表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/114

黒猫のエドワード。恋をする。

あらすじ

黒猫のエドワードは純白のラグドール『マシロ』と出会い一目ぼれする。

恋に付きもの!?なトラブルを乗り越え、想いをsつのらせるのであった。


昨夜は謎の処理落ちで

「ツルツルピンクのポリゴン猫」とバトルする羽目になったが、

俺の肉球連続パンチで見事バグを粉砕。

無事に『ネコ界の英雄』としてのポジションを確立した。


そして今夜――。


俺は再びベッドに横たわり、

最新型VRヘッドギア『フルダイブ・バルブ』を頭にセットした。


「モード設定……『R15以下・まったりアニマル体験』。アバター:黒猫エドワード。ロケーション:いつもの路地裏!」


『ユーザー:中澤聡太。シナプス接続……良好。これよりダイブを開始します』


電子音が遠ざかり、視界がふわりと切り替わる。


「うおっ、やっぱり視界が低い! 最高!」


肉球の感触、つややかな漆黒の毛並み、

パタパタ揺れる長い尻尾。

俺は再び、気高き黒猫『エドワード』として仮想世界に降り立った。


「やあ、エドワード! 待ってたぞ!」


声をかけてきたのは、昨夜ツルツルポリゴン化していたボス猫だ。

今日はちゃんと片耳のちぎれたダンディなサビ猫のテクスチャに戻っている。

よかった、バグは治ったらしい。


「フッ、ボスか。今夜の『マグロのドリップ争奪戦』の作戦会議か?」

俺がカッコつけて尻尾を立てると、ボス猫はニヤニヤしながら首を振った。


「いやいや、ドリップもいいがな……今日は新入りがいるんだ。お前に紹介したくてさ」


「新入り?」


ボス猫が手招きした先、

日当たりのいい高級マンションのレンガ塀の上に――**“彼女”**はいた。


「あ……」


俺は思わず息を呑んだ。(猫だけど)


そこにいたのは、

まるで最高級の綿飴のようにフワフワとした純白の毛並みを纏う、

一匹のラグドールだった。

顔の中心と耳、尻尾だけにほんのりと淡いグレーのポイントが入っており、

そして何より――サファイアのように澄み渡った青い瞳。


「初めまして……黒猫様。私、『マシロ』と申します」


口から漏れたのは、すずらんの鈴が鳴るような、

可憐で上品な日本語だった。


「お前、エドワードだろ? マシロちゃんは最近この近くの高級タワマンに引っ越してきたお嬢様猫なんだ。お前の昨夜の無双劇を聞いて『ぜひお会いしたい』ってさ!」


ボス猫が肘(前足)で俺の脇腹をつついてくる。


(マジかよ……! なんだこの美少女猫!? ラノベのヒロインかよ!!)


俺は一瞬で心臓がバクバク言い始めた。

現実の学校では女子とロクに目も合わせられない俺だが、

今の俺は漆黒の甲冑を纏いし『エドワード黒太子』なのだ! 落ち着け俺!


