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漫画研究部

 放課後、俺は早速部活動見学に向かう。漫画研究部は視聴覚室を部室に使っているらしい。俺は勇気を出して、視聴覚室のドアを開けた。

 中には女子が三人いた。女子は俺の方を見ると、小首をかしげてくる。


「何か用でしょうか」

「あの、部活動見学にきたんですが」

「え……いや、どうなんですかね」


 女子の一人が苦笑いを浮かべる。他の女子と視線を目配せすると、遠慮気味に俺に言う。


「男子には少々刺激が強いかもしれません」

「刺激が強い?」


 どういうことだろう。俺は疑問に思い、質問を投げかける。


「それは漫画の内容がってことですか?」

「はい。私たちが描いているのは普通の漫画ではないので」


 普通の漫画じゃない。そう言われた時点でなんとなく察しがついてしまった。


「じゃあ作品を見せてもらっていいですか」

「見るんですか⁉」

「はい。みなさんがどんな作品を描いているのか興味が湧きまして」


 女子たちは顔を見合わせると頷きあう。そして、それぞれの作品を俺に見せてきた。

 俺は一通り目を通した。なるほど。そういうことか。

 彼女たちが見せてきた漫画はすべてBL作品だった。どこかの荊姫を思い出すな。


「いや、上手いですね」

「ありがとうございます」

「画力が高いし、コマ割りも上手いので、一気に読ませられました」


 実際、彼女たちの漫画の腕は相当高かった。画力が高いのはもちろんのこと、細やかな演出にいたるまで、細部にわたって描かれていた。


「でも、内容がやばいですね。確かにこれはまずいかもしれない」


 俺が指摘したのはその内容だった。どう読んでもR18作品だった。


「えへへ、これは表には出さない作品なんです。趣味で描いているだけなんで」

「文化祭とかで出すやつは全年齢ですよ」

「それを聞いて安心しました。少し刺激が強かったです」


 正直、BLの世界は俺にはわからない。だけど、おもしろく読めてしまったのはそれだけ彼女たちの技術が高いからだろう。


「正直、男が妊娠するとか意味わからないですけど」

「そういうジャンルがあるんですよ。男が妊娠して子供を産むジャンルが」

「それからどう見てもこっちの作品はうちの高校の生徒を題材にしてますよね」

「それは生物なので。現実にいる人を題材に描いた漫画です」


 俺だったら凄く嫌だ。自分の知らない場所で知らないうちにBLの主人公にされてしまっているなんて。

 だが、漫画を描く技術はかなり高い。彼女たちから学べることは多いだろう。


「実は俺、まだ漫画を描いたことがなくて。超初心者なんです。なにから始めればいいですか」

「そうですね。まずは下手でもいいので、自分で漫画を描いてみるところからですね」


 女子はそう言うと、俺にアドバイスを送ってくる。


「描いてみると難しいことに気付くと思います。そして、自分がものすごく下手なことにも気付くと思います。それを今度は描き直すといいですね」


 なるほど。同じ漫画を何度も描き直すか。俺には思いつかなかった方法だ。


「見ての通り私たちはBL漫画を描いている部活なので、男子の君には合わないと思いますが」

「それでも入部させてほしいです。先輩たちの漫画の技術はすごく勉強になると思うので」

「まあそこまで言うなら歓迎しましょう。私は部長の棚町です。二年です。お願いしますね」


 棚町先輩はそう言うと手を差し出してくる。俺はその手を取って握手を交わす。

 棚町柚子先輩というらしい。可愛らしい名前だ。三人の中で一番童顔で、背も小さい。声も高いので、最初は中学生かと思ったぐらいだ。


「あたしは丸子美鈴。二年生。よろしくね」


 丸子先輩は二つ括りの髪が特徴的な先輩だった。明るい感じの女子で、フレンドリーな雰囲気がある。


「わ、私は小山内蛍です。一年です」

「小山内さんは同学年なんだね」

「そ、そうです。オメガバースを描いてます。よろしくお願いします」


 オメガバースとは男性が妊娠するジャンルのBLらしい。大人しそうな感じなのに、性癖は結構特殊なようだ。


「俺は田丸唯斗です。先輩方、よろしくお願いします」


 俺は深々と頭を下げる。


「さっそくなんだけど、男の子の田丸くんにどうしても聞きたいことがあるの」


 棚町先輩が目を光らせる。


「男の子のおちんちんってこうなってるのかしら」


 そう言って自分の描いた漫画を見せてくる。

 さっきあえて突っ込まなかったが、確かに男性器の解像度が低いなと思った。

 

「こんなに小さくはないですね」

「え、もっと大きいものなの⁉」

「勃起した時は十三センチが平均ですよ」

「そんなに大きくなるものなのね。勉強になるわ」


 そう言って棚町先輩を始め、丸子先輩と小山内さんもメモを取っていた。


「男の子が入ってくれたのはありがたいわ。男性の解像度が上がるもの」

「いや、男に恋をする気持ちはわからないですが」

「それでもいいのよ。大事なのは男の子がどう感じるかなのだから」


 なんだかよくわからないが歓迎されているみたいでとりあえず一安心だ。

 こうして俺は漫画研究部に入部した。まあなんとかうまくやっていけるだろう。

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