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『戦火の絶えぬモクモク王国で、暗殺稼業の成り上がり貴族の長男に転生した(※生まれながらの裏切り者)について』  作者: 凪塩 未来


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第10話:動き出す毒蛇と、国境の嵐

第10話をご覧いただきありがとうございます!


グレアム侯爵に直接宣戦布告を行い、王国内部の裏切り者を追い詰めた空。しかし、追い詰められた毒蛇が仕掛ける最後の一手は、モクモク王国全体を巻き込む大規模な陰謀へと発展していました。


緊迫感を増す政治の駆け引きと、影の貴公子の冷静な判断力をお楽しみください!

ブックマークや評価での応援も、引き続きよろしくお願いいたします!

連才家の豪邸に戻った空は、自室の窓辺で静かに夜空を見上げていた。

王宮の晩餐会でグレアム侯爵の心臓周辺に仕込んだ「黒い魔力の呪い」は、彼の生命力を少しずつ、しかし確実に蝕んでいる。いつ暴発させるかも、どのような苦しみを与えて命を奪うかも、すべては空の指先一つにかかっていた。


(グレアムはもう追い詰められた。だが、あのような臆病な老人が、単独でここまで大きな陰謀を仕切れるわけがない)


背後には、スズメスズメ帝国の影と、暗殺ギルド『黒曜の巣』の総本山がある。

追い詰められた裏切り者が次に取る行動は、自首でも逃亡でもなく、「すべてを破壊するための狂気的な一手」に違いなかった。


コン、コン。

静かなノックの音とともに、扉が開き、側近の影から一通の急報を持った使いの者が入ってきた。


「若君、一大事でございます」

「何があった」

「国境沿いの要衝……ザッソウの街の近くで、隣国ペコペコ王国およびマケマケ王国の残党軍が、突如として不可解な大軍を結集させ、侵攻の構えを見せているとの報が入りました」


空の眉間がわずかに動いた。

「残党軍、だと? 二大王国の首魁を葬り、ペコペコ王国の特務騎士団長も失ったはずの連中が、これほど短期間で大軍を再編できるはずがない」


「はっ。それが……彼らを束ねているのは、かつて滅びたとされていた周辺国の皇族や、謎の傭兵団です。しかも、彼らは我が国の防衛網の『死角』、つまり通常ではありえないほど正確に警備の薄いルートを突いて進軍しているとのことです」


(防衛網の死角……正確なルートの漏洩)


答えは一つしかなかった。

王国内部の裏切り者――グレアム侯爵、あるいは彼に連なる一派が、モクモク王国の軍事機密や国境の配置図を敵国に売り渡したのだ。自分が追い詰められたことで、毒蛇は国そのものを売るという最大最悪の手段に踏み切ったのだった。


地下の密談室。

地図の広げられた机を囲み、当主である父親と空の二人が険しい表情で向き合っていた。


「愚かなことだな」

父親は冷ややかに鼻で笑ったが、その瞳の奥には歴戦の猛者としての殺気が渦巻いていた。

「我が連才家が影で血を流し、このモクモク王国を何十年も守り抜いてやったというのに、権力欲に目が眩んだ老いぼれが、敵国を引き入れて国を売り渡すとは」


「予想していた最悪のシナリオの一つですが、まさかこれほど露骨に動くとは思いませんでしたね」

空は冷静に分析を続けた。

「国境が突破されれば、我が家のこれまでの功績も、王国の平穏もすべて瓦解します。……父上、僕を国境へ向かわせてください」


父親はわずかに目を丸くし、それから満足げに深く頷いた。

「ほう、お前が自ら赴くか。敵の本隊を直接叩くつもりだな」


「はい。軍同士の正面衝突に任せていては、無駄な兵士の血が流れるだけでなく、敵の首謀者を取り逃がす可能性があります。国境の要衝に潜り込み、敵軍を率いる首魁を暗殺する――それが、我が一族の最も得意とする手法です」


「いいだろう」

父親は机に置かれた特製の短剣を一本取り、空へと手渡した。

「我が息子の冷徹な腕前を、あの愚か者どもに見せつけてやりなさい。ただし、過信するなよ。スズメスズメ帝国の息がかかった傭兵団の中には、厄介な異能の使い手も混じっているという噂だ」


「ご心配なく。僕の邪魔をする者は、神であっても排除します」


空は短剣を受け取り、静かに頭を下げた。

王国の危機、そして裏切り者への復讐を兼ねた新たな任務が、こうして幕を開けた。


数時間後。

モクモク王国の首都を発った一頭の黒馬が、漆黒の闇の中を疾駆していた。

馬上の人は、十二歳の少年・連才空。


国境沿いの街・ザッソウの周辺は、すでに臨戦態勢の喧騒と、不気味な静けさが入り交じっていた。丘陵地帯の向こう側には、敵連合軍のキャンプファイヤーの炎が無数に揺らめいている。その数は数千、あるいはそれ以上。圧倒的な物量差が、モクモク王国内部の防衛網を脅かそうとしていていた。


空は馬を安全な森の隠れ家に繋ぎ止めると、自らの身体に黒い魔力を纏わせ、完全に気配を消しながら敵陣の方向へと歩き出した。


(国を売った裏切り者への最初の挨拶としようか)


夜風が冷たく吹き抜ける中、少年の瞳の奥で、底知れぬ黒い光が妖しく輝いた。

戦火の足音が迫る国境の夜で、影の貴公子による静かなる粛散劇が、今、始まろうとしていた。

第10話をお読みいただき、ありがとうございました!


裏切り者の手によって国境へと引き入れられた敵連合軍。モクモク王国最大の危機に対し、主人公・空が自ら国境へ赴き、敵の首魁を闇から葬るための出撃を行いました!

次回、いよいよ敵陣への潜入と、圧倒的な暗殺劇が幕を開けます!

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