行く先を知らない。
番外編アップしてますので、よろしかったらどうぞ、と告知しておきます。
まぁ、芽衣さんのテンションが高いのでご注意を。
毎度サブタイ悩むんですよね。けっこう内容そのまんまが多いんですけど。
芽衣の部屋から掻き消えた瞬間。
――またしても俺は空中に投げ出されたのであった。
今回は意識があるときであったのと、もう3度目の経験であることから、今度は手を床に突いてその後重心を他にそらせたので、前のように腰から着地という痛みを伴うものにはならなかったのは幸いともいえるだろう。
が、またしても着地場所が少し問題であった。
「よう、ルー=シュピッツ近衛騎士様」
ここは多分執務近くの廊下だ。つまり俺以外にも通る奴らはそれなりにいるということだ。
しかも、この声は……。
「あぁ…
と首を捻ってその人物の方へ体を向けて挨拶しようとすると、ざぁっと悪寒がしてさっと身を引く。
ひゅっと顔に風圧を感じた。……やっぱりか。
先刻いた所に目を向けるとそこには長剣が向けられていた。
「いきなり剣を向けるなんて穏やかではないですね。トゥーレ中尉」
と少しの棘を含んで彼の名前を呼ぶ。そして、武器に手をかけて臨戦態勢に入る。
そこには黒い服を着てドロリとした愉悦を含んだ緑の目をした男がいた。
見られていたんだろうか、ここに現れた瞬間を、だけどコイツにはおいそれと聞けねぇな。
「やー。だってさぁ、あんた珍しく隙だらけの格好してんだもんよ。つい」
「…………。」
もうヤダ、コイツ。つい、じゃねぇよ。
ビリビリとした威圧感が彼から放たれる。この戦闘狂が。
そしてさらに追撃が次々と放たれるがそれを避けたり弾いたりして防御に徹する。
今日はお前に構ってる余裕ねぇんだよ。面倒ごとが控えてんだから。
俺に戦う気が無いのか、と判断したようで攻撃が一旦止む。
えらくつまらなさそうにため息を吐いて訊ねてくる。
「で、執務室に行く途中ですか、ルー=シュピッツさん」そしてカチンと長剣を腰の鞘に直す。
それとともに警戒は解かずに俺も武器を袂に戻しておく。
「いえ、一度部屋に取りに行かないとならないものがあるんですよ」
「へー、そうなんですか。お疲れ様です。
また、手合わせお願いしますね。また詰め所来たら声かけてくださいよ
じゃあ、また」
と彼がここから離れようとしながらひらひらと手を振る。
「えぇ、ありがとうございます。そうですね、機会があれば」
コツリコツリと鳴るブーツの音が小さくなるのを待ってからこちらも行動を開始する。
……とりあえず、自分の部屋戻るか。なんか、アイツの所為でどっと疲れたわ。
しかもあっちでは夜。こっちではお昼、時差の差のせいなのか、身体が少しだるい。
一度部屋に戻って荷物を置いて、仕事に向かうために準備をする。
しかし、ジャケットも靴も今回着たまんまにしておいてよかったぜ。アイツにそんな姿見つかったら面倒なことになるのが目に見えてるし。人間は学ぶ生き物だからな。同じ轍は踏まない。
靴は芽衣曰く『軽く踵を風呂場で洗ってくれれば靴のまんま部屋に入ってくれても構わない』
だそうだ。というか前回は室内で靴を脱いだが、一応騎士職を担っている身としてはすぐに動けない状態には出来るだけなりたくないから正直助かる。
そして鏡を覗き込み髪型を整えると、耳下でピアスが微かにその存在を主張する。……そういえば、菓子折り渡されたな。持って行くか、一応。
覚悟を決めて執務室の扉をノックする。
「カイト=ルー=シュピッツです。帰還いたしました。
入ってもよろしいでしょうか」
ホント、入っていいんだろうか、というか入りたくない。
「………っ。 入れ」
少しの動揺を含んだ殿下の声で許可を与えられる。さて、どうしたもんかね。
「失礼します」
扉を開けて前を見据えると執務室の机の両脇にヒューイとユリウスが立ち並び、椅子にはセシル様が座っていた。オイ、なんか緊張感増すから妙な隊形で迎えんでくれ頼むから。
