第8話:恐怖の尋問と、語られた真実
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暗殺ギルド『黒曜の巣』の国内アジトを単身で制圧し、支部長を追い詰めた主人公・空。
神に禁じられた「黒い魔力」の圧倒的な恐怖の前に、組織の男が語る真実とは――?
容赦のない冷徹な交渉と、さらに広がる世界の闇をお楽しみください!
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地下迷宮の奥深く、重苦しい静寂が支配する部屋。
精鋭の部下たちが一瞬にして床に崩れ落ち、最後に残された国内支部長の男は、愛用の仕込み剣を握りしめたまま、壁際に背中を預けて荒い息を吐いていた。
冷や汗が額から顎へと伝い、床にポタポタと落ちる。
男の脳裏にあったのは「格上の貴族の子供をあしらう」という慢心ではなく、眼前の少年が纏う底知れぬ「死の気配」に対する純粋な恐怖だった。
「……化け物め」
男は震える声で吐き捨てるように呟いた。
「これが、神に禁じられた『連才』の血筋の力だというのか。ただの十二歳のガキが……ここまで……」
空は表情を一切変えず、ただ冷ややかに男を見下ろしていた。その両手からは、今もなお微かに黒い呪詛の魔力が立ち上っている。
「化け物とは失礼な。僕はただ、我が家に牙を剥いた害虫を駆除しているだけだよ」
空の声には微塵の揺らぎもなかった。
「さて、無駄な問答はここまでだ。君の部下たちはもう眠っているが、君も同じように永遠の眠りにつきたいかい? それとも、僕の質問に正確に答えて、もう少しだけ命を長らえてみるかい?」
選択肢など最初から存在しない。
男はその冷酷な現実を理解し、悔しそうに歯噛みしながらも、震える声で口を開いた。
「……何を、聞き出したい」
「三つだ」
空は指を一本ずつ折りながら、淡々と告げた。
「一つ、我が連才家を抹殺しろと指令を出した本拠地はどこにある? 二つ、その背後で糸を引いている国家や勢力は? 三つ、我が家以外に、あの組織が狙っている標的はあるのか?」
男はしばらくの間、苦悶するように顔を歪めていた。暗殺ギルドの人間として組織の秘密を漏らせば、例えここで空から逃げ延びたとしても、組織全体の粛清が待っている。しかし、今この場で口を割らなければ、次の瞬間に心臓を停止させられるのは確実だった。
「……フッ、ハハハ……」
男は乾いた笑いを漏らした。
「お前たちは、自分たちがモクモク王国の英雄気取りで影から人を殺していれば、永遠に安全でいられると思っているのか?」
「安全だなんて思ったことは一度もないよ。ただ、僕を脅かす存在は、先回りしてすべて潰すだけだ」
空の言葉には、揺るぎない絶対的な合理性が宿っていた。
男は空のその瞳の奥を見て、この少年には脅しや慈悲が一切通用しないことを悟った。
「……分かった。すべて話してやるよ」
男は観念したように肩の力を抜き、床に膝をついた。
「『黒曜の巣』の本拠地は、このモクモク王国からも海を越えた西方の大国、スズメスズメ帝国の中枢にある。そこが我がギルドの総本山だ。お前たちのことを『神の秩序を乱す最大の異端』として、総帥が直接の排除命令を出した」
「スズメスズメ帝国……ふむ」
空は脳裏に大陸の地図を思い描き、情報を整理した。
モクモク王国を囲む周辺国だけでなく、さらに西方の巨大帝国が背後で糸を引いていたというわけだ。
「そして二つ目の質問、背後の勢力についてだが……」
男の顔に、わずかに冷笑の色が浮かんだ。
「我がギルドを動かしているのは、暗殺者崩れだけじゃない。スズメスズメ帝国の高官、そしてモクモク王国内の……お前たちが想像もしていないような『高い地位にいる人間』も、我が組織に資金と情報を流している」
空の眉間がわずかに動いた。
「王国内の人間、だと?」
「そうだ。バルトロ伯爵のような小物だけじゃない。もっと上層部、お前たちの功績を誰よりも称えているはずの王宮の重鎮、あるいは……王族の近親者の中にすら、我がギルドと内通している者がいる。お前たちがいくら影で敵を刈り取ろうとも、その足元から腐り始めているのさ」
それは、モクモク王国の体制そのものが内部から歪んでいるという事実だった。
表向きは連才家を英雄として持て囃しながら、裏ではその存在を疎み、暗殺ギルドを使って排除しようとする二枚舌の権力者たちがいる。
「なるほどね。よくある話だ」
空は呆れるというよりも、人間の業の深さにむしろ納得したような冷めた声を漏らした。
「綺麗事を並べる者ほど、裏では一番汚い手を使う。だからこそ、人間は信用に値しない」
「最後に三つ目の質問……我が家以外に狙われている標的についてだが」
男は息を整え、意味深な笑みを浮かべた。
「我がギルドが動いているのは、お前たち連才家を消すためだけじゃない。もうすぐ、この大陸全体の勢力図を根本からひっくり返す『大いなる計画』が発動する。そのための下準備として、周辺諸国の王族や、モクモク王国の主要な防衛網を無力化するための工作がすでに進んでいるのさ。お前たちがいくら足掻こうとも、時代の流れは止められんよ」
「大いなる計画、か……」
空は静かに息を吐き、腰に差した特製の短剣にそっと手をかけた。
組織の支部長が語った情報は、モクモク王国内部の腐敗から大陸規模の陰謀まで、十分にすぎるほど価値のあるものだった。
「十分な情報だ。協力に感謝するよ」
空のその言葉に、支部長の男はわずかに目を見開いた。
「……命は、助けてくれるのか?」
「僕は、君を殺すとは言っていないけれど……」
空は冷ややかに微笑んだ。
「我が家の存在や、ここで起きたことを知った人間をそのまま野放しにするほど、甘くは育っていないんだよ」
瞬間、空の指先から放たれた黒い魔力の針が、音もなく男の急所を正確に貫いた。
男は目を見開いたまま、声も出す間もなく床へと倒れ伏した。完全に、死亡。
静まり返った地下室で、空は一人たたずんでいた。
手に入れた情報は重い。モクモク王国内部に潜む裏切り者、そして西方の大国から迫る「大いなる計画」。
だが、空の心に恐れや焦りは微塵もなかった。
むしろ、敵が大きければ大きいほど、自分がこの世界ですべてを掌握し、絶対的な優位に立つための「やりがい」があるとさえ感じていた。
(王国内部の裏切り者、か……。次の夜会や宮廷の動きには、さらに注意を払う必要があるな)
空は証拠を一切残さないよう、アジト全体に微量の呪詛を巡らせ、すべての痕跡を綺麗に消し去った。
地下迷宮の出口に向かって歩き出す少年の背中は、すでに十二歳の子供のものではなく、世界の影を支配する者のそれだった。
夜明けの光が王都の空を白み始めさせる頃、影の貴公子は静かに自らの屋敷へと帰還を果たすのだった。
第8話をお読みいただき、ありがとうございました!
暗殺ギルドの支部長から、モクモク王国内部の裏切り者や、西方の大国を巻き込む「大いなる計画」の存在を聞き出した空。敵の規模がさらに大きくなり、物語は一気にスケールアップしていきます!
次回、いよいよ王国内部に潜む「裏切り者」の影に主人公が迫る展開へ……!