「……フッ、初めましてマシロ姫。僕はエドワード。わけあって身を隠している……ただの黒猫さ」


俺は必死でキザなポーズを決め、前足をすっと出して見せた。


マシロちゃんは青い瞳を丸くした後、ふふっと可憐に微笑んだ。


「まあ……『エドワード様』。なんて素敵な毛並みなのかしら。まるで闇夜を切り取ったみたい……」


「えっ、あ、ありがと……(照)」


速攻でニヤけそうになる口元を、

猫の顔筋をフルに使って必死に引き締める。

ラグドール特有のフワフワな毛が、

風に揺れて甘いシャンプー(高級ペット用)の匂いを漂わせていた。

ヤバい、めちゃくちゃ可愛い。


それからというもの、俺とマシロちゃんは急速に仲良くなった。


「エドワード様、こちらへどうぞ!」


「うおっ、これって……!」


マシロちゃんに案内されたのは、彼女が住むタワマンの一階テラス。

そこには、飼い主が用意したと思われる

『高級ウエットフード(ズワイガニ&マグロのジュレ仕立て)』が

手付かずで残されていた。


「私、一人では食べきれなくて……よろしければ、一緒にいかがですか?」


「いいの!? マジで!? ……あ、いや、姫の好意を無駄にするわけにはいかないな。頂こう」


二人(二匹)で並んで高級缶詰をペロペロと舐める。


「美味しいですね、エドワード様」 「ああ、実にデリシャスだ……」


ふと横を見ると、マシロちゃんの白い毛が俺の黒い毛と触れ合っていた。

ふわっふわだ。温かくて、柔らかくて、夢みたいに心地いい。


「あのね、エドワード様……私、ずっとこのお部屋の中にいて、外の世界を知らなかったんです」


マシロちゃんが青い瞳を少し伏せて呟いた。


「でも、エドワード様とお話ししていると……世界がとっても広く見えます。昨日のお話も、とってもスリリングでカッコよかったわ」


「は、はは……まあね! 僕にかかればツルツルポリゴンなんて一ひねりさ!」


調子に乗って胸を張る俺。

マシロちゃんは嬉しそうに俺の肩にスリスリと頭を寄せてきた。


(うおおおおお!! 猫の体温! フワフワ! 甘い匂い! 『ヴァーチャル・ダイブ』最高ーーー!! )


脳内にドバドバと溢れ出す多幸感ドーパミン

俺の精神は、完全に甘い幸福感で満たされていた。


――だが、その「過剰な幸福感」が、

再びあの悪魔のプログラムを呼び寄せてしまったのだ。


(――……ピキピキッ……チリチリ……)


耳元で、不快な電子ノイズが走った。


「え……?」


視界の端で、豪華なタワマンのテラスが急に

「ポリゴン欠けて透過するバグ」を起こし始めた。


(あ、まただ……! 『樹林』のヤツ、俺の脳波が甘甘になりすぎて処理落ちを起こしてやがる!)


しかも、今回はただの処理落ちではない。

俺の脳内に

「この幸せな時間を邪魔されたくない」

「マシロちゃんを独占したい」という

甘い執着を感知した『自我の不測の補完』が、

またしても明後日の方向に暴走を始めたのだ!


『警告……ユーザーの「独占欲」を検出……過剰体験モードへ移行します』


「だから移行すなと言っとるだろ!!」


第四章 巨大マシロちゃん(バグ)と、黒太子の愛

ゴゴゴゴゴ……!


空が急に「濃いピンク色のハート柄」に染まった。


「え……? エドワード様……? 私、なんだか身体が……!」


マシロちゃんが怯えた声を上げた次の瞬間。


ドーーーーン!!


「うわあああ!? マシロちゃんが大きくなってるー!?」


なんと、『自我の不測の補完』が

「マシロちゃんへの愛の大きさ」を

物理的なサイズとして変換してしまったらしく、

マシロちゃんが体長10メートル級の

巨大怪獣サイズに巨大化してしまったのだ!


「キャー! 高いですー! 落ちちゃいますー!」


「マシロちゃぁぁぁん!?」


タワマンの庭に仁王立ちする、超巨大フワフワラグドール。

その可愛さは留まることを知らないが、

足を踏み鳴らすたびに「ズシン! ズシン!」と

凄まじい地響き(とハートのエフェクト)が発生している。


「エドワード様ぁ! 助けてくださいー!」


「待っててマシロちゃん! 今助ける……って、デカすぎるだろ!!」


巨大化したマシロちゃんは、

パニックになって長い尻尾をブンブンと振り回した。

その尻尾(直径2メートル)が俺に向かって襲いかかってくる!


「くっ……! 直撃したらフワフワすぎて窒息死する!」


俺は黒猫の超絶ステップで巨大尻尾を回避!

しかし、マシロちゃんはパニックのあまり、

目に大量の涙(一滴がバケツ一杯分)を溜めて泣き始めてしまった。


「うう……私、こんなに大きくなったら、エドワード様と一緒に居られなくなっちゃいます……! スリスリもできません……!」


「マシロちゃん……!」


俺は胸が締め付けられる思いがした。

そうだ、彼女は困っているのだ。

このバグった世界で、俺のバカな独占欲の巻き添えになって!


