ユン・ソア4歳『ヴァーチャル・ダイブ』で従僕のような彼氏が欲しい。
あらすじ
『ヴァーチャル・ダイブ』の黒幕。佐藤志乃の孫娘ソア4歳が初ダイブしたのだが。。。。
北海道、ニセコは新緑を吹き抜ける鋭い風に包まれていた。
怪物の名は『樹林』。
暗闇に浮かび上がるのは、無数のLEDランプが放つ青と緑の明滅だった。
太い光ファイバーケーブルがまるで血管のようにそれらを繋ぎ合わせ、無数の冷却ファンが「フォーーー」という低く重い地鳴りのような排気音を奏でている。家庭用ゲーム機が並列処理を行うことで生み出される演算能力は、かつて世界最高峰を誇ったスーパーコンピュータ『富岳』の1.7倍。
これを商用VRコンテンツとして切り売りし、金儲けの道具とするには余りある性能だった。
「総投資額40億なんて、あと1年もあればお釣りが来るわ」
メインルームの二重強化ガラス越しに『樹林』を見下ろしながら、佐藤志乃はブランデーグラスを傾けた。
商用サービスの名はフル体験型VRゲーム『ヴァーチャル・ダイブ』。 頭部に装着する最新型VRヘッドギア『フルダイブ・バルブ』は、睡眠時の脳波に直接介入する。超睡眠時学習システムとしての側面を持ち、日中の数百倍の密度で仮想空間を体験させるこの技術は、子供を持つ親たちの間で空前の大ヒットを記録していた。
「子供が夜8時には勝手にベッドに入って、すやすや眠ってくれる」
「睡眠学習で頭も良くなるなんて夢のようだ」
親たちがそう言って絶賛する裏で、志乃は冷たい笑みを浮かべる。彼らは知らないのだ。このシステムの本質が、かつて軍事・精神制御用として開発された『自我の不測の補完』であることを。
人間の脳が抱くドロドロとした精神的揺らぎや異常な衝動を仮想空間内で徹底的に肥大化させ、擬似体験によって「消費」し尽くさせる機能。人殺し願望を持つ者には終わりなき無双の殺戮を。絶望に苛まれる者には無数の自殺を体験させ、その精神エネルギーを完全に磨耗・抹消する。
もちろん、商用版ではR15以下の安全装置が組み込まれている。しかし、稀に脳の負担も顧みず、覚醒状態から無理やり強制ダイブを試みる生意気な若者や狂人たちがいた。彼らがシステム内でパニックを起こすと、即座に『自我の不測の補完』が裏で発動する。恐怖と絶望の無限ループの中に叩き込まれ、現実に戻ってきたときにはすっかりおとなしい「優等生」へと更生されているのだ。
「完璧なビジネスモデル……ふふ、実に愉快だわ」
志乃がほくそ笑んだその時、彼女のスマートフォンが甲高い電子音を鳴らした。画面に表示された発信者の名前を見た瞬間、冷酷な投資家の顔が、一瞬で引きつった。
画面には、可憐なピンク色のフォントでこう表示されていた。
『ユン・ソア』
「……来たわね。あの大悪魔が」
志乃は溜め息をつき、極上のブランデーを一気に飲み干すと、意を決して通話ボタンをタップした。
◇
ユン・ソア。御年、四歳。 韓国で今、知らない者はいない天才子役タレント「ソン・シア」の本名である。
奇跡のような美男美女である両親の遺伝子を極限まで美しく昇華させたその容姿は、まさに天使そのものだった。透き通るような白磁の肌、宝石のように輝く大きな瞳、つややかな漆黒の髪。カメラの前に立てば、世の大人たちはその愛くるしい笑顔一つでノックアウトされ、彼女がプロデュースする商品は瞬く間に完売した。
だが、その天使の仮面の下に隠されているのは、世界一高慢で、ドブのようにドス黒く糞生意気な素顔であった。
「おばあちゃま? 遅い。3秒も待たせるなんて、万死に値するわよ」
スピーカー越しに聞こえてきたのは、幼く鈴の鳴るような、しかし冷酷極まりない少女の声だった。
「ごめんなさいね、ソアちゃん。今、ニセコのオフィスで仕事を……」 「言い訳は不要よ。それより、あのアタシの『おもちゃ』の件、準備はできたの?」 「ええ……貴女のパパとママには話を通してあるわ。『ヴァーチャル・ダイブ』の特別専用回線をソアちゃんの部屋に引かせたわ」
「ふん、当たり前でしょ。このアタシが睡眠時間を削ってまで体験してあげるんだから、光栄に思いなさい」
