第八十一審 『悪魔と踊る』
失踪です。
展開の節目。
ここから、なろうでの活動を開始してから書いたものになります。
「なるほど……では、あなたは差出人不明の依頼を受理し、指定された場所に向かった。そこに突然現れた、『理聖』である『ドゥーズデイ』の異能力によってこの領土内に転送され、宛もなく歩き回っていたところを居酒屋の店主に拾われ、数日間の間は店の中で寝泊まりしていたと」
「そうなるな。肝心の店主が今どこにいるのかは分からないが」
あの後、僕らは雲間から覗き始めた夜明けから身を隠すように、人気のない商店街に訪れていた。既に日は上っているが、まだ店は全て閉まっているようだ。
「私たちのような人間を匿っていたばかりに、処罰の対象となってしまったのかもしれませんね。まだ生きているといいのですが……。それと、あなたが受理した依頼はそれそのものが罠だった可能性が高いでしょう。あなたは誘い出されたのだと思います」
「そもそも、僕らはなんで追われているんだ」
「詳しくは分かりません。ですが、昨今のRebellionが巻き起こしている騒動が関連しているものと思われます。ファントムさん曰く、追ってきている組織はRebellionではないらしいので、その場合、第三勢力が介入してきたことになりますね」
「私たちが一時的に放り込まれていたあの場所は、領主直接の管理下にあった収容施設だ。であれば、その第三勢力はノーヴェル領で言うところの近衛隊のような勢力なんじゃないのか」
少し離れた場所で周囲を警戒していたアカネの声が響く。
「同感です。なので、ルナさんは領主が保有する他の施設に隔離されているか、もしくは……」
「『手元』に置かれている可能性が高い……か」
「ここの領主は、どのような目的でこの地を訪れていようが、外部の者であるという事実は変わらないと考えているようですね。だからこそ私たちとRebellionを同列に扱い、捕えたのでしょう。とは言え、ルナさんはこの組織のリーダーであるため、他にも収容者がいるような施設に送るとも思えません。それを踏まえると、可能性が高いのは後者。領主が最も管理しやすい場所に置かれているとは思うのですが、念には念を入れて、他の施設も調査したいですね。領主に関する情報も私たちはほとんど持っていませんし、手元に置かれている可能性を追求するにしても、まずは居場所を割り出すところからになります」
「その必要はない」
遮るように聞こえてきた何者かのその言葉と同時に、薄暗い商店街の奥から唐突に気配が漂い始め、存在を誇示するように足音が響いた。
その声にはなぜか聞き覚えがある気がする。しかし、一体どこで……。
軈てその姿が差し込む朝日に照らされた時、その問いの答えが弾き出された。
「お前、あの時の……!」
丸く、色素の薄いサングラスに、紫色の髪。そして、闇に溶け込むような黒い服装。険しい表情を浮かべるそいつの顔を見た瞬間、『覚え』が確信に変わる。
「あぁ、『あの時の』あいつだ。その節は世話になったな」
「ハルサさん、この方は知り合いですか?」
彼は取り返したばかりの杖を手元に出現させると、僕より一歩前に出て、静かに警戒を強めた。
「知り合いというか、顔見知りだな」
言いながら、僕も刀に手をかける。
「ノーヴェル領領主奪還の際に、行手を阻んできたRebellionのオペレーターの一人。パラサイトの遊撃部隊の一員だ」
「ご紹介に預かった通り。俺の名前は『オルタ』、お前たちに交渉を持ちかけに来た」
「交渉……?」
「そう。話はそこの弓を構えてるあいつに武器を下ろしてもらってからにしようか」
振り返ると、入り口付近で無表情のまま、弓を構えるアカネの姿があった。
アゼムがジェスチャーをすると、彼女は弓を下ろす。
……気のせいかもしれないが、前見かけたときとは雰囲気がまるで違う。表情は険しくなり、言葉からは落ち着きを感じる。
「安心しなよ、今の俺に敵意はないし、ここで戦闘を選ぶほどバカじゃない。退路も塞がれてるからね」
そう言うそいつの背後には、暗闇からこちらを見つめるファントムが佇んでいるのが確認できた。
「……その必要がない。っていうのは、一体どう言うことだ」
お楽しみいただけましたか?
もしかしたら百五十話とかまで行っちゃうんじゃないかな。
では、また次回。




