第12話:国境の鎮圧と、裏切り者への宣告
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敵陣の奥深くで帝国の特務指揮官を瞬殺し、連合軍の総司令官を恐怖のどん底に叩き落とした主人公・空。
国境の危機をたった一人で鎮圧した少年は、いよいよ全ての元凶である王国内部の裏切り者へと矛先を向けます。
影の貴公子の容赦なき制裁劇を、今回もぜひお楽しみください!
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国境の要衝ザッソウの周辺に広がる敵連合軍のキャンプは、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄へと変わっていた。
数千の兵力を誇り、モクモク王国を内部から崩壊させようと息巻いていた連合軍の総司令官は、今や地面に這いつくばり、目の前で特務指揮官が無残に倒れ伏す姿を見て、恐怖で完全に正気を失っていた。
「ひっ……! 待て、殺さないでくれ……! 望むなら何でも出す! 金も、地位も……!」
将軍が情けない声を上げながら、泥まみれになりつつ後ずさる。
だが、空の瞳には冷酷なまでの無機質な光しか宿っていなかった。
「金や地位に興味はないね。我が国に牙を剥き、無用な血を流させようとした者たちに、慈悲をかける理由もない」
空が静かに手を振るうと、黒い魔力の刃が音もなく空気を切り裂き、将軍の意識を永遠の闇へと沈めた。
指導者を失った連合軍のキャンプは大パニックに陥っていた。指揮系統は完全に麻痺し、闇夜の中から突如として現れる「目に見えない死の気配」におびえ、兵士たちは武器を捨てて四散するように逃げ出していく。
誰も追いはしない。追うまでもなく、この軍勢は二度とモクモク王国に脅威を与えることはできないほどに瓦解していた。
空は静かにその光景を見渡し、低く息を吐いた。
「さて……国境の害虫はこれで掃除完了だ。次は……王都で待つ、もう一匹の毒蛇の番だな」
同じ頃、モクモク王国の首都にあるグレアム侯爵の私邸。
深夜の重厚な執務室で、グレアム侯爵は冷や汗を流しながら、机の上で激しく震える手でワイングラスを傾けていた。
(連絡が途絶えている……。国境の連合軍が進軍を開始したはずなのに、あそこからの報せが一切届かない。それに、あのガキの言葉が……)
数日前の王宮の晩餐会で、空から浴びせられた冷徹な宣告。
そして、その際に心臓の周辺へと植え付けられた「見えない呪いの気配」。
初めは若造のハッタリだと思い込もうとしたが、日増しに強くなる胸の締め付けと、全身を這い回るような悪寒が、それが本物の死のカウントダウンであることをグレアムに嫌というほど思い知らせていた。
「お父様、夜分遅くに失礼いたします」
突然、密閉されたはずの執務室の扉が軽く開いた。
「ひっ……!」
グレアムは反射的に飛び上がり、持っていたワイングラスを床に落とした。赤茶けた液体が美しい絨毯に広がり、ガラスの砕ける音が静まり返った部屋に虚しく響く。
そこに立っていたのは、誰も入ることを許されていないはずの部屋に、いつの間にか足を踏み入れていた一人の少年だった。
漆黒の外套をまとい、冷ややかな黒髪の隙間からこちらを見据える、連才空その人だった。
「き、貴様……いつの間に……! 衛視はどうした!」
グレアムは引きつった声を上げながら、背後にある壁の飾り剣に手を伸ばそうとした。
だが、動くことは許されなかった。
空がわずかに指先を動かした瞬間、部屋全体の空気が凍りついたかのような強烈な重圧が走り、グレアムの身体を椅子へと無理やり押さえつけた。
「無駄な動きはやめるといい。君の屋敷の護衛たちは、全員すでに外の冷たい空気の中で眠っているよ。もちろん、永久にな」
「なっ……! ば、馬鹿な……我が屋敷の精鋭たちが、音もなく……!」
グレアムは恐怖で顔を青ざめさせ、全身をガタガタと震わせた。この少年の前では、どれほど権力を持とうとも、どれほど金を積もうとも、自分の命があまりにも無力であることを思い知らされる。
空は静かに歩を進め、グレアムの目の前にある机に両手を突いた。その黒い瞳は、底知れぬ深淵のように冷たかった。
「国境の連合軍は壊滅したよ。君がスズメスズメ帝国と結んで流した機密情報も、すべて無駄骨に終わった」
「そ、そんな……馬鹿な、あそこは大軍が……!」
「大軍だろうが何だろうが、我が家の邪魔をする者はすべて排除する。それだけの話だ」
空は微かに微笑み、しかしその声の温度は氷点下を下回っていた。
「さて、グレアム侯爵。君に一つ聞いておこうか。我が連才家を裏切り、国を売り渡した黒幕は、君一人かい? それとも、他にもまだ『仲間』がいるのかな?」
「わ、私は……っ! 私はただ、この国の将来を考えて……!」
「言い訳にすらなっていないね」
空が指先を軽く立てると、グレアムの胸元――心臓のあたりから、黒い呪詛の魔力が微かに表面へと浮き上がってきた。
「ぐあっ……! は、息が……!」
グレアムは両手で自分の胸を押さえ、苦悶の表情で床へと崩れ落ちた。心臓が締め付けられ、血管の隅々にまで冷たい毒が回っていくような強烈な苦痛が全身を襲う。
「命乞いをする権利は、初めから君にはないんだよ」
空は見下ろすように冷ややかに告げた。
「この呪いはね、君が真実をすべて吐くまで、ゆっくりと、心臓の動きを止めていく。どちらを選ぶかは君次第だ。すべてを話して楽に死ぬか、それとも苦しみ抜いてその醜い命を終えるか」
グレアムの瞳に映るのは、恐怖、絶望、そして逃れられない死の現実だけだった。
王国の高官として権勢を誇った男の末路は、暗殺稼業の少年の手のひらの上で、ただ無残に崩れ去ろうとしていた。
第12話をお読みいただき、ありがとうございました!
国境の敵軍を単身で圧倒し、瞬く間に鎮圧した空。その足で王都の裏切り者であるグレアム侯爵の元へと乗り込み、容赦のない「死の制裁」を下す緊迫の展開となりました!
次回、グレアムから語られるさらなる王国の闇と、物語の新たな局面へと突入します!