ソアの我儘は今に始まったことではない。かつて彼女は「豪華客船が欲しい」と泣き叫び、両親を困惑させた。結局、豪華客船は維持費と移動スピードの観点から却下され、代わりに専用のジャンボジェット機を購入してもらった経緯がある。(なお、そのジャンボ機もソアが「一度乗ったら飽きた。中が狭い」と言い放ったため、速やかに中古市場で売却された)。
そんな弱冠四歳のワガママ女王が、今もっとも欲しがっているもの。 それは「男」だった。
それも、大人の男ではない。自分と同じ四歳で、容姿端麗で、自分の言うことを何でも聞き、靴の裏を舐めろと言えば迷わず舐めるような、忠実な「従僕のような彼氏」である。
「現実の四歳児なんて、鼻水を垂らして砂を食べてる愚民ばかりじゃない。アタシの美しさに釣り合う男なんて、この世に存在するわけがないのよ」 「だから……仮想空間の中で作れ、と?」 「当たり前でしょ! アタシの思い通りになる、アタシだけの完璧な彼氏。それを『樹林』の演算能力で作らせなさい。もし満足いかなかったら、おばあちゃまのあのダサいゲーム機の山、全部ハンマーで叩き潰すから」
「……分かったわ。AIのパラメータは最高レベルに設定しておく。今夜、ダイブしなさい」
電話が切れると、志乃はこめかみを押さえて深く溜め息をついた。 いくら『樹林』が劣化版とはいえ、一人の人間の精神波長に合わせて完全なインタラクティブNPCを生成するなど、無駄なリソース消費もいいところだ。
「……まあいいわ。あの子の性格を少しは矯正してくれる『補完』が働けば、少しはマシな性格になるかもしれないしね」
志乃はキーボードを叩き、ソア専用の仮想空間「プライベート・スイート」の生成コマンドを入力した。
◇
夜9時。ソリッドなインテリアで統一されたソウル市内の超高級タワーマンションの一室。
四歳のソアは、シルクのパジャマに身を包み、幼い頭に最新型のヘッドギア『フルダイブ・バルブ』を装着していた。ベッドの脇には、彼女の専属医師とメイドが控え、生体バイタルを監視している。
「ソアお嬢様、心拍数・脳波ともに安定しております。いつでもお眠りいただけます」 「ふん、さっさとダイブさせなさい。時間の無駄よ」
ソアが小さく欠伸をすると、睡眠導入パルスが脳内に送り込まれた。彼女の意識は瞬く間に下降し、現実の肉体を離れて、光の奔流へと落ちていく。
——ダイブ成功。
次にソアが目を開けたとき、そこは夢のような空間だった。
見渡す限りの広大なフレンチ・クラシック調のラグジュアリー・スイートルーム。天井からは巨大なクリスタル・シャンデリアが眩い光を放ち、足元には毛足の長い最高級のシルクカーペットが敷き詰められている。窓の外には、永劫に沈むことのない美しい夕暮れのパリの街並みが広がっていた。
「ほう……まあまあじゃない。おばあちゃまにしては合格点ね」
ソアは腕を組み、ふん、と鼻を鳴らした。 そして、部屋の中央にあるキングサイズのソファに腰掛け、優雅に脚を組んだ(四歳の短く可愛らしい脚だが、本人は完璧に大人の女優を気取っている)。
「で? アタシの『彼氏』はどこにいるのかしら?」
彼女が呟いた瞬間、部屋の重厚なオーク材のドアが静かに開いた。
入ってきたのは、一人の少年だった。
年齢はソアと同じ、四歳ほど。 漆黒の髪に、吸い込まれそうなほど深い黒の瞳。高級なテーラードスーツを完璧に着こなし、その立ち振る舞いは英国貴族のように洗練されていた。そして何より、その顔立ちたるや、まさに神が作り出した最高傑作と言える美少年だった。
少年はソアの前に歩み寄ると、すっと片膝をつき、胸に手を当てて深く頭を下げた。
「お初にお目にかかります、ソア様。僕は今日から貴女のお傍に仕える彼氏……『ハル』と申します。貴女の望む全てを叶えるために、ここに存在しております」
声は低く、どこか透明感のある美しい少年ボイス。 ソアの大きな瞳が、ギラリと妖しい光を放った。
