第九十七審 『My Pride』
失踪です。
本日も遅刻、ついさっき書き終わりました。
そいつは嘲るようにそう発したと同時に、腕を振り上げる。
すると、瞬く間に床に花畑が形成されていく。
それも、先程までのような小さな集合ではない。
軈て姿を現したのは、床一面……全てを覆い尽くす程の花畑。
唯一僕の足元を除いて、一切の足の踏み場が無くなってしまった。
「さて、君はどう出る?」
煽るように問いかけるイザナギから視線を外し、再度周囲を見渡す。
この戦いを制するには、とにかく僕が隙を伺って距離を詰めるしか残されていない気がするのだが、これでは身動きの取りようがない。
ルナが言った通り、この間合いでは明らかに僕に不利がついてしまう。
なにか、解決策は……。
『ハルサ!手を挙げな!!』
その声、言葉には聞き覚えがあった。
『その手があった』、そう思わずにはいられない程の。
迷わず刀を握っていない方の手を挙げると、即座に腕には鎖が絡みつき、そのまま僕の体を軽々と持ち上げてしまう。
振り子のように重さを利用して勢いづいた僕の手から鎖が解け、放り出された僕は何度目か、刀を振りかざして斬撃を打ち出した。
先刻、あいつは斬撃を結界で受け止めようとしなかった。やはり、そうしたくない理由があるのだろう。
今放たれたこれを防御せず回避しようとするなら、一度大きく移動するか、先程のように結界を解いて、斬撃を受けられない範囲を減らすかの二択になる。
しかし、それらは僕に隙を晒すことと同義。
速度からして、僕自身よりも斬撃の方があいつの元には早く到達する。
つまり、ここで結界を解除する選択を取ってしまうと、再展開に時間を要し、続いて迫る僕の攻撃を防ぎきれない可能性が出てくる。
なら移動を選択するべきか、と言われればそうとも言いきれない。
あのテラスは、一対一で戦う分には少し狭いくらいなのだが、結界を展開したまま、この斬撃から逃れるために大きく移動できるほどの広さは確保出来ていない。
とは言え、濃い線は後者。この状況で結界を解除するとはとても思えなかった。
こいつが次にとる行動は、場所を移動するか、もしくは……。
「そう来たか……!!」
そこで目に入ってきた光景に、僕は思わずそう零した。
イザナギがとった選択肢は、結界の解除でも、場所の移動でもなかった。
僕の放った斬撃は、展開された結界に衝突して、すぐにでも突き破ろうとそれを削っている。
そう、こいつは『斬撃を結界で受け止める』選択肢を取ったのだ。
最初の段階でほとんど切り捨てていた可能性だったが、本人なりの思惑があるのだろうか。もしくは、追い詰められて判断力が低下しているのか。
続いて着地した僕も、展開された結界に刀を突き立てようと振り下ろした。
二方向からの攻めを受け切ろうと、必死に結界を支え続けるイザナギだったが、流石に耐えかねたのか、取っていた構えを変更する。
すると次の瞬間、纏っていた結界が消失し、せき止められていた斬撃がそいつの首元を切り裂いて通過していく。
同時に力をかけていた僕の刀も回避され、空を切るが、これを待っていたかのように一度体を旋回させる。
そのままの勢いで放たれた蹴りがイザナギに直撃。回避するために体を傾けていたこともあり、テラスの枠の外へ吹き飛んで行った。
後を追うように飛び降りて着地し、地面を転がり、起き上がろうとするそいつに再度距離を詰めようとするが、足元に異変が生じる。
「近寄るな……!!」
顔を上げて、僕がいる方向に手のひらを翳すと、そいつの居場所から扇状に一気に花々が広がり、僕の足元はそれに飲み込まれた。
お楽しみいただけましたか?
次は14時に投稿できるといいんですけど。
では、また次回。




