第16話:断罪の果てと、影の王国
第16話をご覧いただきありがとうございます!
大観兵式を乗っ取り、王都全体を「黒い魔力」の重圧で支配した主人公・空。
恐怖と絶望に染まる特設ステージで、追い詰められた第一皇子と最高大将軍に下される裁きとは――?
影の貴公子による圧倒的な制裁と、物語のクライマックスをぜひお楽しみください!
ブックマークや評価での応援も、よろしくお願いいたします!
モクモク王国の首都の中心にそびえる、大観兵式の特設ステージ。
数万の正規兵たちが「黒い魔力」の重圧に押し潰され、広場のあちこちで地面にひざまずき、荒い息を吐き続けている。その中心で、かつての威厳を完全に失った第一皇子レオンハルトと、最強の猛者と謳われた最高大将軍バルバロスは、もはやまともに立つことすらできていなかった。
「うっ……身体が……鉛のように……動かん……!」
バルバロスは巨大な軍刀を杖代わりに必死に体を支えながら、血走り見開いた目で目の前の少年を睨みつけた。
「たかが十二歳のガキが……ここまでの一大魔術を王都全体に仕込むなど……正気か……!」
「正気かどうかは別として、結果がすべてだよ」
空は冷ややかな足取りでステージを登り切り、二人の目の前に静かに立った。
その瞳には、恐怖に震える権力者たちを映す憐れみも、怒りもなく、ただ「害虫を見下ろす冷徹な光」だけが宿っていた。
「待て……! 待ってくれ、連才の若君……!」
第一皇子レオンハルトは泥まみれになりつつ、空の足元にしがみつくように叫んだ。
「私を殺せば、モクモク王国の王位継承権がどうなるか分かっているのか……! 国が混乱し、他国に付け入る隙を与えることになるんだぞ……!」
「王位継承権、ねぇ」
空はクスリと冷ややかな笑みを漏らした。
「国を売り渡し、自分の保身のために他国の軍を引き入れようとした人間が、今更どの口で王国の将来を語っているんだい? 君のような腐った歯車が一つ消えたところで、この国が困ることは何一つないよ。むしろ、綺麗さっぱりして好都合さ」
「ぐっ……!」
レオンハルトは顔を青ざめさせ、絶望のあまりその場にへたり込んだ。
だが、長年戦場を渡り歩いてきた最高大将軍バルバロスは、まだ完全に諦めていなかった。
その屈強な巨体に残された全ての魔力をかき集め、彼は冷酷な笑みを浮かべながら、愛用の軍刀を無理やり振り上げた。
「調子に乗りやがって……ガキが……! ここまで近づいたなら、相打ちだ……死ねえええ!」
怒号とともに、バルバロスの全霊を込めた一撃が空の首元へと放たれた。それは数々の戦場を血で染めてきた猛者の、文字通りの命を削った必殺の斬撃だった。
周囲で見ていた貴族や兵士たちが、思わず息を呑んだ。
――しかし。
空は動かなかった。避けることも、受け止めることもしない。
ただ、その周囲に渦巻く黒い魔力が、勝手に防御の壁を作り上げた。
ガキィンッ! と、重い金属音が響き渡る。
バルバロスの渾身の一撃は、空の肌に触れるどころか、彼を包む黒い呪詛の障壁に阻まれ、逆にその強烈な反発力で軍刀が真っ二つに砕け散った。
「なっ……馬鹿な……!」
「終わりかい?」
空が冷ややかにそう呟いた瞬間、彼の右手から放たれた黒い魔力の刃が、バルバロスの胸元を正確に貫いた。
血飛沫すら上がらない。魔力の刃が一瞬で心臓の鼓動を停止させ、神経を焼き切った。
「ぐはっ……」
バルバロスは目を見開いたまま、巨大な巨体をガクリと傾け、ステージの床へと盛大に倒れ伏した。二度と、その巨体が起き上がることはなかった。
最高大将軍の無残な敗北を目の当たりにし、第一皇子レオンハルトは完全に戦意を喪失した。恐怖のあまり失禁し、ただガタガタと全身を震わせながら床を這うことしかできない。
「さあ、第一皇子殿下」
空は冷ややかに見下ろしながら、ゆっくりと近づいていった。
「君の仕組んだ公開処刑の舞台は、最高の結果になったね。……もっとも、裁かれる側が君たちに入れ替わったけれど」
「た、助けて……誰か……!」
「誰も助けには来ないよ。ここは、完全に僕の支配領域なのだから」
空が指先を軽く立てると、黒い魔力の呪詛がレオンハルトの身体を優しく、しかし逃れられないほどの強さで包み込み、そのまま永遠の眠りへと誘った。
音もなく、苦しみを感じる間もなく、王国の第一皇子は静かに意識を闇へと落としていった。
広場を埋め尽くしていた数万の兵士たちは、その圧倒的な光景をただ呆然と見守るしかなかった。逆らう者には死が訪れる。その残酷なまでの現実が、全員の心に深く刻み込まれていた。
静まり返った大観兵式典場の中央。
数万の軍勢、王国の最高権力者、そして他国の陰謀の糸を、わずか十二歳の少年が一人ですべて平らげた。
空は静かに振り返り、広場の遠くを見据えた。
国境の脅威は去り、王国内部の裏切り者たちは根絶やしにされた。スズメスズメ帝国も、今回の件で迂闊には手出しができなくなるはずだ。
表向きの平和な王国の裏側。
そのすべての影を支配し、守る者。
(さて……これで、ようやく静かに小説でも書く時間ができるかな)
空はふっと微かに笑みを浮かべると、誰一人として逆らうことのできない圧倒的な静寂を残し、観兵式典場の出口へと一人で歩き出すのだった。
――戦火の絶えぬモクモク王国で、暗殺稼業の成り上がり貴族の長男として転生した少年の物語は、こうして王国の裏の支配者として、新たな伝説のページを静かにめくるのだった。
第16話(本編最終話)をお読みいただき、ありがとうございました!
大観兵式での最終決戦、そして第一皇子と最高大将軍への容赦なき断罪を経て、主人公・空が王国の影の支配者として君臨する最高の結末となりました!
ここまで長きにわたり応援していただき、本当にありがとうございました!
面白いと思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク登録】や【評価】をよろしくお願いいたします!
皆様の応援が、次の新しい物語の活力になります。それではまた、別の作品でお会いしましょう!




