70日目・それでもいいから
「わたっしは…エリちゃんと、会えて嬉しかった、ずっとずっと一緒にいたい…」
それが心の奥底からやっと出てきた言葉だった。
「マリアさん…」
「マリアお姉ちゃん!もうこんなことやめて一緒にいようよ!帰る方法を見つけようよ!」
そんなマリアの様子を見て声をかける2人だったが、やはりマリアは俯いた。
「…ダメだよ、今更アーサーを裏切るなんて…」
(アーサー、やはり表面上だったか)
先ほどまで"アーサー様"と呼んでいたマリアだが呼び捨てへと変わっていた。
それがキッカケで梶原は目的のために組んだだけではない、アーサーとマリアは親しい仲だったのだと気がついた。
「私はまたアルバート様とローザ様に会いたいっていう気持ちもあったけど、エリちゃんのためにこれまでやってた」
「うん」
「でも、エリちゃんが良いって言ってくれるならもう……」
「うん…」
辛そうな顔をして語るマリアをエリスは魔法で引き寄せた。
「っわぁ」
それに抗おうとするそぶりも見せぬままエリスの近くへと寄ったかと思えば途端にエリスが抱きしめたのだ。
「マリアお姉ちゃんにずっと会いたかった…」
「………っ」
その姿は梶原たちが今はいるものの、やはり昔と、離れ離れとなった時と変わらない小さな体だった。
「エリちゃん、ごめん、ごめんね…」
途端にマリアはエリスの胸の中でボロボロと涙をこぼし始めた。マリアの見た目は大人だがエリスの方が何倍も大人っぽく見えた。
「要はそのアーサーを倒せばいいんだろ」
「…え?」
梶原の声にマリアは反応した。
「きっと大丈夫ですよ、魔法使いが2人もいるんですし、それに…」
そう言いながら梶原は横を向いた。
それに釣られてマリアとエリスも横を向く。
「梶原さーん!エリスちゃーん!大丈夫!?」
「あぁ、大丈夫だ」
「おーい」といいながら手を振って走ってくる八重森と京香が見えた。
そこで咄嗟にマリアはエリスから離れ、目を擦った。
さすがに泣いても大人としての威厳はあるのだ。
「他の警官と市民は?」
「…警官たちは報告とアーサーを追わせました。市民は避難所へ向かわせました」
「把握した」
「ぜぇぜぇ」と息をしながら話す八重森を見て、なんだか梶原は笑いそうになってしまった。
「大丈夫だった!?エリスちゃん!」
「はい、大丈夫ですお姉ちゃん…」
そう言って京香は思いっきりエリスに抱きついた。
それに対して「えへへ」と満更でもなさそうな様子をしているエリスを見てマリアは唖然としていた。
(私も見栄を張らずにハグしとけば良かった…)
それに満更でもなさそうなエリスや京香をお姉ちゃんと呼ぶ姿を見て少しむすっと頬を膨らませていた。
(エリスに似ている…いやエリスが似ているのか)
こんなことを思った梶原だったが、それを言うとさらにエリスもむすっとしてきそうだったので言わないことにした。
「もぉ良かったよぉ安心したぁ!波に流されてっちゃうんだから…」
そう言って京香はエリスに抱きついたままキョロキョロと周りを見渡し始めた。
「あの魔法使ってた人はどこ!?こんなことしてる場合じゃない、危ないよ!」
そう言って目をキリッと鋭くするが、マリアはより気まずそうにしていた。
「あのぉ」
「スルーしてたけどこんなとこにもまだ避難してない人いたんだね、みんなで送ってこうよ」
しぶしぶマリアは京香に声をかけるが、綺麗に予想を外していた。
先ほどのマリアが怒っている様子を見て八重森も察していたのか口元を抑え。笑いを必死に堪えているようだった。
「マリアと言います、えっとごめんなさいさっき魔法を使ったものです…」
マリアが気まずさを通り越した変な顔をしながら言った、その瞬間に京香は無言になり梶原の方を向いて来た。
「て、てて、敵…?」
「どっちでもないな」
その梶原の一言でより一層分からなくなった京香だったが、それを見てくすくすと笑うマリアを見てなんだが敵だとは思えなくなってきたのだ。
「い、一応もう組織を裏切ってます…」
それを言われた京香といえば呆気に取られた変な顔だった。




