ある意味平和な時間
少し短めですが…。
あぁ、こういうときにはどうしたものか。誰か教えてくれないだろうか。
目の前には好奇心に取り憑かれた少し年下くらいかと思われる男性が一人。
「ねぇねぇ、これコスプレなのかい? 芽衣、彼氏さんそういう趣味なの?」
こすぷれ、こすぷれ? 彼氏さん…。
この格好は制服だ。まぁ普段着ではないが…。
「はい、はい。樹さん掃除早く済ませてしまいましょう」
芽衣…。もう投げやりなのか妙に冷静だな。というか助ける気0か。
「えー!? …まぁ、そうだね。この後じっくり聞かせてもらおうかな」
と芽衣の顔をじっと見詰めるこの男…。顔近くないか?
「はいはい、わかりました」
いいのか!?
――そして現在。
椅子を樹さんとやらに勧められて各自の準備が終わるまで放って置かれている。
もう流れに身を任せてしまおう。芽衣も何かしら考えているだろう、きっと。
「ごめん、カイトおまたせ」
と芽衣が先に準備終わったようだ。前も着替え早かったしな…。
しかしそれにしても急いだんだろうな息を少し切らせて……次はあの男が来るだろうし。
髪はキラキラしたものがついたゴムでポニーテイルに纏められ、上品なショートジャケットに白いトップスに8分丈の黒いパンツ。いつもより少し大人な感じで、よく似合っている。
「で、どういうことだと思う?」
と、とりあえず聞いてみる。我ながら考えがまとまって無いな。結構混乱しているのか。
「さぁ?」
……まぁ、俺も来てすぐに店に引きずりこまれたからな。こっちに来てから見覚えあった場所だったからうろうろしてたら芽衣を見つけてそれでつい手を振ってみたらこう、だ。
「そのへんは後で考えましょう。とりあえず樹さんです」
そうだな。まずはあの男を何とかしないと。
「とりあえず、あの人はもうカイトのことを私の彼氏・恋人の類だと思い込んでるので、そのつもりで動いてください」
恋人…ねぇ。それっぽくするのは大丈夫だと思うが、どういう経緯でそうなったか後で聞かせてもらう。
「それと、その格好は…。趣味にでもしといてください」
まぁ周りの様子を見るかぎりこの格好は浮くよな…。
「趣味って俺の私服こういうんじゃないんだけど」
こういう趣味だと思われるのはアレなんだが。一応派手なだけで意匠はそれなりにいい物なんけどな、王宮支給品だし。まぁ給料から差っ引かれるんだけどな。
「いいじゃないですか、似合ってるんだし。まぁ他に何か思いついたら言っちゃっていいですよ」
まぁよさげなの思いついたらそうするわ。
「そりゃどうも。他に注意点あるか?」
「んー。そうですね…パッと思いつくのはそれくらいです。
樹さんの言っていることが意味不明だったりしたら私がフォロー…えーっと、手助けするんで下手なこと言わないで口をつぐんでください。こっちの常識には疎いでしょ」
「了解」
だな。さすがにこちらの常識がわかるほどこちらに滞在してないからな。
それが今の最善だろうな――さてどう転ぶかな。
「了解って何が?」
「!?」
と芽衣がビクッと肩を揺らして反応する。
あぁ、悪い。後ろからその男来てたのいうの忘れてた…。
「ごめん、ごめん驚かせちゃったかな?」
と芽衣の背中をなでる。落ち着かせる為なんだろうが馴れ馴れしくないか…。
「いえ、すいません。お手数かけました」
落ち着いたのか芽衣が頭を下げてそれから深く息を吸う。
そこはお礼を言うところじゃない! 注意しろォ! この馬鹿娘!
