こういうときは全力で抵抗するものじゃないんだろうか、普通。


 すると、「ぐっじょぶ、カイト」と意味不明な言葉をこぼしたので、その意味を尋ねるとそのまま意識をコイツは手放した。なんとか首の下に手を置いて頭を支えるが


「ちょッ 芽衣ー!?」

 と軽く叫んでペチペチと頬を叩いては見るが起きない。完全に意識を彼方に放り出したようだ。


「「「………。」」」



「……、まぁとりあえず知り合いということは、確定のようだな

お前の名前を呼んでいたし」

 と発言の先人を切ったのはセシル様。


「えぇ、まあ。信じていただけて幸いです」

「で、ソレどうすんだ」

 芽衣は意識を手放し俺にくったりと身を預けている。どうしたもんかなぁ。


「んー、ソファお借りしていいですか? こいつ目が覚めるまで寝かせてやりたいので」

「いいけど、腕か足でも縛っとけ」

 ……まぁ、しょうがないよな。陛下たちからすれば、見まごうことなく不審者だし。少なくとも不法侵入者には間違いない。恩を仇で返すようで申し訳しないがこれも仕事のうちだ。

 許せ、芽衣。とソファに彼女を横たえ、内ポケットから拘束錠を取り出し、足首を拘束する。金属で肌を傷つけないように間に布を挟んでおく。


「しかし、コイツ見えてるんですね、陛下たち」

「あぁ、七不思議の原因だっけか?」

「えぇ、普通は見えないはず、なんですけどねぇ」

 まぁ、一人例外は居たにはいたのだが。


「ふむ、何か心当たりがあるようだな」


「あー。あっちでも一人だけ芽衣以外にも俺を認識した人がいるんですよ。

今のところは名前または俺があっちでどういうことをしたか、を聞いたかどうかじゃないかって推論を2人で立てたんですけどね」


「……二つとも俺達は聞いているな」

「えぇ、説明上言わざるを得なかったので、言わない方がよかったかもですね。

――芽衣にとっては」

 殿下たちに見つかったのは良いことなのだろうか、まぁまたこちらに来るなら俺以外にも芽衣をちゃんと認識して保護してくれる人がいたほうがいいのも確かではあるから。いいのかもな。

 でもなぁ、悪くすれば拷問、または牢屋行きあちらの平和ボケした世界ではなかなか出来ないような体験をするところだったから、芽衣にとっては不本意ではあるか、まぁ間に合ったんだから良しとしてもらおう。


「んで、他に証拠はー?」


「あぁ、俺達以外に認識できるかどうかを確かめたらいいと思いますよ。まぁ、たぶん認識されないどころか俺達の存在にも気づかないかもですね、芽衣の傍にいれば」

 俺があちらに居たときはそうだったし。まぁ、たぶんだけど


「それは、まぁ万が一そうなれば信じざるを得ないな、というより俺達も認識されなくなるのか!?」

 とは到底信じがたいという顔をしつつも一応こちらの意見を聞いてくれるのだから、我ながらいい主を持ったものだ。


「それともう一つは、この私達とはちがう服でしょうかね、少なくとも私達とは違う文化を持った民族であることは伺えるかと」

「……そうだな」


「……異世界人ですか」

 ん? ヒューイ先刻まで黙っていたのにどうしたんだ。


「まぁ、信じられるならばそうですね」

「早く目覚ましませんかね。楽しみです」

「「………。」」

 ホントお前きっと大物になるよ、将来。そしてキラキラした目を芽衣に向けている。

 一方ユリウスはというと、何かそわそわと俺に目線をちらちらとやっている。言いたいことがあるなら言えよ。気色悪い。


「ユリウスー? 大丈夫かー?」

「あ、あぁ。いや、なんでもない。その…」

 と口を再度開きかけるが結局口を噤んでしまった。何が気になるんだろう。

 いや、ある意味気になる所だらけの状況だよな、コレ。それに何でもなさそうには見えんがな。しかし今は放っておいてやろう。


「ん……、」

 とソファの方から声が漏れる。芽衣……。


「お、」

「あ?」

「わーぁ。」

「………。」

 起きそう、なのか。声掛けてみるか。でも結構早かったな意識取り戻すの。


「おーい、芽衣。色々面倒だが起きろー」

と今度は頬をグッと抓ってやる。


「うぅ、いたーい! 