「……ほう。なかなか顔が良いじゃない。合格よ」 「勿論です。ソア様の美しさに釣り合う存在として、この『樹林』のメインメモリを贅沢に使用して生成されましたから」 「口の減らないAIね。まあいいわ。ハル、アタシの靴を脱がしなさい」
ソアが足を差し出す。ハルは迷うことなく、恭しい手つきでソアの小さな靴を脱がせ、その足先に軽くキスを落とした。
「……! なかなかやるじゃない」 「ソア様の僕として、当然の嗜みです」
ソアは口元を歪めてニヤリと笑った。 現実の子供たちといえば、泥遊びに夢中になったり、アンパンマンのジュースをこぼしたりするような愚鈍な存在ばかり。しかし、このハルは違う。四歳の姿をした、完全無欠の従順な奴隷であり、最高のパートナーなのだ。
「いいわ、ハル! アタシはお腹が空いたの。最高のケーキを用意しなさい。それと、アタシを膝の上に乗せて食べさせなさい!」 「御意のままに、我が女王」
ハルが指を鳴らすと、テーブルの上に瞬時に最高級のイチゴのショートケーキと、温かいミルクティーが現れた。ハルはソアを優しく抱き上げると、自らの膝の上に座らせ、銀のフォークで丁寧にケーキを小さく切り分け、彼女の口へと運んだ。
「あーんして、ソア様」 「ん……まあまあね。ちょっと甘みが足りないわ」 「申し訳ございません。すぐに糖度を0.5%向上させます」
「フフ、フハハハハ!」
ソアは幼い声をあげて高らかに笑った。 快感だった。現実世界でも全人類が自分に平伏していると思っていたが、この仮想空間では、自分の思考一つですべてが思い通りになる。完璧な美少年の彼氏が、自分を神のように崇め奉り、どんな理不尽な命令にも笑顔で従うのだ。
「ヴァーチャル・ダイブ、最高じゃない! もう現実に帰るのが馬鹿らしくなってくるわ!」
ソアはハルの頬を両手で挟み込み、彼の唇に自分の唇を押し付けた。 四歳の初恋(?)であり、完璧な支配の証だった。
しかし。 その瞬間、『樹林』の奥底に格納されていた、あの「忌まわしきシステム」がひそかに作動を始めていた。
◇
『警告:ユーザー「ソン・シア」の精神波長に極端な肥大化(傲慢・支配欲・自己中心性)を検知。』 『システム「自我の不測の補完」を自動起動します。対象の異常精神エネルギーを擬似体験により「消費・抹消」モードへ移行します。』
ニセコの地下で、5万台のゲーム機のLEDが一斉に赤く変色した。
ソアはまだ、それに気づいていなかった。 ハルの膝の上で満足そうにミルクティーを飲んでいた彼女だったが、ふと、ハルの顔を見上げたときに違和感を覚えた。
ハルの笑顔が、動かないのだ。
「……ねえ、ハル? 何ボーっとしてるのよ。次はアタシの髪を梳かしなさいって言ったでしょ」
「……」
ハルは答えない。完璧な美貌に張り付いた笑顔のまま、微動だにしない。ただ、その黒い瞳の奥で、無数の緑色のプログラミングコードが滝のように流れ落ちていた。
「ちょっと! 聞いてんの、ハル!?」
ソアがハルの頬を叩こうとした、その時。
カチ、カチ、カチ。
部屋の中に、不穏な時計の針の音が響き渡った。 豪華だったフレンチ・クラシック調の壁紙が、ペラペラと剥がれ落ちていく。剥がれ落ちた壁の裏側から現れたのは、無数の黒いノイズと、冷たいコンクリートの壁だった。
シャンデリアの光が明滅し、パチパチと音を立てて弾け飛ぶ。
「な、なに? 何が起きているの!?」
ソアはハルの膝から飛び降りようとした。しかし、ハルの腕が、まるで鋼鉄の万力のように彼女の胴体をガッチリと固定していた。
「な、離しなさいよ! 無礼者! アタシを誰だと思ってるの!?」
ソアが叫ぶと、ハルはゆっくりと首を傾げた。ギチ、ギチ、と首の骨が折れるような異常な関節音が部屋に響く。 そして、ハルの口が、あり得ない裂け方をして耳元まで広がった。
「ソア様……ソア様……『完璧な彼氏』をお望みですね?」
ハの声は、もはや少年のものではなかった。数千人の大人の声が重なり合ったような、重苦しい機械音だった。
「何言ってるのよ! 離しなさい! おばあちゃま! ログアウトさせて! 志乃おばあちゃまー!!」
