お出かけ
というわけで迎えた休日。俺はなぜか綾香さんと遊びにいくことになった。待ち合わせ場所はアミューズメント施設、アラウンドワン。ぼっちの俺たちが遊びにいく場所を悩んだ結果、陽キャたちが遊びに行ってる場所をチョイスした。一応、今回のお出かけは綾香さんのぼっち脱却の練習も兼ねている。
ちなみに二人きりだと思った人もいるかもしれないが、今回は愛奈さんも参加することになっている。愛奈さんに二人で遊びに行く話をしたら、駄々をこねられてしまった。もちろん、綾香さんも愛奈さんとのお出かけは大歓迎らしく、特に反対する理由もなかった。
そんなわけで、直接アミューズメント施設の現地集合ということになった。
待ち合わせ時間に行くと、既に二人の姿があった。綾香さんの私服は初めて見たけど、可愛らしい服装だ。少しイメージと違う。
「遅いわよ」
「ごめん。でも時間通りだよ」
「女子を待たせるなんて男子失格じゃないかしら」
「別に俺たち付き合ってないし」
「そうよ、私たちが唯斗くんと遊ぶのが楽しみで早く来すぎちゃっただけなんだから」
「それはママでしょ」
「え~、綾香だって昨日楽しみで眠れなかったって言ってたじゃない」
「そ、それは⁉」
まるで遠足前の小学生だな。ちなみに俺はぐっすり熟睡だった。
愛奈さんはアラサーにしては少々幼い服装だ。最初に会った時も思ったが、大学生と言われても信じてしまうだろう。実際俺は最初大学生ぐらいだと思っていたし、
親子で服の趣味が似通っているのはさすが親子って感じだ。
ちなみに俺のファッションだが、いたって地味な装いだ。陽キャみたいにカラフルな服を持っていないので、基本は白黒で揃えている。
これでも一番清潔感のある服装を選んだつもりだ。
「それにしても大きいわね。陽キャはここで遊ぶのね」
「昔、パパとよくボーリングに行ったわね。懐かしいわ」
「愛奈さんボーリングよく行ってたんだ」
「ええ。まあ私下手だけどね」
まあ一昔前はボーリングは定番のデートスポットだったしな。ということは今日もボーリングをする流れっぽいな。
ちなみに俺は小学生時代の子供会で来たぐらいしか経験がない。
施設の中に入ると、エスカレーターがあり、俺たちはそれに乗り込む。今日の綾香さんたちはスカートなので、目のやり場に困る。
というか、運動をするのにスカートで来るとは思わなかった。
ボーリングの受付で名前を書き込むと、靴を貸し出される。
それぞれボールを持ってきて、順番に並べる。
トップバッターは俺だ。
「それじゃあいっちょ、俺の腕前を披露するか」
そう言って俺は振りかぶってボールを投じる。勢いよく俺の腕から飛び出したボールは脇に逸れてそのまま溝に落ちた。
「へたくそすぎる!」
綾香さんがすかさず突っ込みを入れてくる。
「見たか。これが俺の腕前だ」
「どや顔で言うこと⁉ フォームがぐちゃぐちゃだったわ」
「じゃあ綾香さんがやってみなよ」
「見てなさい」
そう言って綾香さんは俺と変わって構える。確かに俺と違って姿勢が綺麗だ。そうして綺麗なフォームでボールを投じた。
ボールは直線で転がっていき、先頭のピンを押し倒した。だが、あまりの力の弱さに他のピンはほとんど倒れなかった。
「どうよ」
「ノーパワーすぎんか」
「仕方ないじゃない! 私は女の子なのよ!」
「でもプロとか見てたら女性でもばんばんストライク出してるけどな」
「それはプロだからでしょ!」
だが、綾香さんはパワーがないだけで、フォームはとても綺麗だ。見習うところはあるな。
そして、愛奈さんの番がやってくる。下手だと言っていたので、俺とそうは変わらないだろう。
そう思っていたら、綺麗なフォームでボールを投じると、まさかのストライクを叩き出した。
「え、まぐれ?」
「ママ凄い!」
「えへへ~、今日は調子いいかも」
「愛奈さんボーリング苦手って言ってなかった?」
「そうなのよ~、スコア百四十ぐらいなの」
「百四十⁉ めっちゃ上手いじゃん!」
「でもパパは百八十出してたわよ?」
「次元が違う……」
愛奈さんの衝撃のスコアを聞いて、俺はその場で固まった。
そこから先は惨憺たる結果だった。俺はまともにピンに当たらず、綾香さんはノーパワー。結果、愛奈さんの独壇場となった。
俺と綾香さんは百もいかなかった。綾香さんは宣言通り百四十を叩き出していた。
「なんか、男としての自信を失くすよ」
「あんたも男のくせにもやしだものね」
まあ確かに運動は苦手だけども。こちとら年中ゲームをしている引きこもりの陰キャなのだから。女子の前で格好いいところを見せるなんてできるわけがない。
それから数ゲームボーリングを楽しんだところ、腕が筋肉痛になった。俺と綾香さんがギブアップし、ボーリングはお開きとなった。
同じ施設にカラオケもあるので、そちらに移動する。
「やっぱり俺たちに運動は向いてなかったわ」
「一緒にしないで。私は運動得意よ。力がないだけで」
「まあ体育の成績もいいもんね、綾香さんは」
「そうよ。女子の中じゃ優秀なんだから」
「二人とも仲良くなったわね」
愛奈さんが嬉しそうに微笑む。
「まあ、友達、だし」
「そうだね。綾香さんとはなんか普通に話せる」
「私も、あなたとは普通に話せるわ」
俺たちは顔を見合わせて破顔した。




