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地平線のかなた。ポテト姫。お金がない!

第二章 お金がない!

「……は? 運転資金、ゼロ……!?」

豪華な調度品が並ぶ大地原家の応接間。 漆黒のフリルドレスに身を包んだ大地原かなたの金切り声が、高い天井に虚しくこだました。

目の前には、厚みのある書類の山と、黒縁メガネの奥で困り果てた目を丸くしている税理士の男性。そして、不安そうに両手をギュッと握りしめている母・絹代の姿があった。

「ゼロっていうか、むしろマイナスに近いですな、かなたお嬢様」

税理士はため息をつきながら、電卓の数字を指で弾いた。

「確かに、亡くなった勝男さんが残した遺産は莫大です。ニセコの一等地にある広大な農地に、最新の農業機械、そして豪邸。総資産価値にすれば数十億円を下らないでしょう。ですがね……それが問題なのです」

「問題……? 金持ちだから問題ないんじゃないの!?」

「『相続税』ですよ」

税理士が突きつけた書類には、目玉が飛び出るような数字が印字されていた。

「不動産の評価額が高すぎるんです。現金や預金もそれなりにありましたが、勝男さんは生前、最新の大型トラクターの導入や土壌改良への設備投資に莫大なキャッシュを使っておられた。その上で、この莫大な相続税の支払いが数ヶ月後に迫っている。納税は原則『現金一括』です」

「げ、現金一括……!?」

「ええ。つまりですね……『資産はあるが、自由に使える現金のプールが一切ない』状態なんです。手元の現金はすべて相続税の納税準備に回さざるを得ない。結果として、今期の苗芋の仕入れ、肥料代、燃料代、パート従業員の人件費――いわゆる『農地の運転資金』が完全に底をついています」

かなたは眩暈めまいを覚えてテーブルに伏した。

昨日はあれほど威勢よくトラクターを操縦し、町民たちを黙らせたのだ。 S4システムとスパコン『樹林』を用いた『ヴァーチャル・ダイブ』での超睡眠学習により、かなたの脳内にはプロをも凌駕する農業理論と技術が完璧に叩き込まれている。

(知識も技術もある! トラクターも超絶上手く動かせる! なのに……種芋と燃料を買う『リアルのお金』がないってどういうことよーっ!?)

「ゲームなら『資金難でゲームオーバー』のやつじゃん……! 課金させてよ、課金!!」

頭を抱えて叫ぶかなたの横で、絹代がぽろぽろと涙をこぼした。

「ごめんなさい、かなた……お父さんが生きている時は、お金のことなんて全部任せっきりだったから……」

「お母さんは悪くないよ! くっそう……お父さん、なんでこんなギリギリのキャッシュフローで経営回してたのよ……!」

大地原農園が「資産はあるが現金がない」という深刻な黒字倒産の危機に瀕している――。 その噂は、ハイエナのような大人たちの耳に届くまでに、そう時間はかからなかった。

翌日からの大地原家には、ひっきりなしに「親切な顔をした訪問者」が押し寄せることとなった。

最初にやってきたのは、地元農協の組合長だった。

「いやあ、かなたちゃん! 厳しいらしいねえ!」 お腹の突き出たスーツ姿の組合長は、高級そうな羊羹をテーブルに置きながら、揉み手で笑った。 「勝男さんには昔から世話になったからね。私も心が痛むよ。そこで提案なんだがね、大地原農園の土地の半分を農協に売却しないかね? そうすれば相続税も払えるし、手元に運転資金も残る。残りの小さな畑で、細々と家庭菜園みたいにやっていけばいいじゃないか。女の子一人でこんな広い畑、維持できるわけないんだからさあ」

(……顔がニヤついてんだよハゲ!! ニセコの開発ラッシュで土地の値上がりが確実だから、安値で叩き開墾して転売する気満々でしょうが!!)

