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女侯爵と誰か  作者: 氷村はるか
第一部

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40/70

第40話


「私の気持ちは本気です。他の令嬢と婚約していた男に言われてもと思われるでしょうが…。幼少期にお会いしているのですよ、あのお茶会で」

「あのお茶会、ですか ? 」

「はい。幼い頃にあった王家主催のお茶会です」


私とミスリー殿下の婚約が決定した王家主催のお茶会のことですわね。

お姉様が重要な時にいなかったから、私が婚約者になってしまったあの日。


「リネル嬢どうされました。何か嫌な事でもありましたか ? 」


思考の深みに入り込もうとしていたところ、彼の声で我に返りました。

今、私は何を考えていたのでしょう。


「…いえ、何でもありませんわ」


そう笑顔で誤魔化しはしたものの、お姉様に対する重苦しいどろどろとした感情が湧き出てきたのは確かです。

当時、すでに次期当主として定められていたお姉様と、第一王子殿下との婚約は難しくいずれは私と婚約をとのお話にはなっていたでしょう。

しかし、お姉様は聡明なお方です。

あのお茶会が殿下の婚約者や側近候補の方々を決めるものだと気付いていたのかもしれません。


「本当に大丈夫ですか ? 珍しく愛らしいお顔が歪んでいらっしゃいますよ」


馬車の窓に己の顔を映すと、廊下ですれ違ったユフィ嬢のあの歪んだ表情とまではいきませんが、近しく酷い顔をしていました。


「申し訳ありません。こんな顔を見せるなんて…」


好意を持ち始めたお相手の前でこのような醜態を晒してしまうとは情けないですわね。


「私はあなたの色々な表情が見れて嬉しいですよ」


ミラウス様はそうおっしゃると、とても優しくて柔らかな笑顔をされました。

彼の笑顔に内のどろどろしたものが消されていくようで、ほっと一息つき体の緊張が薄らぐのを感じ取ることができましたの。


「楽しい時間をもっと過ごしたいのですが、もう終わりのようです」


窓の外を流れる景色はディミトリウス邸の壁へと変わり、現実に戻された気持ちになりました。



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