第九十審 『パズルピース』
失踪です。
投稿時間の都合上夜中に準備してるので眠気がやばいです。
吹き荒れる風、打ち付ける雪が、今この瞬間も体温を奪い続ける。
「ハァ…………ハハッ……」
漏れ出るように零れた彼女の笑いが、警戒を続ける私の不安感を煽る。
地面についていた手をコンクリートをも削り取る程の力で、引っ掻くように握りしめ、手元に収まっていたナイフを持ち上げた。
前髪で彼女の表情は翳り、しっかりとは確認できなかったが、明確に口角が上がる。
「何を—————」
何をするつもりだ、と言い切る間もなく、それは行動に移された。
逆手持ちに切り替えられたそのナイフは、人の温度を失った自身の腕に突き立てられる。
一撃で周辺部位はバラバラになり、腕だったものが飛び散り、患部からは血が流れ始めた。
何度もナイフを振るい、軈て腕の大部分が消失した時、彼女はゆっくりと立ち上がり、尚も笑みを浮かべ続ける。
「ハハ……びっくりした?」
そう言うと、先を失った腕の周りに、流れ出た血液が渦巻き始める。
数秒もしないうちに砕け散った自身の肉体の破片が渦の中に取り込まれていき、再度腕のような形を象った。
見た目は血液そのものが腕の形をしているだけのようだが、しっかりと動作している。
しかし、それは見るからに焼き付け刃。
パズルを無造作に押し固めて糊付けし、『完成した』と言い張っているような状況だ。
あれで動作が許されているのがまるで理解できない。
「……さぁ、続きをやろうか……!!」
彼女は地面に転がっていたナイフを拾い上げ、前髪をかき上げながらそう私に告げた。
ℵ
月明かりだけが照らす建物内に響くのは、吹雪の音、駆ける自分の足音と息遣いだけ。
あの後、アウトレイジはアカネとファントムが引き受け、僕は先へ進むように促された。
相手は七聖。一人で戦うのは流石に無謀だと判断し、その上で全員ここに留まるという選択肢は無かったため、屋内で動きやすい僕が消去法で選出された。
今のところ人の気配は無い。
この件の首謀が領主であるなら、用心棒を内部に配置していてもおかしくはないと思うのだが。
軈て、天井が高く、円形の広間のような場所に辿り着いた僕は足を止め、一度周囲を見回す。
観光名所と言われるだけあり、多くの展示物が並んでいるが、これといって気になる部分は無い。
目線の先には、上の階へ続く階段が伸びている。
オルタが言うには、最上階が目的地だ。
予定よりも早い到着とはいえ、休んでいる暇はない。僕らを頼ってきた本人の姿がまだ無いことが気がかりだが、急ぐことにしよう。
歩き出すと、再びうるさいくらいに自分の足音が反響し始める。
「待ちな」
直後、何者かの声が建物内に反響。
足を止めた僕は、段々と近づいてくる誰かの足音に身構えた。
「……噂の奴だな。リーダーの読みは正しかった訳だ」
前方から人影が現れ、軈てその姿を現す。
黒く統一された装い、ガスマスク、黒いメッシュがいくつか入った赤い髪。
見覚えは……ない。
「仲間が世話になったな。俺の名前は『ライトニング』。Rebellionのオペレーターだ」
仲間が世話になった、Rebellionのオペレーター……と聞いて、真っ先に思い浮かべたのは、やはり『あれ』だった。
「遊撃部隊……」
「なんだ、知ってんのか」
そう言いながら、ライトニングと名乗ったそいつは赤い刀を鞘から引き抜く。
「俺がここにいる理由は説明しなくても分かんだろ。来るなら来い。俺が相手だ」
刃先をこちらに向けられ、僕も鞘に収まったままの刀に手をかける。
タクト曰く、遊撃部隊には強者が揃っている。
僕が戦った女もそうだが、オルタもかなり面倒な異能力を持っているように見えた。実力共に、それらと同等レベルだと考えていいだろう。
つまり、少なくとも手を抜いて勝てる相手ではない。
柄を握り、一度深く深呼吸をした。
「『妄執』……『喪失』……『果たされぬ過去との調和』……」
ゆっくりと顕になる刀身と鞘の隙間から、紫色の光が溢れ出し始める。
「力を……貸してくれ……!!」
お楽しみいただけましたか?
スカーレッドは正直強くしすぎた側です。
では、また次回。