かなたは心の中で毒づきつつ、引きつった笑顔で「検討しまーす」と追いはらった。

だが、これで終わりではなかった。

次にやってきたのは、地方銀行と信用金庫の融資担当者たちだ。

「大地原様、我が行から融資を行う用意がございます。ただし……担保として、このご自宅と農地の全区画に根抵当権を設定させていただきます。返済が滞った場合は、速やかに競売手続きに入らせていただきますが……まあ、安全確実な担保ですからねえ」

(実質的な乗っ取り宣告かよ!! 金利も上限ギリギリで吹き飛ばす気満々じゃん!!)

さらにタチが悪いのは、近所のベテラン農家たちだった。

「かなたちゃん、農業を甘く見ちゃいかんよ。昨日ちょっとトラクターが上手く動かせたからって、経営は別物だ。どうだ、うちの傘下に入らないか? 土地の名義をうちに変更してくれれば、君を時給千円で雇ってあげてもいいぞ?」

(上から目線で土地を分捕ろうとするな!! 時給千円で元の自分の土地耕す物好きがどこにいるのよ!!)

押し寄せる「悪い大人たち」の欲望。 彼らは皆、突然大黒柱を失った母娘を親切面で囲い込み、ニセコの一等地に位置する膨大な大地原農園の利権をむしり取ろうと群がってきていたのだ。

応接間で一人になったかなたは、ゴスロリドレスのスカートをギューッと握りしめた。

「どいつもこいつも……人の足元見やがって……! 私がオタクで、社会経験のない二十歳の娘だからってナメやがって……っ!」

知識はある。やる気もある。 しかし、「法律」「金融」「手続き」というリアルの現実世界の壁が、かなたの前に重く立ちはだかっていた。 『ヴァーチャル・ダイブ』で農業技術は学べても、複雑怪奇な日本の税制や、地域経済の利権構造を短時間で打ち破る術は、まだ修得していなかったのだ。

「お金……どこかに落ちてないかな……。1億円くらい……」

現実逃避のつぶやきが、誰もいない部屋に虚しく響いた。

同じ頃。 ニセコ町の小さな居酒屋で、ジョッキを握りしめながら一人頭を抱えている青年がいた。

彼の名は、佐藤健人さとう・けんと。20歳。 かなたとは小・中・高校と同級生で、家も比較的近所だった。

健人は、至ってフツウの青年だった。 スポーツが特別得意なわけでもなく、勉強も中の上。趣味はスニーカー集めとバラエティ番組を見ること。 一方のかなたは、昔からアニメやコスプレやゲームに熱中する生粋のオタク。そして町一番のお金持ちの「ポテト姫」。

趣味も違えば、住む世界も違う。 話せば普通に雑談はするし、仲が悪いわけではない。だが、決して「親しい」と言える距離感ではなかった。

しかし、健人には、誰にも言えない秘密があった。

(かなた……)

健人は、昔からかなたのことが好きだったのだ。

周りの男子たちが「オタクで変な服着てるやつ」と嘲笑していても、健人だけは知っていた。 自分の好きなものにまっすぐで、なりふり構わず情熱を注ぐかなたの瞳が、どれほどキラキラと輝いているかを。 ゴスロリ衣装を着て嬉しそうに歩く彼女の姿が、健人にはどんなアイドルよりも可愛く見えていた。

だが、健人は農業の知識なんてこれっぽっちも無かった。 実家は小さな商店で、畑仕事など手伝ったこともない。アニメの話にもついていけない。だから、ずっと遠くから見ていることしかできなかったのだ。

そんな中、大地原家の悲劇と、かなたが窮地に陥っている噂が健人の耳に入ってきた。

『ポテト姫のところ、相続税が払えなくて破産寸前らしいぞ』 『農協と銀行が土地を差し押さえに動いてるってさ』 『可哀想に、あの娘じゃ大人たちの口車に騙されてすぐ身ぐるみ剥がされるな』

居酒屋でベテラン農家たちが下世話に噂し合う声を聞きながら、健人は拳を強く握りしめた。胸の奥が、焼けるように熱かった。

(かなたが……あんなに頑張ってトラクター乗って、家を守ろうとしてるのに……! なんで周りの大人は助けるどころか、奪おうとしてんだよ……!)