「さて、今回は前よりはまともな説明をしてもらえるんだろうな?」
すいません、無理です。俺だってわかんねえっつの。不可抗力ですっての。
グッと拳を胸元で握り締めて言葉を口から吐き出すように連ねる。
「……私に分かる限りでよろしければ、ですが」
「それでいい、では話せ」
「……ッ はい」
――チッ、やっぱ退かないか。殿下。
と内心舌打ちしつつも下手なことを言わないようにある程度のことを彼らに聞いておこうと考えた。
「では、すみませんが一ついいでしょうか」
「なんだ、それは必要なことか」
「えぇ、どのようにあなたたちがこの事態を認識しているかどうかによって、どう話せば伝わるかの判断材料にしたいと思います」
「それは、俺達の対応によって話す内容が変わるとも取れないか」
「少なくとも殿下の不利益になるようなことは絶対ありません。信じられなければ、ルーシュピッツ家の名誉にかけて、いえ、王家に誓ってもいいです」
「……それは、話す内容変わると肯定しているようなもんじゃねえか」
と呆れを含んだ声で指摘される。えぇ、正解です。よく出来ました、殿下。
にっこりと微笑して肯定の意を伝える。
「わかった。では訊け」
と不満そうにしながらもふぃっと横を向いて膨れる。
そこで命令しない、ということが甘いですよね、殿下。本当に身内に対しては。
「じゃあ、ヒューイ、ユリウス。すまんが俺が居なくなったときの状況を話してくれないか」
「わかった。俺が話そう。ヒューイは俺が言い忘れていることがあったら付け足してくれ。それでよろしいでしょうか殿下?」
「あぁ、話を進めろ」
「了解です、ユリウス先輩」
「――では、
お前が居なくなったのに一番先に気づいたのは多分俺だと思う。
気配が急に立ち消えたからな。お前の気配は読みにくいものの、俺は長年の付き合いでよくわかるから。
けれど居なくなった瞬間お前を見ることができたわけではない。
というか、扉が閉まる音もしなかったし、窓も鍵がかかったままだった。
……どうやってここから居なくなった」
「……それは、つまり俺がいなくなる瞬間をあなたたちは見ていないということでしょうか。
――誰も?」
「あぁ」
「はい、見ていません」
それは、それはまた説明しにくい状況に……。せめて消えた瞬間を見てくれれば、完全に不可抗力であることを言葉をいくら重ねるよりも説得力があったというのに。
他の奴らならともかく、こいつらの場合は見ていてくれたほうが都合よかったんだがなぁ。
「……マジですか」
とつい信じられなくて言葉が漏れる。誰も見てないのか。
「マジだ(です)」
「……本当だ」
心の中でガクリと項垂れる。というか現実でも、もう項垂れてしまいたい。面倒だ、実に面倒だ。
頭が可笑しくなったと思われないといいんだが、なぁ。ハハハ。
「……おい、大丈夫か?」
とセシル様がこちらを心配して声をかけてくれる。あぁ、すんません。すぐ再起動しますので。
「えぇ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。
見ていただけたほうがその説明がすんなりいったんですよ。
信じられないかもしれませんが俺はそこから次元、いえ世界を移動したんです。私、
瞬間的に」
「「「……………。」」」
――沈黙。
いや、まぁそうだよな。そういう反応か。
「つまり、どういうことだ?」
と三人を代表してセシル様が言う。
「異世界に行ったということですね。簡潔に言えば」
もう、どうにでもなっちまえ。
すいません。いいところなのですが、キリがいいのでここできります。
カイト受難編? はまだ続きます。ある意味カイトさんは現在徹夜状態です。はやく寝かせてあげたいなぁ……;
数話はこれからカイト編かな? 芽衣さん編はもう上がってるので早く出したいんですけどね。
大学で続きをがつがつ練りたいと思います。




