第51話
サロンを出る頃には生徒の影はどこにもなく、誰にも会わずに帰邸することができましたの。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
いつものようにお姉様の執務室の前を通り、自室へ行く途中にモーネから紙を渡されました。
そこには見覚えのある文字で、会いたいという旨が書かれ、すぐ近くの庭園の場所が指定されています。
「モーネ、すぐに着替えるわ」
止める家令に、明日急遽必要になったモノを購入に行くと、馬車を出させ指定の場所へ向かったのですが。
「……誰もいないわね」
「危ないですよ。差出人不明の内容を信じては」
振り向くとミラウス様が笑顔でこちらに向かっていらっしゃるところでした。
「確かに。文字に覚えがあったからと、軽率でしたわ」
「その様に危機感の薄いお嬢さんは、私がきちんとお守りいたしますよ」
「ふふふ。ありがとうございます」
二人でお互いの気持ちを語り合い、庭園を散策した後に雑貨屋へ寄り、必要なお買い物をしましたの。
店内には学園の生徒が何人かいらっしゃったので、私たちのことはすぐに社交界の話の種となるでしょう。
その様な事が気にならないくらい。
短い時間ですけれど二人でお出かけできたことがとても嬉しかったのです。
この時の私はミラウス様との外出が楽しかったことで胸がいっぱいになり、自分の卒業がもうすぐそこまで近づいていることを忘れてしまっていたのですわ。