自分には、お金はない。 農業の知識もない。 かなたの好きなアニメやゲームの知識だってない。

でも――だからといって、このまま指をくわえて見ているだけでいいのか? かなたが大人たちに踏みにじられ、大好きな笑顔を失っていくのを、ただ黙って見過ごすのか?

「……俺に、できることは……何かないのか……!?」

健人はジョッキをテーブルに叩きつけた。

農協や銀行は、自分たちの利益のために動いている。 なら、かなたの味方になれる「公的な立場」はどこだ? 農家の権利を守り、補助金や制度融資を正しく案内し、悪質な買収から町民を守るための組織はどこだ?

――町役場だ。

ニセコ町役場の産業振興課や税務課なら、農地の適正な保護や、新規就農者・事業承継者向けの公的融資(スーパーL資金や農業改良資金など)、さらには相続税の猶予制度(農地の納税猶予特例)についての情報と権限を持っているはずだ。

だが、健人はただのフリーターだ。何の権限もない。

「……なるしかないだろ。役場職員に……!」

健人は自分の酒代をテーブルに叩きつけると、居酒屋を飛び出した。

町役場の中途・特別枠の採用試験は、なんと3週間後に迫っていた。 本来なら何ヶ月も前から予備校に通って対策するような難関試験だ。地元の倍率は決して低くない。勉強が得意ではない健人にとって、それは無謀とも言える挑戦だった。

だが、健人の目に迷いはなかった。

「待ってろ、かなた……! 絶対に、お前を助ける手段を持って……お前の前に立ってみせるから!!」

その日から、健人の「死狂い」の猛勉強が始まった。

自分の部屋に閉じこもり、積み上げた公務員試験のテキスト、行政法、民法、地方自治法、そして農業関連法案の専門書。 睡魔が襲ってくれば、冷水で顔を洗い、栄養ドリンクを煽り込んだ。

「行政手続きにおける教示の義務……農地法第3条、第4条、第5条の権利移動の制限……! 相続税法第26条の9、農地等の相続税の納税猶予の特例……!!」

今まで漫画の単行本くらいしか読まなかった男の頭脳が、爆発的な熱量で知識を吸収していく。

かなたの顔が浮かぶ。 泥だらけになりながら、フリルドレスでトラクターにしがみついていた、あの凛々しい姿。

(あいつは、一人で戦ってるんだ。親父さんを亡くして、弱気な母親を支えて、訳の分からない農業に飛び込んで……! 一人で、全部背負い込んで戦ってるんだ……!)

なら、俺だって日怯えてる場合じゃない。 男なら、好きな女のピンチに泥を喰らってでも役に立ってみせろ!

「うおおおおおおあっ!!」

夜を徹してペンを走らせる健人。 その執念は、まさに恋する男の底力だった。

一方――。

同じニセコの町で、かなたもまた、夜の闇の中で戦っていた。

自室のベッドの上。 頭には最新型VRヘッドギア『フルダイブ・バルブ』。

『S4システム、稼働中。スーパーコンピュータ「樹林」接続……処理能力170%』

仮想空間の中で、かなたは無数の法学テキストと金融シミュレーションのホログラムに囲まれていた。

「農業技術だけじゃダメだ……! 現実の『悪い大人たち』を撃退するための、法律と資金調達の知識が必要……!」

かなたもまた、S4システムの超睡眠学習機能をフル回転させ、仮想空間内で寝る間も惜しんで(いや、睡眠中なのだが)「農業経営」「税務」「金融防衛」の知識を貪り食っていた。

