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第53話 合流

 バスターミナル2階の食堂で、修二くんとルドルフはイワナの定食、私は山菜そばを堪能した。食後のお茶を楽しんでいると修二くんと私のスマホにSNSでメッセージが来た。

「今大正池通過 もうすぐ着く」

 とりあえず「お待ちしてます」とだけ送り返し、私は修二くんに、

「じゃ、下降りて先生たち待とっか?」

と言ってみた。すると修二くんは、

「あのさ、下どうせすごい混んでるじゃん、一人が上から見てて誘導したほうがスムースに合流できないかな?」

と素晴らしいことを言い出した。

「じゃ、だれが上に居る?」

と聞くとルドルフが、

「僕残るよ。僕が一番目がいいからね!」

と言ってくれた。ルドルフには修二くんのスマホを持っていてもらうことにした。


 バスターミナル1階はすごい人である。左手に行くとタクシー乗り場がある。これからタクシーに乗ろうと荷物をトランクに入れる人もいれば、つい今も一台が到着し荷物をおろしている人もいる。


 私のスマホが鳴った。

「ママ、来たよ。今駐車場に入ってきた白いタクシー」

「え、どれ」

 私が背伸びしてみると、駐車場のはるか向こうに一台車が入ってきたところだ。

「ルドルフ、ほんとにあれ?」

「うん、助手席に新発田先生乗ってるよ」

「わかった」

 私からすればその車のフロントガラスは陽光を反射していてとても中など見える気がしない。

「あいつの目は偏光ガラスか?」

と言って修二くんが笑った。


 光はよく知られるように電磁波である。その振動の方向は光の進行方向に対し垂直方向であるから、その振動はある面内で振動していると考えることができる。普通の光はその面内でどの方向にも同じ用に振動している。ところが光が反射すると、その振動法が特定の方向に絞られてしまう。偏光ガラスというのは、その特定の方向の光は通さず、通さない振動方向の光だけ通すというものだ。たとえばこれをサングラスに使用すると、水面の下の魚が見やすくなったりする。私の運転用のサングラスがそうだし、スキーとかスノーボードのゴーグルにもそうなっているものがある。修二くんはルドルフの目がそういう構造になっているのではないかと言っているのだ。


 そのタクシーが近づいてくると、確かに助手席に新発田先生、うしろの窓にはみほちゃんの顔が見えた。私が手を振ると、みほちゃんの横にあかねちゃんの笑顔も見えた。

「ルドルフ確認した。ありがと。あんたも降りてきて」

「了解!」


「「「聖女様~!」」」

 まほちゃん・みほちゃん・あかねちゃんは大きな声で叫びながらタクシーから降りてきた。私は3人まとめてのアタックを腰をいれて受け止めなければならなかった。3人まとめてハグしていると、視線を感じた。見回すと多くの観光客が私の顔をまじまじとみている。私のあだ名のせいだろう。

「やっとついた~!」

 いつもはお行儀のよいまほちゃんが言う。

「渋滞、たいへんだったの?」

「うん、途中全然動かなかった」

「そっか、たいへんだったね」


 気がつくと修二くんとルドルフはタクシーの運転手さんから荷物を受け取っていた。ちっちゃいリュックが3個、大人用のリュックが1個、さらにはダッフルバッグもある。

「先生、荷物大変でしたね」

 私が声をかけると新発田先生は、

「いや、そうでもないんだよ。娘たちが二人がかりで持ってくれてね、あかねちゃんも手伝ってくれたんだ」

「そうですか、みんなえらいですね」

「ああ、たいしたもんだよ。親バカだけどね」


 新発田先生は2年半ほど前、脳梗塞で倒れた。そのことがきっかけで私達二人が結婚することになってしまったのだけれど、とにかく先生はまだ少し足が不自由で杖が手放せない。だから今日のような旅行はたいへんなのだ。


「わーい、るーくんだー!」

 ルドルフが到着したらしい。私はこのような大騒ぎが恥ずかしく、

「さ、みんな、ここだと他のお客さんに迷惑だからさ、あっち行こう、あっち」

と言って、みんなを強引にバスターミナル裏手のベンチに引っ張っていった。


 バスターミナルの裏手には、ベンチが多く並んでいる。まわりはバスターミナルの建物、インフォメーションセンター、さらには木々に囲まれ景色は良くない。それだけにちょっとだけど人が少なく、全員で座れるところはすぐに見つかった。

「みんな、バンガローまでちょっと歩くから、身支度ちゃんとしよう」

と私が言うとあかねちゃんが小さな声で、

「わたしトイレ」

と言った。そういうわけで私はまほちゃん・みほちゃん・あかねちゃんを引き連れてトイレまで行くことになった。


 バスターミナル前のトイレは大行列だった。女性用トイレではよくあることだ。だからあかねちゃんが早めに言ってくれたことは正直助かる。


 トイレから戻ると、新発田先生・修二くん・ルドルフがなにやら紙袋とかビニール袋を前にして待っていた。

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