第15話:大観兵式と、断罪の舞台
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第一皇子と最高大将軍が仕掛けた「大観兵式」の罠。王国全体の軍勢と権力が集まるその舞台で、主人公・空はいよいよ直接的な反撃へと乗り出します。
圧倒的な権力者たちを前に、影の貴公子が見せる冷徹な無双劇をぜひお楽しみください!
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モクモク王国の首都の中心に位置する、巨大な王立観兵式典場。
普段は国家の祝典や軍の閲兵にのみ使われるその広大な広場には、王国全土から集結した数万の正規兵が整然と並び、その周囲を埋め尽くすように数多の貴族や市民たちが詰めかけていた。
中央のひときわ高い特設ステージの上には、玉座に腰掛けた第一皇子レオンハルト、そしてその傍らに仁王立ちする最高大将軍バルバロスの姿がある。
彼らの表情には、これから始まる「計画」に対する絶対的な自信と、獲物を追い詰めた毒蛇のような冷酷な笑みが浮かんでいた。
「……見てみるがいい、バルバロス。あの連才の一族が、どのような面下げてこの場に現れるかを」
レオンハルトがワイングラスを傾けながら低く呟くと、バルバロスは腕を組んで豪快に鼻で笑った。
「安心されよ、殿下。数万の精鋭兵と、我が軍の最強の騎士団がこの広場を包囲している。いくらあのガキが化け物じみた暗殺術を持っていようと、この圧倒的な暴力の前ではただの虫けらに過ぎません。ここで公開処刑に処し、王国における我が軍の絶対的な権力を知らしめましょう」
二人の悪巧みが最高潮に達したその時、観兵式典場の巨大な鉄門が、重苦しい音を立ててゆっくりと開かれた。
ざわついていた数万の兵士たちの声が、一瞬にしてピタリと止まった。
広場の中央へと続く一直線の石畳の通路。その遠い入口に、二つの影が姿を現したからだ。
先頭を歩くのは、当主である父親。そしてその一歩後ろに、漆黒の外套を纏った十二歳の少年――連才空がいた。
護衛も連れていない。従者すらいない。
ただ親子二人だけで、数万の敵意と殺気が渦巻く大観兵式典場へと、まるで自分の庭を散歩するかのように優雅な足取りで歩いてくる。
その姿を見た周囲の貴族たちが、ざわめき出した。
「あれが……連才の一族……?」
「馬鹿な、なぜ一人で……? まさに死にに来たようなものじゃないか!」
「第一皇子殿下と大将軍が待ち構えているというのに、あの落ち着き払った態度はなんだ……」
ステージの上から、バルバロスが不敵な笑みを浮かべ、巨大な軍刀を地面に突き立てながら大音声で叫んだ。
「よくぞ来た、連才の当主、そして長男・空! 貴様らが裏でスズメスズメ帝国と通じ、我が国の機密を売り渡し、国境を混乱に陥れた反逆者であることはすでに明白である!」
その声が、魔法によって広場全体に響き渡る。
数万の兵士たちが一斉に武器を構え、殺気の波が空気を揺らした。
だが、その圧倒的な威圧感の中にあっても、空は微動だにしなかった。
彼は冷ややかな黒髪の隙間からステージを見上げ、あろうことか、ふっと嘲笑うような微笑みを浮かべた。
「反逆者、ねぇ」
空の声は小さかったが、不思議と広場にいる全員の耳にハッキリと届いた。
「国を売り渡し、私腹を肥やし、自分たちの権力を守るために他国の軍を引き入れようとしたのは……そこの玉座にふんぞりかえっている第一皇子と、脳みそまで筋肉でできた大将軍、君たち自身じゃないのかい?」
「なっ……! 貴様、口を慎め!」
レオンハルトが顔を真っ赤にして立ち上がり、鋭い怒声を浴びせた。
「証拠もないのに皇族と最高幹部を侮辱するとは、やはり反逆者の血筋だ! 者共、あの不敬な親子をその場で捕らえよ! 抵抗するなら斬り捨てても構わん!」
第一皇子の命令とともに、広場を取り囲んでいた数千の精鋭兵が一斉に突撃の態勢をとった。
まさに、数万の暴力が空たちを押し潰そうとした、その瞬間だった。
(――遅い)
空は静かに右手を挙げ、指先を軽く鳴らした。
パチン、と乾いた音が広場に響く。
直後。
ステージの真下に控えていた近衛騎士団長の足元から、突如として禍々しい漆黒の魔力が噴き上がった。
「ぐっ……!? な、なんだこれは……!」
騎士団長が声を上げる間もなく、その身体は全身を黒い呪詛の鎖で縛り上げられ、地面へと崩れ落ちた。さらに、広場のあちこちに配置されていた精鋭兵たちの足元からも次々と黒い魔力が湧き出し、数万の軍勢が一瞬にして身動き一つ取れなくなったのだ。
ドォン! と、地響きのような重圧が広場全体を押し潰す。
数万の兵士たちが、まるで鉛の塊を背負わされたかのように、次々とその場にひざまずいていく。
「なっ……何をした……! 我が精鋭たちが、なぜ動かん……!」
ステージの上で、バルバロスが冷や汗を流しながら巨大な仕込み剣を抜いた。その屈強な巨体ですら、空から放たれる圧倒的な「死の重圧」の前にわずかに震えていた。
「驚いたかい?」
空は冷ややかに微笑みながら、一歩、また一歩とステージへと近づいていった。
数万の兵士がひざまずく中、彼の足音だけがカツン、カツンと冷たく響く。
「君たちがこの観兵式を準備している間にね、王宮の主要な防衛陣地、魔導炉心の制御回路、そして君たちの私邸の地下に至るまで、僕たちの『黒い魔力』をすでに張り巡らせておいたんだよ」
空がステージの階段に足をかけた。
「つまり、この王都全体が、僕の手のひらの上にあるということさ。君たちがどれほど大軍を集めようとも、どれほど偉そうな肩書を持っていこうとも……生死の決定権を握っているのは、僕一人だけなのさ」
第一皇子レオンハルトは、恐怖で引きつった顔のまま玉座から転げ落ちるように後ずさった。
「ば、化け物め……近づくな……! 私はこの国の皇子だぞ……!」
「皇子だろうと何だろうと、我が家の邪魔をする害虫に変わりはないよ」
空の瞳の奥で、底知れぬ黒い光が妖しく輝いた。
大観兵式という名の断罪の舞台は、いまや完全に影の貴公子による独壇場へと変貌していた。
第15話をお読みいただき、ありがとうございました!
大観兵式の場で待ち構えていた第一皇子と最高大将軍の罠。しかし、主人公・空は王都全体に巡らせていた「黒い魔力」で数万の軍勢を圧倒し、一瞬にして形勢を逆転させる圧巻の無双劇となりました!
次回、いよいよ追い詰められた権力者たちに下される、容赦なき最後の裁きとは――?