流星群の粒子が舞う仮想現実で知識を貪る『ポテト姫』。 現実の狭い部屋で蛍光灯の光を浴びながらペンを握りつづける『健人』。

接点のない二人が、それぞれの場所で、同じ「大地原農園の未来」のために、己の限界を超えた猛勉強を繰り広げていた。

3週間後。

ニセコ町役場の採用試験会場。 そこには、目の下に濃いクマを作りながらも、鋭い眼光を放つ健人の姿があった。

筆記試験のペーパーが配られる。 健人は迷いなくペンを走らせた。 出題された「地域農業の課題と行政の支援策」という小論文のお題に対し、健人は大地原農園の現状と、ニセコの農地が抱える外資・農協の買収リスク、そしてそれに対する公的資金と納税猶予の活用策を、溢れ出る熱量で書き殴った。

面接試験でも、面接官の職員たちが圧迫気味に問いかける。

「佐藤くん。君はこれまで農業にも行政にも関わりがなかったようだが、なぜ今、急に町役場を志望したのかね?」

健人は背筋を伸ばし、面接官の目を真っ直ぐに見つめて答えた。

「この町の農業を守りたいからです! ニセコの大地は、外資や一部の身勝手な大人たちのマネーゲームの道具じゃありません! 必死に土地を守ろうとしている若い農家が、知識がないからという理由で踏みにじられるのを……俺は絶対に許したくないんです!!」

面接官たちが、一瞬圧倒されたように息をのんだ。 そこにあるのは、模範解答を丸暗記してきた就活生の顔ではない。明確な「戦う理由」を持った男の顔だった。

数日後。

大地原農園の応接間には、再び嫌な空気が漂っていた。

「かなたちゃん、そろそろ年貢の納め時だよ」

農協の組合長が、今度は弁護士を伴ってやってきていた。 後ろには、地方銀行の融資担当者も控えている。

「今週中に運転資金の目途が立たなければ、仕入れ先も種芋を出してくれないよ? うちの提案通り、土地の半分を農協に売却して、残りの融資を受ける契約書に印鑑を押しなさい。それが君たち親子のためだ」

「くっ……」

かなたはテーブルの下で拳を握りしめた。 S4システムで納税猶予特例の存在は知った。しかし、その申請には「認定農業者」としての申請書類や、町役場を通じた膨大な公的手続きが必要であり、素人のかなたが今から役場の窓口に行っても、手続き完了までに数ヶ月かかってしまう。

時間の猶予リミットが、圧倒的に足りないのだ。

「さあ、ここにハンコを……」

組合長が契約書を差し出した、その時だった。

バンッ!!

応接間のドアが、荒々しく開け放たれた。

「そこまでだ!!」

息を切らし、泥の跳ねたスーツ姿で飛び込んできたのは――見覚えのある青年だった。

「け、健人……!? なんであんたがここに!?」

かなたが目を丸くする。

健人はポケットから、一枚の身分証明書――いや、ニセコ町役場の『辞令交付書』と『職員証』をバシッと掲げてみせた。

「ニセコ町役場・産業振興課!! 本日付けで着任しました、佐藤健人です!!」

「はぁ!? 役場!? あんたフリーターじゃなかったの!?」

呆然とするかなたと絹代を背中に庇うように、健人は組合長と銀行員の前に立ちはだかった。

「農協組合長! 及び地方銀行担当者! あなたがたが提示しているその契約書、公的機関の観点から見て極めて不適切です!」

「な、なんだと小僧……! 役場の新人風情が口を挟むな!」

組合長が顔を真っ赤にして怒鳴るが、健人は胸ポケットからぎっしりと書き込みがされた厚いファイルを取り出し、テーブルに叩きつけた。

「農地法第3条の趣旨に照らし合わせ、不当な低価格での農地買収案は役場の農業委員会が許可を出しません! さらに!!」

健人はかなたに向き直り、力強い目で言った。

「かなた! 大丈夫だ! 大地原農園には『農地等の相続税の納税猶予特例』が適用できる! 現状の経営計画書と、君の優れた営農実績があれば、本日付で役場から緊急の特例認定を出す手続きを開始した!」