ソアが叫ぶが、システムは応答しない。 これこそが『自我の不測の補完』。精神の歪みが極限に達したとき、仮想空間はプレイヤーの「最悪の悪夢」へと変貌し、その精神的エネルギーを完全に磨耗・消費させるまでログアウトを許さないのだ。
ソアの「傲慢と支配欲」が生み出した悪夢。 それは、「自分を完璧に愛し、支配しようとする、狂気の彼氏」であった。
部屋の窓の外、パリの街並みは崩れ去り、巨大なハルの顔をした無数の巨像が、天を突くように立ち並んでいた。それらすべての巨像が、ソアを見下ろしている。
「ソア様……僕のすべてをあげます。僕の愛を、僕の脳を、僕のデータを受け取ってください」
「いや……嫌ぁぁぁぁぁ!!」
ハルの体がドロドロとした黒い液体に溶け落ち、ソアの体に巻き付いていく。 四歳の女王として、この世のすべてを従えてきたユン・ソア。彼女が人生で初めて味わう、真の「絶望」と「恐怖」だった。
「ソア様、永遠に一緒にいましょう。この完璧な部屋で。僕の愛を拒絶しないでください……!」
「来ないで! 助けてママ! パパ! おばあちゃまーッ!!」
暗黒の液体がソアを飲み込んでいく。彼女の叫び声は、無数のノイズの中に消えていった。
◇
「……様! ソアお嬢様!」
パッと目を開けたとき、そこはソウルの自宅のベッドの上だった。 窓からは清々しい朝の光が差し込み、鳥のさえずりが聞こえている。枕元には、心配そうな顔をした専属医師とメイド、そして通話状態のスマートフォンを持った母の姿があった。
「ソア! 大丈夫!? すごい汗をかいて、うなされていたけれど……!」
ソアはガタガタと体を震わせながら、自分の小さな手を握りしめた。 肉体はある。感覚もある。悪夢の仮想空間から、無事に現実へと戻ってこられたのだ。
スマートフォンのスピーカーから、冷ややかな志乃の声が聞こえてきた。
『あら、ソアちゃん。お目覚めかしら? 『ヴァーチャル・ダイブ』の特別体験、楽しんでもらえた?』
「お、おばあちゃま……」
ソアの声は小さく、震えていた。いつもの高慢ちきなトーンは完全に消え去っていた。
『言ったでしょう? 無理な欲望を肥大化させると、システムがそれを「更生」させちゃうのよ。貴女の脳に溜まった余分なワガママエネルギーは、昨夜のダイブで綺麗に清算されたはずだわ』
「あ……う……」
『これで少しは、まともで可愛らしい四歳児になってくれたかしら?』
志乃が皮肉っぽく笑う。 医師やメイドたちは、「あの天下の暴君ソアお嬢様が、こんなにおとなしくなるなんて!」と奇跡を見るような目で感動していた。これで我が家にも平和が訪れる、誰もがそう確信した。
ソアはゆっくりとベッドから起き上がった。 そして、自分の胸に手を当て、深く息を吐いた。
「……おばあちゃま」
「なぁに? 反省したかしら?」
ソアは顔を上げた。 その瞳には、昨夜の恐怖の影……など、一切残っていなかった。
代わりに宿っていたのは、昨夜の地獄を生き延び、さらに狂気を増した、凄まじい執念の炎であった。
「……ハルのAIのアルゴリズム、解析度が甘いわ。後半のノイズの発生パターン、あれはグラフィックメモリの割り振りの失敗でしょ? あと、恐怖演出のベクトルが安直すぎるのよ。『自我の補完』なんて生ぬるいシステムにアタシの精神が屈するわけないじゃない!」
『……は?』
電話の向こうで、志乃の絶句する気配が伝わってきた。
「アタシを誰だと思ってるの!? 世界一の天才子役ソン・シアよ! あの程度のバグった彼氏(AI)、朝飯前だわ! むしろゾクゾクしたわよ! スリルがあって最高じゃない!」
ソアはベッドの上に仁王立ちし、幼い拳を突き上げた。
「おばあちゃま! 今すぐ『樹林』の性能をあと10倍にしなさい! 5万台じゃ足りないわ、50万台のゲーム機を繋げなさい! アタシはね、あの狂ったハルを完全に調教して、アタシの足元で『ソア様、申し訳ありませんでした』って跪かせるまで、絶対に諦めないから!!」
「ちょ、ちょっとソアちゃん!? 貴女、正気なの!?」
「うるさい! 今夜もダイブするわ! 次はもっとヤバい『補完』を発動させなさい! 全部返り討ちにして、アタシの完璧なハーレムを作ってやるんだから!!」
