↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無才の俺の文字化け才能は、勝つたびに名前が変わる ~【諦めない】から始まる、天才百人喰いの成り上がり~  作者: 燈野いさり
第1章 文字化けの一文字目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/100

第9話 半人前同士

「解析、って……いいんですか? 相手は王族ですよ。手伝ったのがバレたら、フィナさんまで睨まれるかも」


「そこは考えました。一晩……じゃなくて今の五秒で」


「五秒」


「でも、あのですね。聞いてください」


 フィナは書きかけの鑑定書をカウンターに置いて、ぽつぽつと話し始めた。


「私の実家、代々鑑定士なんです。兄も姉も強い【看破】持ちで、王宮出入りの資格まで持ってて。私だけ雨漏りで。十六にもなって見習いで。……家でも店でも、私の見立てって、誰にも最後まで聞いてもらえたことがないんです。『フィナのは参考程度』って、途中で遮られて終わり」


「……」


「さっき、あなた、最後まで聞いたじゃないですか。それどころか『信じます』って言ったじゃないですか。……あれ、私、初めてだったんです。視えたものを視えたって言って、まるごと受け取ってもらえたの」


 フィナは、ぐっと拳を握った。


「だから、これは恩返しとかじゃなくて……証明なんです。私の【看破】は雨漏りでも、雨漏りは雨漏りなりに、屋根の穴の場所がわかるんだぞって。王都で一番大きな舞台で、証明したいんです。――半人前の見立てが、当てになるってこと」


 半人前の証明。


 ああ、それなら、話は早い。


「奇遇ですね。俺もなんです」


「え?」


「文字化けでも、決闘の舞台に立って、途中でやめなければ負けじゃないって証明したいんです。誰に頼まれたわけでもないですけど。……だから、俺たち、目的が一緒です」


 俺は右手を差し出した。


「よろしくお願いします、参謀」


「さ、参謀」


「あ、嫌でした? 軍師のほうがかっこいいですか」


「いや、参謀でいいです! 参謀がいいです!」


 フィナは慌てて俺の手を握った。握ってから、はっと真顔になった。


「……ちなみに確認ですけど、ロイさん、剣は」


「振ると飛びます」


「魔法は」


「才能がないので使えません」


「体術は」


「転ぶのは得意です」


「戦力ゼロじゃないですか!」


「はい。だから参謀が要るんです」


 フィナは頭を抱えて、天井を仰いで、それから、観念したように笑った。


「……いいでしょう。ゼロなら、マイナスにはならないってことなので。参謀フィナ、就任します」


   ◇


 その日の夕方、フィナは店じまいもそこそこに、奥の資料室から紙の束を抱えて戻ってきた。


 どさり、どさり、どさり。カウンターに三つの山ができた。


「王立年鑑、御前試合の興行記録、それと新聞の切り抜き帳です。うち、貧乏なくせに記録だけは捨てない主義なので」


「これ全部、王子様の?」


「王族の才能は『国の看板』なので、披露式典のたびに大々的に公表されるんです。アルディス殿下、三十七才能。全部、名前だけなら公開されてます」


 フィナは一番上の紙を広げた。


 びっしりと、才能の名前が並んでいた。


【剣聖】【火焔】【雷鳴】【俊足】【鉄壁】【威圧】【千里眼】【治癒】【剛力】【氷結】――


 読み上げていくフィナの声を聞きながら、俺は正直、途中で数えるのをやめた。一個一個が、下町なら英雄になれる才能だ。それが、三十七。


「……あの、参謀。今さらですけど」


「言わないでください。私も今、同じことを思ってます」


「これ、勝てるんですか?」


「勝てるわけないでしょう!」


 参謀は断言した。断言してから、人差し指を立てた。


「――『このままなら』、ですけど」


「?」


「いいですか、ロイさん。鑑定士の基本を教えます。才能は、書かれた通りにしか働きません。つまり才能は――」


「……仕様、だ」


 ガルド爺の煙管の煙が、頭の中でよぎった。


 フィナは、我が意を得たりと頷いた。


「そうです。仕様です。そして仕様書が三十七枚もあれば、どこかに必ず、矛盾か、抜けか、穴がある。八日で、それを見つけます。――今夜から、徹夜です」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。