82日目・朝が来て蝶が舞う
「エリス、今帰った」
「っ梶原さん!お疲れ様です
避難者たちは全員無事でした!」
梶原は刑事たちを集めた緊急会議を行い、寝ていた間に起きたこと、そしてこれからの活動内容などを話し合った。
「あぁありがとう、それとなんだが、会議でゲートに取り込まれた人々の救出が全体で決まった」
「本当ですか…!?じゃあマリアお姉ちゃんを…」
そこでまず始めたに決まったことは、魔法によって出来た穴、異世界ゲートに取り込まれた人々の救出だった。
ゲートに取り込まれた人々は、夜の蝶に所属していた者が多いが、全面的に警察官総出で市民の救助を行うとなればマリアも見つかるかもしれない。
エリスはそんな期待を抱いた。
「だが、異世界の繋がりは現状エリスしかない」
「じゃあ、やっぱり…」
「っだがエリスでの実験や研究は最小に抑えるそうだ、だから少しばかり付き合ってくれ…」
「はいっ」
エリスの存在を隠していた理由、それは紛れもなく子供のエリスをこのような実験にかけないためだった。
それなのに自分は守ることが結局できなかったのだと梶原は自責をしていた。
「でもっこれ、見てください」
そう言ってエリスが取り出したのは一冊の古びた本だった。
「っそれは…確かアーサーが持っていた…」
「はい、これが禁術の書です
実はマリアお姉ちゃんとアーサーに魔力を流した時、アーサーからなぜか渡されたんです」
「前に言っていた禁術の…!」
梶原は、それがアーサーが持っていた禁術の書というものであることがすぐに分かった。
「それでなんですけど…これ」
そう言ってパラパラとページをめくって行ったエリスは最後のページで止まった。
「っこれは……!?」
そこにはうっすらと光を帯びる紫の字で何かが書かれていた。
他のページは黒く汚れたような色で書かれている文字もそれは新しく見えるものだった。
「これ、存在するいくつかの世界について書かれてますよ………」
今、エリスや梶原たちが生きている人間界、そしてアーサーやマリアなど異世界人が生きる異世界、そしてモンスターがはびこる魔界など様々なせかいが書かれていた。
「それに、ここ」
そう言ってエリスは何行もある文の中の1行を指でなぞった。
「せ、世界を繋げる、魔法の詠唱と条件が書いてあるんです!」
「っ本当じゃないか!」
「これを私が出来れば捜査が一歩進むんじゃないかって………」
褒められるのを待っているのだろうか、エリスはうきうきとそれを待ちながら梶原の顔をみつめてい見つめていた。
「エリス!でかしたっ!」
エリスはそんな梶原からの言葉を聞き、「えへへ」と笑いながら梶原の頭なでなでを受けた。
「ならマリアさんとアーサーはこの魔法を使ってこの世界に来たのか…」
「いや、多分違うと思います」
「どういうことだ?」
このページのみ文字の色が違う、そして何よりも紙が新しいように感じる。
つまりこのページだけは何らかの時に新しくできたページというわけだ。
「こんな魔法があるなんて、聞いたことも…
それにきっとマリアお姉ちゃんもこの方法で来てない…」
マリアが行方不明になったのはダンジョン内での出来事、そんなところに禁書があるわけでも使うことができるわけでもないのだ。
「私はこの世界に、ダンジョンで来たんです
だからきっと2人もそうやって……」
「ダンジョン…ならこれは新しい魔法なのか」
確かにエリスと出会った頃に聞いたことはあった。
マリアと別れ、この世界に転移したダンジョン、それがアーサーがあちらの世界にいた頃からあったとすると随分と攻略されないダンジョンであった。
「お姉ちゃんたちに魔力を流した時に現れたんじゃないかと思ってるんですけど……」
載っている文字からは微弱ながらも魔力を感じることができた。
このページのみ魔力を流さないと出ないものとなっており、長年それには気づかれていなかったということにもなる。
「そうか、でもこれで見つけ出せる可能性が大きくなった」
「そうですね!早速皆さんにも共有をしましょう」
「あぁ」
笑い合いながらも刑事たちの元へと向かおうとした2人だが、この時はエリスとの別れなんて考えてもらいなかった。
梶原は思っていたのだ、これからもずっとエリスといられるのだと、本当に勝手に。




