第29話
ロディエンヌ様のおっしゃる通りです。私たちは高等部で、法律上はもう成人として認められております。
男爵家では教えていただけなかったのでしょうか。
「そんな……私は」
「ユフィ、そのように涙ばかり流していては何も解決しない」
殿下が優しく声を掛け、ユフィ嬢の頬を伝う涙を手で拭います。
「ユフィ嬢こちらを」
タイミングを計って声を出したのは殿下の側近候補で、宰相閣下のご子息であるネイト=ムンバー様です。
彼はハンカチを胸ポケットから取り出し、彼女に渡すとなぜか私とロディエンヌ様を睨みつけてきましたの。
ムンバー宰相閣下にはよくしていただいておりますが、令息であるネイト様とは初対面だと気づきました。
「ところでミスリー殿下、ご用があって参ったのではありませんの ? 」
軽くため息をつきながらも優雅に紅茶をお飲みになります。
「なんだその態度は ! 」
「今までと何ら変わりませんが」
早く要件をお話しくださいませと促すロディエンヌ様に、男爵令嬢が声を張り上げます。
「下位貴族の私には酷くしても構いません。けれど殿下や側近候補の方々の立場まで悪くすることはないじゃないですか ! 」
息を切らせて捲し立てていましたが私とロディエンヌ様は疑問だらけで、お互いに顔を見合わせては首を緩く左右に振りました。
何のことを言われているのか分からないのです。
彼らの立場が学園内で悪いのは、自分たちの今までの行いが原因なのに、それをまったく理解できないとは。
「リネット嬢、何を呆けた顔をしている。ユフィに散々嫌がらせをしていたのを知っているんだぞ ! 」
「分かりません」
「この期に及んで逃れようというのか」
「私はここ二カ月ほど、授業以外はこちらのロディエンヌ様のサロンにおりました。多忙であるためユフィ嬢に何かをするということは不可能ですわ」
サロンに集ったあの日から、殿下一行についての相談が絶えないのです。
読んでくださりありがとうございます。




