第5話
子供相手に申し訳ありませんけれど、こちらからも冷たいお顔を差し上げましたわ。
万が一にでもミスリー殿下が国王となった時、この国は混乱を招き自滅するやもしれませんわね。
「現状、この場での決定は出来ませんわ。しかし、ディミトリウス侯爵家現当主である私としては、ミスリー殿下と我が妹との婚約はこちらから貴方様有責で取り消させていただきます」
場を悪くするまいとにこやかに言ったのですが、周囲の反応がおかしいですわね。
体から力が抜けたかのようにあちらこちらからグラスを落とす音がいたします。
殿下よりも当主である私の発言の方が上とみなされたと受け取ってよろしいということかしら。
ユフィという娘は隠しもせずに睨みつけてきますし、殿下は怒りのあまり体がぷるぷるしているようですわ。
「……これでは」
「何でしょう」
「これでは私が婚約破棄される形になるだろうが ! 」
そうなるようにしたのは気付くことが出来るのですね。まあ、できないと困りますけれど。
「お姉さま、お顔の色が優れませんわ」
「ディミトリウス侯爵様ここを離れましょう。さあ、お手を」
後ろで見守ってくれていたエルフレット様は心配そうに手を差し伸べてくれました。
本当にお優しい方ですわね。
「イステリア伯爵様、ありがとうございます。久方振りの参加で疲れが出てしまったようですわ」
私は自分の顔を扇子で隠します。
顔色もそうですが、表情を周囲に悟られないようにするのもたしなみですものね。
「申し訳ございませんが本日はここで妹と供に失礼させていただきます。今回の件に関しましてはこちらから国王両陛下へお伝えいたします」
目の前の無礼者にはしたくありませんが、一応王族ですものね。
礼は欠かせませんわ。
「それでは皆様、ごきげんよう」




