第45話
大声を張り上げたのは初めてのこと。貴族令嬢らしからぬことをしたのは自覚しています。
「ふざけるな、王族侮辱罪を適用するぞ ! 」
私が大きな声を出したためか、ロディエンヌ様は冷静になられて言います。
「侮辱罪を受けるとしたら、殿下だと思いますわ」
「ワグナイヤ嬢。貴様は友人をちゃんと選ぶべきだったな。リネル嬢に毒されたのだろう」
「…………」
なんでしょうか。ロディエンヌ様と私の手は、強く握られ力が入りすぎて、小刻みに震えてしまいます。
その手が突然、優しくあたたかいものに包まれ顔を上げました。
「これ以上は、あなたの綺麗な手に傷が入ってしまいます。そうなると私は私自身を許せなくなってしまいます」
隣にはいつの間にかミラウス様が並び、笑顔を向けてくださるのですが、眉尻が下がり困っているようにも見えましたの。
「キンデンベルクではないか。人の婚約者に手を出しおって、恥を知れ ! 」
「それをあなたが言いますか」
声のトーンを落としてそう言ったミラウス様は、怒りで我を忘れているミスリー殿下の方へ近づいて行きます。
「キンデンベルク様、お戻りください」
我が家の護衛が思わず声をかけてしまいました。上の者へ声をかける覚悟を持っての言葉です。
「ありがとう。あなたにはしっかりと姫を守っていただきたい」
「は、はいっ ! 」
ミラウス様の言葉に力強く返事をすると態勢を整え、ロディエンヌ様の護衛と共に陣を組み直し守りへと戻りました。
「何を笑っている ! 」
「あなたは自分が現在までに何をしたのかご理解されていますか ? 」
眼光鋭く彼を見る殿下は、何かに取り憑かれている様な、私が知っている殿下ではないように思えました。