って、何すんだ ボケェ!!」とグーがこちらに飛んで来るが、パシリと右手で受け止める。


「………。お前、寝起き悪いのか」

「えぇ、まぁ。悪いですね。朝はイライラするので、家族とは極力当たり散らさないように話さないようにするくらいには」

 ともう片方の手で目をこすり、至近距離でこちらの目を覗き込んでくる。


「………、おはようございます」

「はい、おはよう」

 と頭をポムポムと叩く。話しぶりははっきりしているようなのに、暢気に挨拶している辺り、まだ完全には意識が覚醒していないようである。


(……なぁ、突っ込むべきなのかこの2人)

(さぁ、私には何とも)

(異世界人かぁ)


「あれぇー カイト何で私のベッドにいるんですかぁ」

「ここは、王宮。俺の世界。わかるかー?」

 と易しく、単純で直接的な表現で優しく言ってやる。


「………。」

「…………。」

 というか、枕元に男が立ってたならもう少し危機感持てよ?

実際は違ったわけだが。


「えーと」

「うん」

と先を促してやる。

「……あぁ、そっか。理解しました。カイトが来てくれて助かった」

「おう、まぁ俺がこいつ等にお前の名前とか言わなかったらこういうことは起きなかったとは思うけどな」

「もう起きたんだから、どうしようもないです。時間は戻せないんですから。次にどう動くか考えることのが大切です。後悔も生きていくには大切なことですけどね」

 何か、哲学的だな。まぁ一理あるな。うん、うん。


「おーい、そろそろ大丈夫か」

 とセシル様が声を掛けると、


「あぁ、すみません。今説明します」と芽衣が言う。

「あれ、さっきは説明する気さらさらなかったのに、いいのか?」

 あぁ、やっぱり適当に済ませたのか。それ生きていく上では結構まずいぞ。


「カイト来たので、最低限の証拠は示せるかなと思ったのと、寝て少し回復したので」

 相変わらずマイペースだな。一応目の前にいるの王子様ってやつなんだけど。


「……え?」

 と何か違和感を感じた声が耳元でしたと思えば、

ソファから立ち上がろうとしたのか、足が拘束されていて、ソファから頭から落ちそうになったのだろう芽衣をキャッチして息をつく。


「何ですか、コレ。あぁ、何かものすごく見覚えのある拘束錠」

 と胡乱な目をこちらに向ける。”こ・の ヘンタイ”と目が語っている。やめろ、俺はそういう趣味の持ち主じゃねぇ。断じて。


「一応不審者だからな」

「……あぁ、これまた事実ですねぇ」

 お前も本当に大概暢気だな。


「おーい、それで話してくれないのか?」

「あぁ、すみません今、ってこれ外してもらえるの? もらえないの?」

それはウチの上司に聞かないと何ともいえんな。


「セシル様。外してもいいでしょうか?」

「まだ、駄目だ」

 ですよねー。

「ですよねー。ではこちらに座らせていただいてもよろしいでしょうか?」

とぎこちないながらも微笑みを浮かべセシル様に訊ねる。

「あぁ、立てないだろうから。構わない」




「――では、何から話せば良いんでしょうかね」


キリが良いのでここで切りますですよ。

芽衣さんは寝起きの機嫌は最悪です。しかし長年の低血圧との付き合いで最低限の会話は成り立ちますが、終始神経が高ぶってぴりぴりしてます。


つぎは芽衣Sideで続きます。

カイトSideより芽衣Sideの方が今は書きやすいんですよね。

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