「え……!? でも、それって手続きに何ヶ月もかかるんじゃ……!?」

「俺が昨日から徹夜で書類を全部作った! 産業振興課の課長と農業委員会の会長の判子も、今朝一番で貰ってきた!! これで相続税の支払いは『全額猶予』される!!」

「ぜ、全額猶予……!?」

かなたと母の絹代が息をのむ。

「さらに!」健人は間髪入れずに別の書類を叩きつけた。 「無利子・無担保の『新規就農・事業承継緊急運転資金』の公的融資、5000万円の即時実行枠を確保した! これで種芋も、肥料も、燃料代も全部今すぐキャッシュで支払える!! 誰も大地原農園の土地を1平方メートルたりとも奪わせない!!」

「「「な、何だとぉぉぉぉっ!?」」」

組合長、銀行員、そしてベテラン農家たちが悲鳴のような声を上げた。

完璧な法的手続きと、公的融資の電撃的な確保。 『資産はあるが現金がない』という大地原農園の唯一の弱点が、健人が持ち込んだ書類一枚によって、完全に塞がれた瞬間だった。

「な、なんだお前は……! なんでそこまで……!」

ガタガタと震える組合長に対し、健人はニッと爽やかに笑ってみせた。

「俺はニセコ町役場の職員ですから。町民の、そして大切な農家の権利を守るのが仕事ですから!」

健人はぐうの音も出ない大人たちに向かって、出口をビシッと指さした。

「お引き取りください! これ以上、大地原農園に不当な圧力をかけるなら、役場として正式に農林水産省と金融庁に通報します!」

悪徳な大人たちは、捨て台詞を残して蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。

静まり返る応接間。

「……あ、ありえない……」

かなたは呆然とテーブルの上の書類を見つめていた。 そこには、自分がS4システムで学んだ知識でも解決に数ヶ月かかると諦めていた「資金繰りの壁」を、完璧にクリアする行政手続きの証明が並んでいた。

「健人……あんた、いつの間に公務員試験なんて受かってたの……? ていうか、なんでこんな書類完璧に準備できるのよ……オタクの特技『徹夜で資料作成』でも発動したの……!?」

健人は照れくさそうに頭を掻いた。

「いやあ……マジで死ぬかと思ったよ。3週間、睡眠時間2時間で勉強したからさ。かなたが泥だらけでトラクター乗ってるの見たら……俺だけ何もしないで指くわえてるなんて、カッコ悪すぎて出来ねぇだろ」

「……私のために……勉強したの?」

「え? あ、いや! 町のため! 町の農業のためだよっ!!」

健人は慌てて真っ赤になって手を振った。

かなたはその健人の顔を、じっと見つめた。 いつも地味で、目立たなくて、自分のオタク趣味の話なんて一度もしなかった同級生の男の子。 それが今、自分のピンチを救うために、信じられないような努力をして、ヒーローみたいに現れたのだ。

(健人……あんた、やるじゃん……)

かなたの胸の奥が、ほんの少しだけ温かくなった。 だが、そこは誇り高き『ポテト姫』だ。素直にデレるわけにはいかない。

かなたはフリルのスカートをバサッと翻し、腰に手を当てて不敵に笑った。

「フン! 助かったわ健人! でも勘違いしないでよね、これで借りができたなんて思わないでよ! 私の『完璧な農業シミュレーション』に、あんたの『行政サポート』が加わっただけなんだから!」

「はは、分かってるよ。かなたは相変わらずだな」

健人は嬉しそうに笑った。

「よし! 運転資金5000万円、確保完了!!」 かなたは応接間の窓を大きく開け、広大な北海道の大地に向かって叫んだ。

「行くわよ健人! お母さん! 最高品質の種芋を大量購入して、このニセコの畑を黄金のポテト・フィールドに変えてやるんだから!!」

「「オーッ!!」」

公的資金という強力な武器と、最強の味方「役場職員・健人」を得たかなた。 資金難を突破した『ポテト姫』の破天荒な農業改革は、いよいよ本格的な「作付け」という次なるステージへと突き進んでいくのだった。


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