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シーン3

客の流れが途切れた。

カウンターに座る。テレビではドラマをやっていた。主演は成人したばかりの女優だった。

「ココちゃん」と呼ばれ、オーナーが私に向けて片手を立てているのを見る。

カウンターの離れた席でサキが頬杖をついていた。口が半開きになっている。

「今?」と声にしないで聞く。

オーナーが「今、暇だから」と口パクで返す。

息を吐くのを我慢する。立ち上がった。

「サキ、ちゃん」

サキに声を掛ける。サキの背筋が伸びた。

「はい。あの、すみません」

謝られた。

「サキちゃん、少し話せる?」

「話、ですか?え、怒られるんですか?」

首を振る。

「仕事の話」

サキを連れてロッカーの横の部屋に行く。面接の時に入った記憶がある。

二人向かい合わせで座った。

「サキちゃんは、こういう仕事は初めて?」

「はい、あの。ココさんは長いんですか?」

言葉が止まる。

家にいた頃を思い出した。

「長い、というのかな?」

「ココさんって、私と歳あまり変わらないですよね?」

「そうだね」

会話が止まる。サキが両手を振った。

「あ、何でもないです。すみません」

さっきから、すぐに謝られている。

サキの前に一枚の紙を置いた。

「最初に気を付けて欲しいのは」

「え、あの、ココさん?」

遮られた。

「これって、もしかして私に仕事のやり方を教えてくれようとか、してます?」

「え?うん」

「あ、ちょっと。待って下さい。紙とペン持ってきますから」

慌ただしく椅子から立ち上がる。サキの手首の赤みは消えていた。

ペンを持って戻ってきたサキは「お願いします」と頭を下げた。

「お客さんと会った時は視線を合わせてから笑う。他には」

紙の文章をなぞりながら話していく。

サキは私に頷き、短く質問を挟み、前のめりに聞いている。

「ありがとうございます。紙まで用意してくれて」

サキがまた頭を下げる。馴染みのないシャンプーの匂いがした。

「私、不安だったので、こういうの凄く嬉しいです」

「これ、もらってもいいですか?出勤前に読むようにします」

サキの連続の質問に「あ、うん」と返す。

「何か私、お客さんとうまく話せなくて。人見知りもあると思うんですけど」

「お客さん?」

「え?」

「人と思わなくていいんじゃない?」

サキの目に私が映った。私と目線が合う。

最初は小さく笑っていたが、やがて笑顔を消した。

「ココさんって面白いですね」

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