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シーン1

あなたは表情がない子だね。

普通が分からない?

なら客の前では笑いなさい。

仕事を教えてくれた人には、そう言われた。

「ご指名ありがとうございます」

私は客の前に笑顔で立ち、お辞儀をする。

指名してくれた客を個室へ案内する。

ドアを開ける。

テーブルとソファー。その奥にはシャワー室とベッドがあった。

「君、 ここ長いの?」

個室に入ると、客はソファーに体を沈めていた。 興奮しているのか、鼻息が少し荒い。

「そんなに長くないです」

「そうなんだ、可愛いね」

私の手に遠慮なく触れてくる。

「ココちゃん、手スベスベだね」

客の手は、少し汗ばんでいた。

撫で終わるのを待って、手を引っ込める。

客が私の顔を覗き込む。 ソファーが軋んだ。

「ね、そろそろいい?」

「何がですか?」

「生でしたいから、ね?いいでしょ?」

客は私から目を逸らさない。

中腰になり、鼻息がかかる。

少し脂の匂いがした。

客は急ぐように財布を開き、万札を差し出してくる。

私は両手で受け取った。

万札にお辞儀をする。

「じゃあ、シャワー行きましょう」

客に手を伸ばす。

ニヤニヤしたまま、私の腕をつかんだ。

シャワー室に入る。

客の手が私の体を触る。

洗った後、押し倒された。

客は何かを褒めていた。

声が出た。

録音した私の声を流しても、きっと客は気付かない。

時計を見る。

シャワーを一緒に浴び、服を着る。

客をロビーまで見送った。

客は軽く手を振り、店を出ていく。

笑顔でお辞儀をする。

姿が見えなくなる。

その瞬間、笑顔を消した。

「ココさん、お疲れ様です」

ボーイがロビーのテーブルを拭きながら声を掛けてくる。

ロビーでは、食事をしながら女の子たちを眺めている客が数人いた。

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