「では、こちらカイトです。樹さん」
はいはい。了解。自己紹介ね。
「ただいま紹介にあがりました。カイト=ルー=シュピッツと申します。
彼女の恋人です。失礼ですがあなたのお名前は?」
恋人と聞いて芽衣が少し動揺する。お前が言ったんだろが。
「すみません。紹介が遅れましたね…桐生樹といいます。
彼女、芽衣さんの店での業務の教育を担当させて頂いています」
と名刺を差し出される。ふぅん、上司か…。さてどうするかな。
「えーっと。とりあえず自己紹介も終わりましたし…帰ってもよろしいでしょうか? 先輩」
まぁ、帰れるなら帰りたいよな。で、先輩とやらの反応は…
「ダメだよ、芽衣ちゃん。君はあんまりプライベートは話さないし、こういう機会がないと、彼氏のかの字すら出さないだろうしね」
ふぅん、あんまり話さないのか。まぁコイツならそうなのかも。
「そうですかね? そんなに話してません?」
とコテンと首をかしげる。
自覚無いのか、無意識下でなんとなく距離を置いているのか、態となのか。どうなんだろうな。
「うーん。それで何が聞きたいんですか? 樹先輩」
「そうだねぇ。というか彼外国の人だよね? 髪グレーだし、目青いし。
しかし…日本語お上手ですね」
うぉ、こっちに振ってきやがった。俺日本語なんて話してないんだけど
「それは、ありがとうございます。変なところがあれば注意してくださると助かりますよ」
「いえ、日本で普通に働いて暮らせるレベルの語学力ですよ」
そりゃどうも。俺の実力じゃないけどな。
「ありがとうございます」
「ねぇ、芽衣。彼どこの国の人なの?」
「えぇと…フィン、ランドですよ」
フィンパネトーネだぞ、芽衣。こっちだとウチの国の名前変だったりするのか?
「へぇ、フィンランドかぁ。そちらの経済状況どうですか?」
「えぇ…と。そうですね、失業率のほうは最近少し低下してきていて少し上向きと言ったところでしょうかね。最近へい…ウチの上司も新しい政策に注目していたし、それによってまた変化があるかもしれませんね。」
とりあえず、ウチの国の状況だけど。どこでも困っていることはそんなに変わらんだろ。
「ふぅん。またフィンランドに行くときはアドバイスお願いしますね」
「えぇ。機会があれば」
ないだろうがな、そんなの。
「他には何かあります?」
とこちらに少し芽衣が寄ってきて質問した。それを横目で見てそっと肩を抱いて引き寄せる。
「ひゃ…」
と小さく芽衣が悲鳴を上げる。人目があると大人しいというか、なんというか。
はいはい、落ち着こうね。と頭を撫でてやる。
「うーん。ラブラブノロケ話を少し聞きたいと思ったんだけど…。
そういう話するタイプじゃないしね、彼女。
でも聞くまでも無いって感じだしねぇ。
そうだ! …その格好はえーっと、私服なんですか?」
どう答えたものか。もう元々の案の“趣味です”とでも言っておこうか。
「あー。いいじゃないですか樹さん、似合っているんだから」
それまた強引過ぎやしないだろうか…。
「うん、そうだね。男の僕から見てもかっこいいよ」
オイオイオイ…それでいいのか!?
「それは、えーっと恐縮? です。」
「はは、いいねぇ…こんなかっこいい彼氏さんで」
「えぇ、私には本当にもったいないです」
と柔らかい微笑みを浮かべる芽衣――ふぅん もったいない、ね。
「いえ、私にとっての女性は芽衣だけですから」
「!?」
あ、芽衣撃沈…。すまんお前結構これ恥ずかしいんだな。
「ほほう、これはこれはごちそうさま。じゃあお邪魔虫は退散するよ。
それとカイトさんお話に付き合っていただいてありがとうございました。」
と荷物を肩にかけてこちらにお辞儀をしてくる。
「いえ、私もあんまり聞けない話を聞けて新鮮でしたよ」
そうそう、芽衣のバイトの上司についてなんて2人だけだと話題になんかでないしな。
「それはよかった。じゃあ芽衣お疲れ様。またね」
と軽く手を振り、ドアへと向かって行く…
「あ、はい。お疲れ様でした」
とこいつも俺の腕に引き寄せられながらも頭を下げて挨拶をする。
「「…………。」」
とりあえず嵐は去った……。
さて、色々聞かないといけないことが沢山出来たな
――どうしてくれようか。
楽しくて楽しくてさくさく書けてしまった。2日は開くかと思ったのに…。
初の本編での独白じゃないカイトさんSideです。
最初は芽衣視点だったんですけど。お風呂でカイト視点にしたら…と考えたら妄想が膨らむ膨らむ…。あぁ、こっちにしようってなりました。
次回はどっちサイドになることやら。




