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人生ゲーム

 三人で人生ゲームを始める。最初はルーレットを回し、職業選択マスに進む。ここでの職業が何になるかによって、その後の収入面に大きく関わってくる。ここで何の職業を引き当てるかは重要だ。

 最初にルーレットを回した綾香さんはサラリーマンのマスに止まった。


「ふっ、外れだな」

「何よ、どういう意味よ」


 サラリーマンはもっとも外れの職業で、収入も少ない。まあこの辺は運が絡むことになるから、自分ではどうにもできない部分ではある。


「次は私ね~」


 愛奈さんがルーレットを回す。愛奈さんはCAのマスに止まった。


「美人で背が高い愛奈さんはCAにお似合いだね」

「ありがとう~」

「なんでママは褒めるのよ!」

「だって綾香さんがサラリーマンってなんか似合わないし」

「なんでよ」

「サラリーマンってコミュ力が必要なんだよ? 綾香さんのコミュ力で乗り切れると思う?」

「馬鹿にして……」


 綾香さんは悔しそうに歯噛みする。俺も人のことを言えた立場ではないが、それでも綾香さんよりはましだと思う。

 

「じゃあ次は俺だな」


 俺はそう言うとルーレットを回す。スポーツ選手のマスに止まった。


「はっ、あなたがスポーツ選手って一番似合わないじゃない」


 ぐうの音も出ない。俺は生まれてこの方スポーツを嗜んだことはない。だから現実の俺に照らし合わせるのなら確かに最も似合わない職業だ。

 だが、そんなことはどうでもいい。


「でもこの職業は当たりだからね」

「どういうこと?」

「スポーツ選手のカードに書かれている収入額を見てみて」

「一億……?」

「そう。スポーツ選手は人生ゲームにおいて最も収入額が多い職業なんだ」


 最終的な収入額で競う人生ゲームにおいて、収入額はとても重要だ。無論、職業だけですべてが決まるわけじゃない。止まるマスによっては出費が嵩んだり、収入が増えたりすることもある。そして愛奈さんの持ってきた人生ゲームはこの出費が嵩むマスが非常に多い。当たりの職業を引き当てたとはいえ、油断はできない。

 それから俺たちはゲームを進めていく。運の悪いことに綾香さんは出費が嵩むマスに止まり続け、お金を吐き出していく。


「お金がマイナスになったわ」

「なら借金だね。最下位独走だね」

「まだ巻き返せるわよ!」


 愛奈さんがルーレットを回す。結婚マスに止まった。


「右隣の人と結婚するですって」

「じゃあ俺だね」

「唯斗くん、結婚しよっか」


 そうして俺と愛奈さんは結婚した。だが、それを悔しそうに見ていたのが綾香さんだ。


「ゲームとはいえ、あなたとママが結婚するのはものすごく嫌なんだけど」

「あら、私は現実でも歓迎よ。綾香が仲いいし、なってもらおうかしら、綾香のパパに」

「嫌だよ、こんな娘」

「確かに綾香はツンデレだものね」


 愛奈さんが口元に手を当てて笑う。愛奈さんなりの娘とコミュニケーションをとるためのジョークだろう。綾香さんは顔を真っ赤にして俺を睨んでくる。なんで俺を睨むんだよ。


「あなたをパパなんて呼びたくないわ」

「俺も綾香さんを娘とは呼びたくない」


 お互いそう言い合って睨み合う。


「あ、そうだ。綾香さんご祝儀で三百万支払うだって」

「はあ⁉ なんであんたにご祝儀を渡さなきゃいけないのよ」

「そういうルールだから」


 綾香さんはとても嫌そうにご祝儀を支払った。

 ゲームは進み、早くも綾香さんの脱落が濃厚となる。首位争いは俺と愛奈さんだ。愛奈さんもゲーム慣れしているのか、ルーレットの引きがいい。収入を増やすマスに止まり続け、俺を猛追してくる。


「なんで私が最下位なのよ」

「いやぁ、俺も綾香さんがここまで運が悪いとは思わなかったよ」

「綾香は昔から運が悪いのよね~。せめて男運だけはいいといいのだけど」

「男なんていらないし」


 綾香さんが否定する。綾香さんは男嫌いだし、否定されることはわかっていただろう。

 それでも愛奈さんは綾香さんに男を克服してもらいたいのだと思う。


「でも、唯斗くんとは仲良くできているじゃない」

「こいつは……ママと仲いいから」

「まあまだまだ仲いいとまでは言えないけどね」


 俺は苦笑いを浮かべながら頬を掻く。綾香さんと友達になろうと提案したのは俺だけど、まだまだ彼女のことはよく知らない。

 最終的にゲームの勝敗は愛奈さんが逆転勝利を収めた。さすがは愛奈さん。怒涛の追い上げだった。


「悔しい。あなたに負けたのすっごく悔しいんだけど」

「じゃあ他のゲームでまたやろうよ。もっと自分の実力で勝敗が決まるような」

「いいわね。じゃあ今度のテスト私と勝負しなさい」

「なんでテスト⁉ そんなの俺に勝ち目ないじゃないか」

「男なのに勝負から逃げるの?」

「舐めるなよ。俺は女相手でも尻尾を巻いて逃げる男だ!」

「プライドはないの⁉」


 俺にプライドなんてない。プライドがあったら、もっと男を磨いているはずだ。

 そもそも学年首席の綾香さんにテストで勝つなんて無理ゲーすぎる。


「ゲームなら受けてあげるよ」

「自分が勝てるからって」


 綾香さんは唸りながら俺を睨む。


「いいわ、ゲームであんたに勝ってほえ面かかせてあげる」


 こうして、綾香さんとのゲーム対決の日々が決まったのだった。

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