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シーン2

シーン2


ボーイが私を見つめている。視線の先を確認する。

制服に皺と汚れが付いていた。

ロッカーに向かう。女の子がいた。長い黒髪の子だった。

無言で着替える。

その子は制服を手に取り、袖を通し、また脱ぎ、「何これ?」と呟いている。

数分後に「あの」と声を掛けられた。振り向く。制服は着れたみたいだが裾が少しズレている。

「なに?」

「サキって言います。よろしくお願いします」

頭を下げられる。

「ココです」

ロッカーを出る。

目が大きい子だった。

ロビーでは客が食事をしている。指名が来る気配は無かった。

カウンターに背中を預け、壁のテレビを観る。

同い年くらいの女の子が自分のお腹を撫でながら笑っている。マタニティのCMだ。

「成人して、すぐか」

ロビーからポツポツと声が響く。

結婚、妊娠のCMが多い。前に客が国のやり方だと言っていた。

客の一人がボーイを手招きした。ボーイが頷き、お辞儀する。

ロビーの小さなモニターに私の名前が表示される。

客に近付く。笑顔を浮かべ個室に案内する。CMの子の顔が脳裏に浮かんだ。

客は個室に入ると押し倒してきた。

短く声が漏れる。

体がベッドにぶつかった。

息が近い。

制服が引っ張られる。

「今の国ってさ、十六から成人だよな?」

「良いよな、若いってだけで」

「お前ら女はさ。産む以外に価値あんのかよ」

客は唇を噛みながら吐き捨てた。

体の揺れとベッドの音が耳に入ってくる。

天井を見つめた。白い天井に黄ばみが混じっていた。

客と目が合う。顔を赤くした。

「舐めやがって」

揺れが激しくなる。やがて止まった。客が耳元で呼吸を繰り返している。

客の頭を撫でた。客が抱きついてくる。暑い。

「ごめん」

謝られた。意味が分からない。撫で続けた。

客を見送る。客は何度も頭を下げながら店を出ていった。ロビーに戻ろうとする。サキも他の部屋から出てきた。

黒髪が揺れる。客の背中を追うように歩く。目は最後まで合わなかった。

オーナーが店の奥から私に手招きしている。

「ココちゃん」

「はい」

「サキちゃん、まだ流れ分かってないから教えてあげて」

「え?」

オーナーが顎を前に動かす。サキが客の後ろ姿に短く手を振っていた。

「新しい子なんだけどさ。流れとか詳しくないだろうし」

サキが小走りで店の奥へ去っていく。

手首には赤い跡が出来ていた。

「私が、ですか?」

「最低限の説明しかしてなかったからさ。頼むよ」

オーナーから目を逸らす。

壁に女の子の写真が飾られている。サキの写真が私の一つ下にある。

「私で参考になります?」

茶色に染まった前髪を触る。

隙間から見えるサキの写真が私の写真より一回り大きく見えた。


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