76日目・援軍
「エリスっ!モンスターってなんだ!?」
「えっとえっと…ダンジョンにいるやつですっ」
「わからん!」
この状況に戸惑いを隠せない梶原はエリスに聞いてみるが、エリスは説明が下手なようで全く意味が分からなかった。
「モンスターはダンジョンに生息している異形です、いろんな種類がいて今見る感じだと斧を使って攻撃してくるオークと遠くにドラゴンがいます!」
そのエリスの説明に補足を入れるようにマリアが後から説明をした。
「ドラゴンだとっ!?」
「モンスターたちが大半ですけどドラゴンは魔獣っていう種類に入るんですよ、それにドラゴンは最上位の魔獣ですし…絶体絶命です!」
その分かりやすい説明のおかげでなおさら血の気が引いてきた梶原だったが、冷静さをなくしてはいけないという思いで息をふぅと吐いた。
「そのドラゴンも攻撃してくるんだな?」
「そうですね、種類によって方法は違いますけど」
「そうか…」
梶原は一度、目を閉ざして静かに考えた。
「分かった、ならエリス今からミラを呼んでくれ」
「はいっ使い魔なら召喚できるのですぐにしますね」
「ありがとう」
目には目を、そんなよく言われる言葉をドラゴンにはドラゴンをに変えてみることにした。
戦力としてミラの力量はあまり計ることができていないもののエリスを信じてみたいと思った。
「梶原さん、ミラって?」
「…!?知らないのか」
驚愕したという顔で梶原がマリアをみるが、キョトンとしていた。
こんな日常的な、日常的ではないがほのぼのとした会話をしているが、周りはモンスターに囲われているため梶原と八重森は拳銃でひたすらにモンスターの体を撃ち、マリアは何度も火球でモンスターたちを焦がしている。
「ミラはエリスの使い魔で小さいレッドドラゴン?らしい」
「エリちゃんが!?どういう経緯で…?」
「そんなに驚くことなのか?」
「そりゃもう、最上位魔獣が使い魔だなんて聞いたことありませんよ」
「へーそんなにすごいものなのか」と軽くいう梶原にマリアはほんの少しだが嫌悪感を抱いていた。
だが、勘違いをしてしまうのも仕方がないというもの、梶原のあったことのあるミラというドラゴンは小さい見た目で野菜をパリパリとむさぼるような可愛らしい姿なのだ。
「よしっ来たねミラ、ごめんねーお留守番中に呼び出しちゃって…」
エリスの甘い声とミラの鳴き声が聞こえてきたため召喚が完了したのかと思い梶原が振り向くと、そこには鋭い目つきを持つ、全身がとても綺麗に染まっているドラゴンがいた。
「ぇ?」
思わず出た言葉がそれだったが梶原の内心はとてつもないほどに沢山のことがぐるぐると渦巻いていた。
なんせ梶原の思うミラとは全く違っている。
鋭い目つきと真っ赤な体、それに抱けるくらいの大きさだった体が今や梶原の4倍はある。
「マリアお姉ちゃんがいなくなった後に契約したから見るの初めてだよね!」
「う、うん…」
マリアは「信じられない…」と驚いた顔をして口ずさんでいた。
「じゃあミラ、ドラゴンが攻撃してきたらやり返していいから。」
そんなエリスの言葉にコクンと頭を頷かせたミラは、大きな羽を広げてゆっくりと上昇していき、ドラゴンの方へと向かっていった。
「とりあえず一安心…でもこの量のモンスターは…それに…アーサーがいないよ!?」
周りを見渡したあとにアーサーが先ほどからいないことにエリスが気づいた。
「もしかして、避難所に張った結界を壊そうとしてるのかも…」
思わずマリアの口からそんな言葉が溢れる。
だがそれが本当だとすればとても最悪な状況だった。
モンスターたちに囲われており抜け出せないというのに加えて、野放しにしておけば避難していない近隣住民にも危害が及ぶおそれがある。
ここから動けないという絶対絶命の状況下でも梶原は頭の回転を止めることはなかった。
「梶原さんっあっちからさっきの警官たちがきてる!それに大勢」
そんな京香の声を聞いて見てみると確かに他の場所へ配置されていた警官や刑事たち全員が集まっているように見えた。
だが向かってくる進路が違えばモンスターと鉢合わせになっていたろうに、梶原は心底モンスターの進行が一方通行で良かったと感じた。
「なんでここに…」
「こいつらから聞きました、エリスのこと」
梶原たちの方へと向かってきていた刑事に梶原が聞くと最初襲われた時に一緒に助けた警官たちを前に出してそう答えた。
その刑事は会議でエリスが魔法使いであると知っておりながらも黙ってくれている刑事たちの1人だった。
「エリスのことは知ってましたがここまで組織と関係があったとは…
それに勝手に広めてしまいすみません、
ですがここにいる者たちは大方話しています、よければ使ってください」
走って急いだのか全員汗が滲んでおり息を大きく吸って吐いてをしていた。
「ありがとう、ございます…ならここにいるモンスターたちを倒すか足止めしてほしいんです」
「モン、スターですか…?」
突然出てきた単語に始めは戸惑っていたものの、梶原がモンスターたちが出てきている空の穴を指差した瞬間に「ひっ」という怯える声が聞こえてきた。
「よくわかりませんがこのもんすたーも異世界のものなのですね」
「はい、拳銃を使えば倒せるので…
警官たちにも発砲許可を出してください」
「分かりました、では組織の軸をお願いします」
それに梶原はコクンと頷くだけした。
「八重森と京香さん、それとマリアさんはここにいて援護してください、怪我をした警官と刑事たちの回復も」
「わかりました」
「では、必ずアーサーを止めますので」
そう言ってエリスと立ち去ろうとする梶原のコートをマリアはぎゅっと掴み引き留めた。
「エリちゃんのことも、絶対守ってください」
「当然です」
ニコッと笑って梶原はエリスの手を引いてアーサーの元へと走り始めた。




