第63話
一人執務室で書類に目を通していると、私の専属侍女のリゼが何かを持って入ってきました。
「執務中失礼いたします」
「何か問題があったのかしら ? 」
私の問いかけにこまった顔をするのよ。
「あの、エルフレット様とジョンソンをホールまで見送りに行きましたら、アルセンド侯爵家の使いの者だという方がいらっしゃいまして、当主様にこれを渡してほしいとのことでした」
手渡されたものはなんと見合い用の肖像画と、どの様な人物かが書かれていました。
アルセンド侯爵家もキンデンベルク伯爵家と並ぶほどの名家です。
この釣書きによると、性格も良く剣の腕も素晴らしいと評判の美丈夫だと書かれています。
お名前はシード=アルセンド侯爵令息様。
社交界から足が遠い私でも、存じ上げるほどに有名なお方です。
「同封されている手紙には婿にどうかというものだけれど」
こればかりは私のみで決めるわけにはいかないわ。そう思ったのだけれど、エルフレット様とリネルが笑顔で互いの顔を見合わせている場面が、脳裏に浮かんでしまいましたの。
なぜ、今までありもしない。というか、目にしたことがないことを思い浮かべてしまうのか。
「リゼ、リネルの想い人って誰だか知っていて ? 」
「詳しくは存じませんが、ご学友の一人だと耳にしております」
「そう、この話はリネルには酷なものになるかもしれないわね」
我がディミトリウス侯爵家にとって、内陸方面への交易路が開けると考えれば悪い話ではありません。
(リネルとアルセンド侯爵令息のお話をまとめれば、私はエルフレット様と)
その思考に驚いて我に返りました。
同時に襲われる病気ではない胸の苦しみ。
今、私は何を考えていたのかしら ?
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