目撃者
休日が終わり、週明けの月曜日。学校に行くと、男子たちが俺の周りを取り囲んできた。
「どういうことだ」
「何が?」
「昨日伊原さんたちとアラウンドワンにいただろ」
どうやら見られていたらしい。そりゃそうか。アラウンドワンは陽キャ御用達のアミューズメント施設。そんなところで遊んでいれば、目撃されるのも仕方がない。
「遊びにいっただけだよ」
「なんでお前が女子二人と遊べるんだよ⁉」
まあ確かに男子たちの気持ちは凄くわかる。俺みたいな地味なぼっちが女子とだなんて。ましてやあの荊姫だしな。
だけど、不思議と綾香さんとは友達をやれている。綾香さんもまんざらでもないのか、結構嬉しそうにしている。
「友達になったから遊んでただけだよ。そんなにおかしいかな」
「おかしい。だって伊原さんは男子となると目の色を変えて睨んでくるんだぞ!」
「それは君らの接し方が悪かっただけじゃないかな」
「ぐっ……陰キャのぼっちにコミュニケーションを諭された」
俺だって何か特別なことをしたわけじゃない。だが、俺には綾香さんのお母さん、愛奈さんと友達になったきっかけがあった。それをきっかけに綾香さんとも話すようになったわけだし。
「それにもう一人いただろ。大学生ぐらいの美女が」
「あー、愛奈さんのことか」
「愛奈さん⁉」
男子の俺を見る目が変わる。
「伊原さんだけじゃあきたらず、あんな美女まではべらせて」
「別に一緒に遊んでただけじゃん。二人きりの方が君ら騒ぎ立てるでしょ」
「それはそうだけど」
「そういうところが、綾香さんに嫌われるところだと思うよ」
「う……」
俺がそう言うと、男子たちは押し黙った。
「田丸って、結構手厳しいんだな」
「そうかな。思ったことを言ってるだけだよ」
「普通はもっと空気とか読んだりするんだよ」
「まあ俺はコミュ障だからな」
もともと人と接するのは苦手だ。空気とか読んだりするのが苦手で、輪の中にいることができない。自然と孤立を選ぶようになった。
「なんか、格好いいな」
「え?」
「そういうはっきりしたところ、俺いいと思うぜ」
俺はこの時、初めて男子の顔を見た。軽薄そうな、ちゃらついた男子だ。だが、その目は真っすぐに俺を見つめている。
「ところで君は誰なの?」
「おい! それは失礼だろ。クラスメイトだぞ俺」
「ごめん。俺、クラスメイトのこと基本うっすら嫌いだから」
「お前荊姫以上に棘あるくね?」
男子は俺をジト目で見ると身震いした。
「俺は真壁だよ。真壁大斗。よろしくな」
「なんで手を差し出してるの」
「仲良くしようぜって言ってんの。察し悪いな!」
「それって俺と友達になってくれるってこと?」
「だからそう言ってるじゃん」
まさかこんな典型的な陽キャが。どういう心境の変化だろう。もしかして俺と仲良くなって綾香さんに近づくつもりだろうか。
「綾香さんのことは協力できないけど」
「そんなこと頼まねえよ。一回振られてるし。だから純粋にお前自身と仲良くしたいだけ」
「そうなんだ」
「なんだよ。嫌なのかよ」
「嫌じゃないけど、君みたいな人種が俺に興味を持つことが信じられないというか」
「どんだけ俺らのこと嫌ってるんだよ。言っとくけど陽キャは別に陰キャのことなんてなんとも思ってないからな」
そうなのか。俺はことあるごとに陽キャのことを嫌っていたように思う。
「真壁くん、なんかごめんな」
「気にすんなって。ってなわけで連絡先教えて」
人生で初めて男子の友達の連絡先が俺のスマホに登録された。
昼休み、綾香さんと屋上に出る。綾香さんは俺に愛奈さんの手作り弁当を渡すと、俺をじっと見てきた。
「どうしたの?」
「あなた、今日真壁と話してたわよね」
「ああ、友達になったんだ」
「友達⁉ あなたと真壁が⁉」
信じられないと言った感じで目を見開く綾香さん。
「気でも狂った?」
「失礼な。俺だって友達ぐらい作れるぞ」
「そのわりには向こうから話に来てた感じだったけど」
「それは……まあ陽キャに自分から話しかけるのは勇気がいるからな」
「それは同感だわ」
俺たちは顔を見合わせて溜め息をつく。
「というか、昨日一緒に遊んでたところを見られてて」
「何? いちゃもんでもつけられた」
「まあそんな感じだったな」
「私が誰と遊ぼうが放っておいてほしいわね」
「それを直接伝えたら、なんか気に入られた」
「変わってるわね、真壁も」
「そういえば、真壁くんは一度綾香さんに振られたって言ってたな」
「あたりまえでしょ。あんな軽薄そうな男」
確かに真壁くんの見た目はかなりちゃらついている。いかにも遊んでそうな風貌だ。ある意味最も綾香さんが嫌っていそうだ。
「でも、真壁くんも綾香さんがマザコンだって知ったらドン引きすると思うよ」
「うっさいわね!」
背中を叩かれる。綾香さんも調子を取り戻したようだ。
「まああなたと友達やるのは気が楽だわ」
「そうだな。俺も綾香さんを弄るのは楽しいよ」
「弄らないでくれる?」
「だって綾香さんが可愛いから」
「可愛っ⁉ ふんっ! 当たり前でしょ!」
照れ隠しにそう強気に言い返してくるが、顔は真っ赤だった。




