シーズン3:第7話:平穏の裏に潜む新たな影
『戦火の絶えぬモクモク王国で、暗殺稼業の成り上がり貴族の長男に転生した』第3シーズン第7話をご覧いただきありがとうございます!
スズメスズメ帝国の野望を打ち砕き、束の間の平和を取り戻した主人公・空。
しかし、モクモク王国の日常に戻った彼を待ち受けていたのは、ウェブ小説の執筆……ではなく、新たな「不穏な影」だった――!?
新たな章の幕開けを描く第7話、今回もぜひお楽しみください!
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スズメスズメ帝国での一件を鮮やかに解決し、我がモクモク王国へ帰還してから数週間。
私の自室には、再び心地よい羽ペンの走る音と、淹れたて紅茶の豊かな香りが戻っていた。
「よし、第3シーズンの折り返し地点のプロットはこれで完璧、と……」
私は手元の原稿用紙に満足げな視線を送り、ふうっと小さく息をついた。
ペコペコ帝国、マケマケ皇国、そして先日のスズメスズメ帝国の強硬派たち。大陸を揺るがしたすべての巨悪は我が家の圧倒的な力と知略の前にひざまずき、今のモクモク王国はかつてないほどの完全な平和と静寂に包まれている。
これなら、誰の邪魔も入ることなく、心ゆくまでウェブ小説の執筆とスローライフを満喫できるというものだ。
……そう、あの時までは、心の底からそう信じ込んでいた。
コン、コン。
優雅なノックの音のあと、側近の影が音もなく部屋に入ってきた。その表情は、いつもの冷静なものとは違い、わずかに険しさを帯びていた。
「若君、執筆中大変恐縮ですが……王国の中央情報網から、非常に奇妙な報告が入っております」
私は羽ペンの先をピタリと止め、冷ややかな黒い瞳を側近に向けた。
「奇妙な報告、かい? スズメスズメ帝国の残党がまだ何かくだらない悪足掻きでもしているというのかい?」
「いえ、それが帝国方面ではありません。……ここ最近、我が国の隣国である『ヒソヒソ商業連合国』の周辺で、商人の失踪事件が相次いでいるとのことです」
「ヒソヒソ商業連合国……?」
私は少しだけ眉をひそめ、記憶の引き出しをめくった。
あそこは大陸の流通を一手に握る中立的な商業国家であり、武力や魔力による覇権争いには基本的には首を突っ込んでこない、利害関係だけで動く狡猾な商人たちの国だったはずだ。
「商人の失踪が、我が家にどう関係するというのさ?」
「はい。単なる行方不明ではなく、彼らは全員、我が連才家が裏で管理している『極秘の闇ルートの物資』を買い付けた直後に、文字通り『影も形も残さず消え去っている』のです。現場には、魔導の痕跡すら一切残されていません」
私は椅子に深く腰掛け、軽く腕を組んだ。
「魔導の痕跡すら残さず、人が消える……か。以前、アワアワ迷宮都市で相手にしたような、人造暗殺人形の仕業というわけでもなさそうだね」
「左様でございます。現地からの密偵によれば、現場に残された唯一の手がかりは、壁や床に刻まれた『不気味な黒い紋章』のみだとか」
側近が取り出した一枚の暗号写真を見る。そこには、確かに私の知るどの国の魔導回路とも異なる、歪んだ幾何学模様のような黒い紋章が焼き付けられていた。
「なるほどねえ……」
私はクスリと冷たく笑った。
「僕が国内や隣国の掃除をすっかり終えた気でいたら、今度は別の場所から、また新しい面白そうな虫けらが這い出てきたというわけだね」
「若君、いかがなさいますか? 直ちに調査部隊をヒソヒソ商業連合国へ派遣し、その紋章の正体を暴かせますか?」
「ううん、大勢を動員するのはやめておこう。商人の国という場所は、権力者が表に出てくるよりも、裏の闇の部分にこそ面白い真実が隠れているものさ」
私は立ち上がり、漆黒の外套を羽織った。
「私が直接、隣国へ赴いて様子を見てくるとしようか。我が家の名前を勝手に使ってコソコソと商売をしている不届き者がいるのなら、一度その首を綺麗に縦に割って中身を確かめてあげる必要があるからね」
「かしこまりました。それでは、移動用の特急馬車と隠密の手配を進めます」
「大げさな馬車は要らないよ。いつものように、僕一人でひっそりと隣国の闇に忍び込んでくるとするさ。……さて、ウェブ小説の予約投稿も数日分は済ませておいたし、そろそろ出かけるとしようか」
平和な執筆机をあとにして、十二歳の影の貴公子は、新たな謎と強敵が待ち受ける隣国「ヒソヒソ商業連合国」へ向けて、静かに歩き出すのだった。
『戦火の絶えぬモクモク王国で、暗殺稼業の成り上がり貴族の長男に転生した』第3シーズン第7話をお読みいただき、ありがとうございました!
帝国の脅威が去り、平穏な執筆生活に戻った空のもとに舞い込んできた隣国での不穏な失踪事件。謎の黒い紋章を残して消える商人たちの行方は――?
次回、ヒソヒソ商業連合国に潜入した空の前に現れる新たな敵とは!?




