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『戦火の絶えぬモクモク王国で、暗殺稼業の成り上がり貴族の長男に転生した(※生まれながらの裏切り者)について』  作者: 凪塩 未来


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第5話:テラスの来訪者と、潜む毒蛇

第5話をご覧いただきありがとうございます!


宰相派のバルトロ伯爵を圧倒し、周囲を戦慄させた夜会。その裏で、テラスの向こうから向けられた「異質な視線」の正体とは――?

今回は、他国からの新たな刺客、あるいはさらなる陰謀の影へと物語が加速していきます。


神に禁じられた暗殺術を持つ少年・空の鮮やかな立ち回りを、今回もぜひお楽しみください!

ブックマークや評価での応援も、よろしくお願いいたします!

王宮大広間の華やかな喧騒から逃れるように、連才空は静まり返ったテラスへと足を踏み出していた。

夜風が心地よく、肌を冷やす。室内の重苦しいワインと香水の匂いとは対照的に、外の空気は澄んでいた。だが、空の研ぎ澄ませた感覚は、その爽やかな夜気の中に微かな不自然さを捉えていた。


(さっきの視線……気のせいではないな)


バルトロ伯爵を追い払った直後、遠くの暗がりから感じた鋭い気配。それはモクモク王国の宮廷貴族たちが持つような、権力闘争に怯える者のそれではなかった。もっと殺伐としており、徹底的に訓練された戦闘員の気配だった。


空は周囲に気取られないよう、自然な足取りでテラスの手すりに寄りかかり、眼下に広がる王宮の庭園を見下ろした。

手入れの行き届いた植え込みの影、月の光が届かない闇のなかに、微かな足音が溶け込むように動いている。


「――そこにいるのは、分かっているよ」


空が静かに呟いたその瞬間。

音もなく、風を切り裂く影がテラスの石畳へと舞い降りた。


ザシュッ、と鋭い摩擦音。

現れたのは、全身を漆黒の忍び装束に似た軽装で固め、顔の半分を仮面で覆った一人の人物だった。その手には、月光を冷たく反射する特殊な形状の短剣が握られている。闘気の色は澱みなく、一級の殺し屋のそれだった。


「ほう……。この距離まで近づくまで、気配すら完全に殺していたつもりだがね」

男の声は低く、どこか外国なまりのイントネーションを含んでいた。


「君の足音は悪くなかった。けれど、殺気が少しだけ重い」

空は振り返りもしず、淡々と返した。その落ち着き払った態度に、刺客の男はわずかに目を細めた。

「十二歳そこそこの貴族の坊っちゃんが、死を目の前にしてその余裕か。……いや、噂の『連才』の長男なら、それも頷けるか」


刺客は短剣を構え直し、じりじりと距離を詰めてくる。

「俺は隣国……いや、もはや滅びかけた国々から依頼された者ではない。お前たち連才家のせいで、我が組織の計画がすべて狂わされた。ここでその首をもらい受ける」


(なるほど。ペコペコやマケマケだけではなく、この大陸全体の裏社会で、我が家の存在が目の上のたんこぶになっているというわけか)


空は心中で冷静に分析した。

モクモク王国が平和を謳歌できるのは、連才家が他国の要人を始末しているからに他ならない。しかしそれは裏を返せば、大陸全土の裏社会や、暗躍する闇の勢力にとって、連才家こそが「すべての元凶」として狙われる理由になっているということだった。


「僕の首が欲しいなら、もう少しマシな手練れを寄越すべきだったね」

空が冷ややかにそう言った瞬間、刺客の身体が消えた。

神速の移動技。物理的な速度を超越した魔力による瞬発跳躍。刺客は一瞬で空の背後に回り込み、その喉元へと致命的な一撃を突き立てようとした。


——勝負あり、と刺客の口元が笑った。


だが。

ガキンッ! と、重い金属音がテラスの夜空に響き渡った。


「なっ……!?」


刺客の目が見開かれた。

振り返ってもいない空の背後、その背中に沿うようにして展開された黒い魔力の障壁が、刺客の短剣を完璧に受け止めていたのだ。刃が空の身体に届くことはなく、逆に強烈な魔力の反動が刺客の腕を痺れさせた。


「君の剣技は悪くない。けれど……」


空はゆっくりと振り返り、その底知れぬ黒い瞳で刺客を捉えた。

「『暗殺』を舐めすぎだ」


次の瞬間、空の右手から放たれた黒い呪詛の魔力が、蜘蛛の巣のように刺客の四肢へと絡みついた。

「ぐっ……! なんだ、これは……身体が動かない……!?」


刺客は冷や汗を流し、必死に魔力を練って解こうと試みたが、神の禁忌に触れる邪神の知恵から生み出された呪いは、人間の魔力の出どころを完全に塞ぎ、麻痺させていく。


空は静かに一歩、刺客へと歩み寄った。

十二歳の少年の姿でありながら、その背後に映る影は、歴代のどの殺し屋よりも深く、圧倒的な絶望の色を帯びていた。


「誰の差し金だい? 組織の名前を言いなさい」

「ふ、ふざけるな……! 我が組織は――」


刺客が口を割ろうとした、その時だった。

刺客の奥歯から、微かな異音がした。


(――自決用の毒か!)


空が瞬時に察知し、呪いの魔力でその動きを封じようとしたが、訓練されたプロの刺客の執念は早かった。カチリと奥歯が噛み砕かれ、刺客の口元から黒い血が溢れ出す。


「くっ……連才の……化け物め……。我が組織がお前の首を……いつか必ず――」


言い切る前に、刺客の身体から力が抜け、その場に崩れ落ちた。

完全に、死亡。証拠を残さないための徹底した教育が、最後まで貫かれていた。


静まり返ったテラスに、夜風の音だけが戻ってきた。

床に転がる刺客の亡骸を見下ろしながら、空はわずかに眉をひそめた。


「組織、か……」


バルトロ伯爵のような国内の権力争いだけではなく、大陸全土を巻き込む巨大な闇の組織が、すでに自分たち連才家を明確な標的として動き始めている。

平和なモクモク王国の裏側で、世界そのものを飲み込もうとする別の歯車が回り始めているのは確実だった。


だが、空に恐れや怯えは一切なかった。

むしろ、彼の胸の内にあったのは、静かなる闘志と、すべてを掌握してやろうという冷徹な支配欲だった。


(僕たちを狙うというのなら、組織ごとすべて闇に葬るまでだ。神が禁じようとも、世界が敵に回ろうとも関係ない。僕の邪魔をするものは、すべて排除する)


空は懐から小さな布を取り出し、返り血一つついていない手を軽く拭うと、冷たい夜風の中に背を向けた。


遠くでワルツの音楽がまだ鳴り響いている。

光ある王都と、血に濡れた影のあわい。その境界線に立つ少年は、静かに大広間へと戻っていった。


新たな敵の影が忍び寄る中、次期当主・連才空の反撃の物語は、ここからさらに加速していく。

第5話をお読みいただき、ありがとうございました!


王宮のテラスで襲いかかってきた謎の刺客を、圧倒的な「黒い魔力」と冷徹な判断で返り討ちにした空。しかし、背後には大陸規模の巨大な「闇の組織」の存在がちらつき始めました……!

次回、いよいよ一族の根城や、さらなる裏社会の秘密へと切り込んでいく展開になります!

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