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女侯爵と誰か  作者: 氷村はるか
第二部

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第65話 亀裂

机の上を片付けて応接間に入ると、すでにワグナイヤ家のご令嬢もご到着されておりました。


「お待たせして申し訳ありません。ようこそお越しくださいました。ディミトリウス家当主、リセルレットと申します」

「初めてお目にかかります。キンデンベルク伯爵家のミラウスと申します」

「私はご無沙汰ですわね。今日はお体の調子が良さそうで何よりですわ」

「ありがとうございます、ロディエンヌ様」


私とリネルの学友との挨拶が済むと、注目を浴びたのはエルフレット様でした。


「私、イステリア様が宿にいらして驚いたのよ」


彼女はそう言いながらも、目では「婚約者様ですか ? 」と語っています。


「彼は私の手が届かないところを手伝っていただいているんです」

「私が好きでやっていることです」

「まあ、そうですの」


わかっているとでも言う様に微笑みます。まあ、公爵家の方ですから、知りたいことは知っているでしょう。


「せっかくお会いになれたのですから、楽しい時間をお過ごしください」


部屋の扉を閉めてすぐに、中からワグナイヤ嬢の声が聞こえてきました。


「リネル様、イステリア伯は……」

「大丈夫です」

「ならば遠慮はいりませんわね。それで、甘い密会はどうでしたの ? 」


思わず足を止めてしまいました。

頭の中は真っ白で何も考えられません。


「ロディエンヌ様 ! そのような言い方はおやめください」


慌てるリネルの声と、エルフレット様の楽し気な笑い声が頭の中でいつまでも響いていました。

その後はどのようにして執務室まで戻ったのかはわかりません。

意識が帰って来たときには、当主欄に承諾サインの入ったリネルへの求婚書類を手にしていましたわ。


これで、リネルとシード=アルセンド侯爵令息との婚約はなされました。



読んで頂きありがとうございます。


主人公は自分の気持ちに気付く前に行動を起こしてしまいました。

これからどうなっていくのか・・・


少しでも楽しんでいただけましたらうれしいです。


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