「任せろマシロちゃん! 僕が元のサイズに戻してやる!」


俺はタワマンの外壁を蹴り、

驚異的な跳躍力で一気に駆け上がった。

目指すは、巨大マシロちゃんの頭上!


「エドワード様! 危ないです!」


「怖がらなくていい! 僕は君の騎士ナイト……『エドワード黒太子』だ!」


俺は巨大マシロちゃんの鼻先へ向かってダイブした。

そして――攻撃ではなく、彼女の巨大な鼻頭に向かって、

全力の**『おでこコツン』**を繰り出した!


「マシロちゃん! 僕は君がどんな大きさでも、どんな姿でも……大好きだぁぁぁ!!」


俺の叫び(と照れくさすぎる愛の告白)が、

脳波となって『樹林』のメインフレームへ叩きつけられた!


ズギャギャギャギャイン!!


激しいピンク色の光が炸裂する。

俺のストレートすぎる純情エネルギーが、

暴走していた『自我の不測の補完』の、

計算キャパシティを完全にオーバーフローさせたのだ!


「あ……エドワード様……!」


光の中で、マシロちゃんの体が急速に縮んでいく。

10メートル、5メートル、1メートル……そして。


フワッ。


俺の腕(前足)の中に、

元の手のひらサイズのフワフワなマシロちゃんが落ちてきた。


「……捕まえた」


「あ……エドワード様……」


二人(二匹)は一緒に芝生の上にゴロゴロと転がった。

空のピンク色のハート柄は消え、元の美しい夜空と満月が戻っていた。


「……私、元の大きさに戻れたのですね」


「ああ、よかった……怪我はなかった?」


「はい……エドワード様が、助けてくださったから……」


マシロちゃんは上目遣いで俺を見つめると、


そっと俺の頬に自分の頬を寄せ、

ゴロゴロゴロゴロ……と壊れた時計のように喉を鳴らし始めた。


「さっきのお言葉……本当ですか?」


「え? あ、さっきの……『大好き』ってやつ?」


「はい……ふふ、私もです。エドワード様のこと、大好きです……♪」


(うおおおおお!! 勝利!! 勝訴!! 完全勝利ーーー!!)


