第九十三審 『ボルテックス』
失踪です。
このペースで書いてたら毎日投稿途切れちゃいます。
パキッ──────。
その詠唱の直後、今まで聞いたこともないような音が響いた。
気づけば僕は、一瞬のうちに目の前に迫った電撃を本能的に回避していた。
最早反射的というレベルではない。無意識のうちに体が、これには当たってはいけないと判断していたのかもしれない。
再びそいつに視線を戻すと、片方の手のひらを僕の方に向けたまま、その手は黄色い光を纏っていた。
これに当たって、戦い続けられる自信はない。
かと言って、今のはたまたまだっただろうが、避けようとして避けるのは至難の業だ。
「……避けるか、これを」
そう言うそいつから再度攻撃を放たれる前にと、数回に渡って大きく刀を振るって斬撃を打ち出した。
しかし、直撃する寸前で避けられてしまう。
軽々と回避するやつが多いため感覚が麻痺しそうになるが、僕が打ち出す斬撃はかなり速い。
それこそ、確認してから避けるのは至難の業に他ならないだろう。
軽々と回避されていいものでもない気がする。
再度動き出そうとした僕の視界に入ったのは、見覚えのある構えをとるそいつの姿。
ハッとして咄嗟に体を捻る。
直後、僕の真横を通過した稲妻。
何かが弾けるような音が聞こえ、焼けこ焦げたような匂いが漂い始める。
同時に、一部が焼け焦げた髪が周辺に舞う。
対抗するように刀を振り上げて斬撃を打ち出すと、その末端がそいつの腹部に接触して通過。同時にそこから血が飛び散った。
一瞬、そいつの表情が歪んだ気がする。
今だ、と感が囀ったような気がした。
速度を上げ、一気に距離を詰めて刀を振るおうとした時、そいつの手元が僅かに輝いたのに気がつく。
だが、気づいた時にはもう遅かったのだろう。
刹那、激しいフラッシュと共に僕の脇腹に強烈な痛みと、衝撃が迸った。
意識が飛びそうになるが、ここで倒れる訳には行かない、と、全力で歯を食いしばって持ちこたえる。
既に振り上げられていた刀を力任せに振りかざし、そいつの胴体を肩から脇腹にかけてを一気に切り裂いた。
手応えは……薄い。刃は比較的浅い位置を通過したのだろう。
旋回し、胸元に僕の蹴りが直撃したそいつは吹き飛び、地面を転がった。
周りの地面には血が飛び散り、足元には血溜まりが形成されていく。
僕も先程攻撃を食らった箇所を触って確認してみるが、血は出ていないようだ。
だが、服には穴が開き、抉られた患部からは白煙が漂っており、真っ赤に変色して質感も変化している。明らかに無事ではない。
恐らく、血が出ていないのは余りの高音で肌が焼けてしまったから。血が蒸発し、傷口が塞がってしまったのだろう。未だにかなりの痛みが続いている。
屈んだまま息を整えようとするそいつを目の当たりにしながら、そんなことを考えていた。
こう言った相手と長期戦をすると、疲労が蓄積したところに攻撃を加えられる可能性が増加していくため、時間が経つほど不利になっていくと考えられる。
必要になるのは、やはり早期決着。
幸いなことに、今の段階で体を治療しているような様子は見えないため、そう言った異能力などは持ち合わせていないと見ていいだろう。
得られるリターンの大きさを考えるとすれば、捨て身で攻撃を仕掛けるという行為にも正当性が生じる。
なら……。
それなら……。
今の僕は冷静じゃないかもしれない。
しかし、今の僕にはこれ以外にこの状況の打開策が思い浮かばなかった。
ゆっくりと再度立ち上がるそいつの姿を一点に見つめながら、僕は決意を固める。
普段の僕なら、こんな戦い方は絶対にしない。
これは、実質的な『僕』から学んだ戦い方だ。
お楽しみいただけましたか?
一切予定のない日が全然なくて。
では、また次回。




