シーズン2:第7話:迷宮都市の別れと、新たな来訪者
『戦火の絶えぬモクモク王国で、暗殺稼業の成り上がり貴族の長男に転生した』第2シーズン第7話をご覧いただきありがとうございます!
国際会議の場で周辺諸国を完全に屈服させ、モクモク王国に絶対的な優位をもたらした主人公・空。
任務を終えてアワアワ迷宮都市を離れようとする彼の前に、今度は一人の「予想外の来訪者」が現れて……!?
新たな出会いと不穏な影を描く第7話、今回もぜひお楽しみください!
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アワアワ迷宮都市に朝日が昇り、魔導の泡に包まれた白亜の街並みが淡い光に照らされる頃。
私たちは、滞在していた高級迎賓館の私室で静かに出発の準備を整えていた。
「若君、昨晩の一件以来、ペコペコ帝国やマケマケ皇国の使者たちは全員、宿舎から一歩も外に出ていないとのことです。当然、王国の不利になるような動きをする者も完全にいなくなりました」
側近の影が手際よく荷物をまとめながら、淡々と報告した。
「そりゃそうさ。あそこまで徹底的に『恐怖』を叩き込んでおいたんだからね。しばらくの間は、どの帝国も我が国に向かって牙を剥こうなんて考えすら起こさないはずさ」
私はソファに腰掛け、愛用の黒インクの羽ペンをトントンと指先で叩きながら、満足そうに頷いた。
国際会議の場で大国使者たちを圧倒し、モクモク王国に有利な不可侵条約と莫大な賠償金を約束させた私の一手は、大陸全体の勢力図を完全に書き換えた。もはやこの迷宮都市で用事はない。モクモク王国の首都へ戻り、再び静かな執筆生活に戻る――予定だった。
コン、コン。
その時、私室の重厚な扉が上品に叩かれた。
「おや? まだ僕たちに何か言い足りない大国の使者でもいるのかい?」
私が首をかしげると、側近は警戒を強めながら静かに扉へと歩み寄り、慎重に鍵を外して開けた。
扉の向こうに立っていたのは、ペコペコ帝国やマケマケ皇国の神経質な官僚たちではなかった。
そこにいたのは、深紅の魔導ローブをまとい、フードを深く被った一人の「少女」だった。
少女はゆっくりとフードを下ろし、栗色の美しい長髪と、どこか気品を湛えた大きな瞳を私に向けた。年齢は私と同じか、少し年上くらいに見える。だが、その身体から漂う魔力の質は、ただの人間のものではなかった。非常に高貴でありながら、どこか野性味と底知れない深みを感じさせる魔力だ。
「……あなたが、モクモク王国の『連才空』様ですね?」
少女の声は鈴を転がすように美しかったが、その眼差しには確かな警戒と、それ以上の深い好奇心が宿っていた。
私は椅子に座ったまま、冷ややかな黒髪の隙間から彼女を見据えた。
「そうだけど。君は一体、どこのお嬢さんかな? 帝国や皇国の使者にしては、少し雰囲気が違うようだけれど」
「失礼いたしました。私は、大陸西方の魔導大国『スズメスズメ帝国』の特使にして、皇立魔導アカデミーの主席研究員――セレスティア・フォン・スズメスズメと申します」
少女――セレスティアと名乗ったその者は、優雅にスカートの裾を持ち上げて一礼した。
スズメスズメ帝国。今回の国際会議の裏で、もっとも深く陰謀に関わっていたはずの最大大国の名前だ。
「スズメスズメ帝国の特使、ねえ」
私はクスリと冷たく笑った。
「昨日の会議の場には姿を見せなかったくせに、今になって我が家の前に現れるとは、どういう風の吹き回しだい? 君たちも、あの使者たちと同じように僕に脅されたいのかい?」
セレスティアは私の冷ややかな挑発にも動じず、むしろわずかに唇の端を持ち上げて微笑んだ。
「おやおや、恐ろしい噂通りの冷徹さですね。ですが、ご安心ください。私はペコペコ帝国やマケマケ皇国のような愚かな使者たちと一緒にしないでいただきたいわ」
「ふむ?」
「私は、彼らのようにモクモク王国の領土や政治的権益を奪うことなど微塵も興味がありません。私の興味はただ一つ――あなたが所持し、我が国が長年喉から手が出るほど欲している、古代の『禁忌の魔導炉心』の真実、そしてそれを操るあなたの『黒い魔力』の正体についてです」
セレスティアの瞳が、一瞬にして鋭く輝いた。
彼女はただの外交官やスパイではない。真の意味での「魔導の研究者」、それも禁忌の領域に踏み込むことを恐れない狂気的なまでの知的好奇心を秘めた少女だった。
「我が国の中枢は、あなたを排除しようと躍起になっていますが……私は個人的に、あなたという存在にとても興味があるの。だから、敵対するのではなく……別の『取引』を提案しに参りました」
私はしばらく彼女の顔をじっと見つめ、それから小さく息を吐いた。
「僕の魔力に興味がある、か。命知らずな研究者もいたものだね。……で、その取引とやらの内容を聞かせてもらおうか」
アワアワ迷宮都市を離れる直前に現れた、スズメスズメ帝国の天才少女。
影の貴公子と狂気の研究者の出会いは、大陸全体を巻き込むさらなる巨大なうねりの予感を含みながら、静かに動き出し始めていた。
第2シーズン・第7話をお読みいただき、ありがとうございました!
国際会議を終えて帰路につこうとする空の前に現れたのは、スズメスズメ帝国の特使にして天才魔導研究員の少女・セレスティアでした。敵対ではなく「個人的な興味と取引」を持ちかける彼女の真意とは――?
次回、セレスティアとの危険な駆け引きが幕を開けます!




