第19話
長時間待たされ、お茶をする時間には向かない時刻に殿下はいらしたのです。
「お待ちしておりました」
失礼のないようにと礼をしたのですが、私の行動が気に入らなかったのか不機嫌なお顔をされていました。そして、そのまま去ってしまったのです。
周囲の侍従たちもミスリー殿下の行動に呆れ、父を呼びに行ってくださいました。
「リネル、話は聞いたよ。私の仕事も終わったから一緒に帰ろう」
「はい、お父様」
あの時、上手く笑えていたのだろうかと今でも時折頭を過ります。
小さい頃に受けた心の傷は、大人になったからと消えることはなく、苦しめてくるものですね。
その後もミスリー殿下との義務的なお茶会は続きました。
初めは週に一度だったものが二週間に一度となり、王立学園に入るころには一カ月に一回となりました。
たとえ殿下が来なくとも。
殿下が来ない日は、国王両陛下、時には幼い第二王子殿下がお相手をしてくださいました。
王家の方々にお気を遣わせてしまい申し訳ないと吐露しますと、国王両陛下も眉尻を下げてしまわれました。
ある日のお茶会もミスリー殿下は参加されず、王妃陛下が参加してくださいました。
「リネル、本当に申し訳ないわ。あの子は王族がどのような存在なのか、立場なのかを理解できていないの。なので陛下と私でこの婚約について考えを改めようという話になったわ」
「…そうですか」
「幼い頃からあなたを王太子妃教育で縛ってしまって本当に申し訳ないわ」
「王妃陛下、その点はお気になさらず。私も得られるものが沢山ありました。機会を与えてくださり感謝しております」
「ありがとう、ルネル」
心に重くのしかかる会話はそこまでで、あとは城下の流行の話をしたりなど、楽しい時間を頂戴し帰邸しました。