月明かりの下、黒猫と白猫は寄り添い合いながら、

夜風の中で幸せそうに体を丸めたのだった。


『ピピピ……アラーム時刻です。おはようございます、中澤聡太様』


爽やかな電子音とともに、満月の夜空がゆっくりとけていく。


目を開けると、いつもの自室の天井。

頭から『フルダイブ・バルブ』を外すと、

やっぱりほんのり温かかった。

ニセコのスパコン、今夜も過負荷をかけてすまん。


「ふふ……ふふふふ……」


ニヤニヤが止まらない。

手を見ても、肉球はないしマシロちゃんのフワフワ感もないけれど、

胸の奥は暖かさで満たされていた。


「聡太ー! 早くしないとパン焦げるわよー!」 階下からお袋の声。


「すぐ行くー! 今日のパン、ジャムたっぷりで頼むー!」


俺はウキウキで制服に着替え、鏡の前で前髪を整えた。


現実の学校生活? 相変わらずパッとしないかもしれない。

だけど、俺には夜がある。

あの三十億円のつぎはぎスパコンが魅せてくれる、

最高の仮想世界と――俺を待ってくれている、

最高に可愛い白いラグドール(マシロちゃん)が。


「待っててね、マシロちゃん。今夜はカツオ節の高級缶詰、持っていくからさ!」


俺はカバンを肩にかけ、ドヤ顔で自室のドアを開けた。

現実と仮想の狭間で咲いた甘い恋は、

今夜もまた、最高のノイズとともに続いていくのだった。



記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、


もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。


こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。


※短編『S4(エス・フォー)』Scientific Fantasy

※短編ユリン S4 Scientific Fantasy2

先行した2つの作品を読んでいただけますと、

わかりやすい内容になっています。

参考までに気が向いたらご覧ください。


登場人物


〇チェ・ウニョン

天才脳科学者、元高校教師

韓国脳科学会に「性善説でもなく性悪説でもない

『無による無』の論文を出して提唱したが、

女性である事とまだ若い事が遠因となって、

『無による無』は

『成り行き任せの論ずるに値しない学説』として

笑われ、学会を追放されてしまった。

世の中にあがらう事を諦め、

生活の為にソウルの高校にて教師をしていた。

大変な美人だが、脳科学者だけに脳に正直で、

普通の女性よりもほんの少し下品で、

ほんの少しビッチな発言もある。

大韓民国の『国民総教化計画』を阻止すべく、

『水霊』の破壊と『儒林』の消滅をやってのけた。



キム・ソヒョン

アトリエ・ノア会長室室長。

会長佐藤氏志乃の最側近(雑用係とも)

FGS(藤咲化粧品)korea第二営業企画部部長。

総合映像制作会社S.S.I社長ユン・ヒョヌの元恋人。

作家ユン・シウの元恋人。

他者肯定も少なく、

自己肯定も少ないので何かと苦労しがちな女性。

それはチェ・ウニョンの理論『無による無』と通じる素養をもっている。

元恋人のユン・シウは作家なだけに空即是色

(0から創作する )または(何気ない日常がドラマだ)と考える人間なので、

分かり合えるはずがなかったのかも知れない。



参考


※S4(エスフォー)

韓国で開発された超睡眠時学習システム

『Super・Sleep・Studying・Systems』

大韓構想にて国民総教化計画の一環で

表向きは若年世代の教育強化を目指した。


水霊スリョン

韓国で大韓構想を元に開発されたスーパーコンピュータ。

『Super・Sleep・Studying・Systems』の頭脳。


※大韓構想

朝鮮半島の統一を果たした大韓民国が掲げた構想。

「世界で最も優秀で、最も繁栄した国家の構築」


儒林ユリン

水霊スリョンの真の最終目標『全脳化計画』。

世界中のPC・タブレット・スマホを『CPUニューロン』として、

水霊を実体無くして最強であるものとする計画。

シナプスとして

流星群受信メテオラシャワーが用いられた。


樹林ジュリン

北海道ニセコにて佐藤志乃率いる

Juringエンタが開発したスーパーコンピュータ。

日本メーカーのゲーム機(一応、最高グレード)1万5千台を接続して、

30億円投資して完成させた。

ちなみに名前の由来は、数十年前に佐藤志乃が在籍した、

東京シルフィード歌劇団在籍時の舞台名

天翔樹林あまかけじゅりん』が元になっている。

(社名のJuringエンターテイメントも同様)

儒林ユリンと似ているがまったく関係ないネーミングであった。

表向きは『つぎはぎのポンコツ』とされているが、

実際は日本のフラッグシップ富岳と同等以上の性能を発揮し、

消費電力も3分の1となっており、

投下した資本からするとかなりコスパの良い設備である。

国内で騒がれない為に『山奥のポンコツ』と広めている。

冷却に降雪した雪を使用しており、融けてろ過した水は海外に売却してコストダウンしている。


流星群受信メテオラシャワー

Meteor shower signal reception。

米国の富豪が打ち上げた精密な衛星通信網は、

自動帰還するロケットを用い、小型通信衛星を打ち上げるビジネスであったが、

日本のベンチャーがもっと安価に完全使い捨ての格安ロケットにて、

野球の球ほどの通信端末をドラム缶いっぱいに持っていき、

衛星軌道上でぶちまける事によって追い抜いた。

死角無しの衛星通信網である。

無計画に端末をぶちまく為、高頻度で大気圏に落下し、

流れ星が大量にみられる理由から、流星群受信と言われるようになった。

極めて大雑把で安価なベンチャービジネスで構築した、

地球全土を覆う死角なき通信ネットワークのその通信端末は、

現代のスマホが充電スタンドで置くだけで充電できるのと同じ仕組みで、

宇宙に漂う電磁波を表面で吸収し、半永久的に駆動する。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