第八十三審 『聖霊術師』
失踪です。
予定が詰まりすぎて休みがないです。大変ですね。
「ここからどのくらいかかるんですか?」
「一時間もかからない……と言いたいところだが、昨今の騒動と雪の影響で交通機関がほぼ死んでいる。徒歩で向かうとなると二時間と数十分くらいだ」
「お前はこの場所に行ったことがあるのか?」
「あぁ、ある。何せここは領主の家系の持ち物だからな。とはいえ、最後に行ったのはもう年々も前になるが」
「先程時間がないと言っていたが、急がなければならない理由が何かあるのか」
「それもイエスだ。この計画には明確にデッドラインが存在する」
そう言うと、再びマーカーを走らせ始める。
「明確な時間はわからない。だが、遅くても日付が変わる時間がタイムリミットだ」
「それを過ぎるとどうなる?」
「少なくとも、この島国の大半の領土が消し飛ぶだろうな。勿論、確実に命はない。俺も、お前らも、この領土に滞在している者全員」
「なら、領主の目的はこの島国の人口を一気に削ることだったりするのか?」
「それは違う、逆だ。あいつはそれを食い止めようとしている」
「だとすると、領民がここにいなければならない理由は無いように思えます。何故、領主は民を避難させないのでしょうか?」
「さぁな。俺にもあいつの考えは理解できない。だが、想定される被害がここまでの規模になるなら、避難は意味をなさないと考えるのも自然ではある。この状況で避難を呼びかけても混乱を招くだけだと考えたのかもな」
ふと何かを思い立ったように戸棚を探った彼の手には、何かが書かれた紙が握られていた。
「オルタ、それはなんだ?」
「さっきも言った通り、あの天文台は観光名所なんだ。観光客向けにこういう物も作られてたんだよ」
それを開いて眺めながら、何かをホワイトボードに書き記していく。
彼が書き終えて手を止めた時、描かれたそれは地図であることが一目で分かった。
「入り口は南北に合計二つ。あいつがいる場所は最上階の大広間、及び展望台。普段は立ち入り禁止となっているが、今回ばかりはそんなこと気にしている暇はない。到着し次第、俺たちは二手に分かれて南北から侵入。天文台の内部では恐らくあいつが手配した刺客が行手を阻んでくるだろう。もし接敵したら、そいつを始末することではなく、絶対に先に進むことを優先しろ。さっきRebellionは領主の計画を利用しようとしていると言ったが、直接的な協力関係には無い。とは言え、細心の注意を払ってくれ。天文台に向かう道程のどこかで妨害が入るのは安易に想像できる」
「お前が僕らと行動しているところを仲間に見られたりしたら、裏切ったと思われるんじゃないのか?」
「それは大丈夫だ。俺は現地までは別行動で向かわせてもらうからな。そこに関しては気にしなくていい。天文台の場所は分かるか?」
「任せな。案内出来るから」
それまで、椅子に座らず立ったまま口を閉ざしてただ話を聞いていたファントムが声を上げる。
「なら、早いとこ出発しよう。次会うのは天文台で、絶対に間に合わせてくれ」
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家を出ようと準備を進めていた時、唐突に僕の端末から着信音が鳴り響いた。
画面を確認すると見知った人間の名前が表示されている。
「すまん、電話だ。すぐ戻る」
「急げよ」
こちらに目もくれず、短くそう言ったオルタの元を後にして、電話に応答する。
「ハルサだ。どうしたんだよ、こんな時間に」
『ハルサ!良かった、繋がった。そっちの領土で起きた騒動の話、聞いたからさ、ちょっと心配してたんだよね』
変わらない様子のフレアの声が、煩いくらいに聞こえてくる。
『そっちの人達は元気そう?』
「え?あ、あぁ……」
返答に困り、適当に濁した。
僕らはともかくルナの安否は不明だ。
まぁ、今からそれを確かめに行くところなのだが。
「で、なんの用事があって電話なんかかけてきたんだ。どうせ、そんなことを言うためじゃないだろう」
『そうだった、忘れてた。最近、私の聖霊がいなくなっちゃったんだよね。もしかしたらそっちの誰かに着いてっちゃったんじゃないかと思って』
聖霊は僕も知っている。光り輝く色の着いたオーブのようなアレだ。
僕の手元にいる風見の聖霊は、最近姿を見せてくれないが、今回も連れてきてはいる。
「聖……霊……」
そう呟いた時、ただ壁を眺めていた僕の視界に、何かが漂って映り込んできた。
それは赤く輝き、手を翳してみると、僅かに暖かみを感じられる。
「……いる」
お楽しみいただけましたか?
思ったよりやばい状況ですね。
では、また次回。