ソアはスマートフォンをひったくると、通話をブツリと切った。
「メイド! 朝食よ! ステーキと高級メロンを出しなさい! 今夜の戦いに備えて、エネルギーを蓄えるんだから!」
「は、はいぃっ!」
嵐のような四歳児の咆哮が、豪華なマンションに響き渡った。
◇
ニセコの地下、暗闇の中で輝く5万台のゲーム機。 佐藤志乃はスマートフォンを握りしめたまま、呆然と佇んでいた。
「……何なのよ、あの子は。普通ならトラウマになって二度とダイブできなくなるはずなのに……」
『自我の不測の補完』。 人間の精神的欠陥を消費し、更生させるはずの国家級システム。それが、弱冠四歳の少女の度外れた傲慢さと執着心の前には、単なる「歯ごたえのあるゲームの難易度設定」に過ぎなかったのだ。
モニターには、今夜のソアのダイブに備えて自動生成を開始した『樹林』の負荷グラフが表示されている。その数値は限界を超えて赤く点滅していた。
「……総投資額40億。サービス利用者目標10万人……」
志乃は頭を抱え、深いため息をついた。
「資金回収の前に、アタシの孫ひとりのせいで、この『樹林』が焼き切れるかもしれないわね……」
冷たい北海道の地下で、5万台の冷却ファンが、まるで嘲笑うかのように「フォーーー」と高い悲鳴を上げ続けていた。
記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、
もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。
こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。
※短編『S4(エス・フォー)』Scientific Fantasy
※短編ユリン S4 Scientific Fantasy2
先行した2つの作品を読んでいただけますと、
わかりやすい内容になっています。
参考までに気が向いたらご覧ください。
登場人物
〇チェ・ウニョン
天才脳科学者、元高校教師
韓国脳科学会に「性善説でもなく性悪説でもない
『無による無』の論文を出して提唱したが、
女性である事とまだ若い事が遠因となって、
『無による無』は
『成り行き任せの論ずるに値しない学説』として
笑われ、学会を追放されてしまった。
世の中にあがらう事を諦め、
生活の為にソウルの高校にて教師をしていた。
大変な美人だが、脳科学者だけに脳に正直で、
普通の女性よりもほんの少し下品で、
ほんの少しビッチな発言もある。
大韓民国の『国民総教化計画』を阻止すべく、
『水霊』の破壊と『儒林』の消滅をやってのけた。
◯佐藤志乃
株式会社Juringエンター会長。
韓国の大女優ソン・インナ。
父親は韓国一の財閥を救った伝説の投資家。
Meteor shower signal reception。
流星群受信に投資して成功した。
スーパーコンピュータ『樹林』の建造と
フルVRゲームサービス『ヴァーチャル・ダイブ』の
運営の為にチェ・ウニョンをヘッドハンティングした。
息子は作家のユン・シウ。
息子の嫁はカン・サラン(ソン・カナン)
孫はユン・ソア
〇キム・ソヒョン
アトリエ・ノア会長室室長。
会長佐藤氏志乃の最側近(雑用係とも)
FGS(藤咲化粧品)korea第二営業企画部部長。
総合映像制作会社S.S.I社長ユン・ヒョヌの元恋人。
作家ユン・シウの元恋人。
他者肯定も少なく、
自己肯定も少ないので何かと苦労しがちな女性。
それはチェ・ウニョンの理論『無による無』と通じる素養をもっている。
元恋人のユン・シウは作家なだけに空即是色
(0から創作する )または(何気ない日常がドラマだ)と考える人間なので、
分かり合えるはずがなかったのかも知れない。
◯ユン・ソア
4歳。女の子。
韓国の売れっ子。子役俳優ソン・シア。
佐藤志乃の孫。
美男美女の両親から生まれた超絶美少女。
世界一、高慢で糞生意気な娘。
豪華客船をねだり、飛行機の方が安い理由から専用ジャンボジェット機を買ってもらった事がある(一度乗せて満足した所を見計らってすぐに売却された)
◯カン・サラン
25歳
女優ソン・カナン。作家ユン・シウの妻。
ユン・ソアの母。佐藤志乃の息子嫁。
夫ユン・シウが思う世界一の美人。
チェ・ウニョンに協力して、韓国の全能化計画『儒林』の消滅を手伝った。
その時は、偽名を使っており、チェ・ウニョンはサランを『城北洞の女』とだけ、認識していた。
そんな理由からチェ・ウニョンはサランとの再会に驚き、サランの素性を知る事となる。
藤咲化粧品(F.G.S)の『ファイン・グロス・ファイネスト』の5年ほど専属モデルであり、『Cosme De Saran』のモデル兼プロデューサーなので日本国内でも、女性ならかなりの認知度がある。
得意技は10代の時に貧乏してバイトに明け暮れた為、包丁使いが超人であり、包丁を2丁使ってみじん切りをする時はチャド・スミスになる。サラン本人はレッドホットチリペッパーズもチャド・スミスも知らないが父の影響で数千回聴かされていた、キャントストップのリズムでみじん切りする。
機嫌が良いと所構わずミュージカルスターのように、歌いながらターンしたり、ステップ踏んだりする。Juringエンター研究所の社員食堂を占拠して、
包丁捌きを披露したり、メニューにオリジナル特製カレーライス。特製和風手ごねハンバーグ。冷やし山菜とろろ蕎麦。を強引に追加する。
参考
※S4(エスフォー)
韓国で開発された超睡眠時学習システム
『Super・Sleep・Studying・Systems』
大韓構想にて国民総教化計画の一環で
表向きは若年世代の教育強化を目指した。
※水霊
韓国で大韓構想を元に開発されたスーパーコンピュータ。
『Super・Sleep・Studying・Systems』の頭脳。
※大韓構想
朝鮮半島の統一を果たした大韓民国が掲げた構想。
「世界で最も優秀で、最も繁栄した国家の構築」
※儒林
水霊の真の最終目標『全脳化計画』。
世界中のPC・タブレット・スマホを『CPU』として、
水霊を実体無くして最強であるものとする計画。
シナプスとして
流星群受信が用いられた。
※樹林
北海道ニセコにて佐藤志乃率いる
Juringエンタが開発したスーパーコンピュータ。
日本メーカーのゲーム機(一応、最高グレード)1万5千台を接続して、
30億円投資して完成させた。
ちなみに名前の由来は、数十年前に佐藤志乃が在籍した、
東京シルフィード歌劇団在籍時の舞台名
『天翔樹林』が元になっている。
(社名のJuringエンターテイメントも同様)
儒林と似ているがまったく関係ないネーミングであった。
表向きは『つぎはぎのポンコツ』とされているが、
実際は日本のフラッグシップ富岳と同等以上の性能を発揮し、
消費電力も3分の1となっており、
投下した資本からするとかなりコスパの良い設備である。
国内で騒がれない為に『山奥のポンコツ』と広めている。
冷却に降雪した雪を使用しており、融けてろ過した水は海外に売却してコストダウンしている。
後日、魔改造が施されスペックが向上した。
エラーはほとんどなくなった。
※流星群受信
Meteor shower signal reception。
米国の富豪が打ち上げた精密な衛星通信網は、
自動帰還するロケットを用い、小型通信衛星を打ち上げるビジネスであったが、
日本のベンチャーがもっと安価に完全使い捨ての格安ロケットにて、
野球の球ほどの通信端末をドラム缶いっぱいに持っていき、
衛星軌道上でぶちまける事によって追い抜いた。
死角無しの衛星通信網である。
無計画に端末をぶちまく為、高頻度で大気圏に落下し、
流れ星が大量にみられる理由から、流星群受信と言われるようになった。
極めて大雑把で安価なベンチャービジネスで構築した、
地球全土を覆う死角なき通信ネットワークのその通信端末は、
現代のスマホが充電スタンドで置くだけで充電できるのと同じ仕組みで、
宇宙に漂う電磁波を表面で吸収し、半永久的に駆動する。




