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何でも屋に招かれた記憶喪失で妖刀使いの僕は、全ての依頼を切り刻もうと思います。  作者: 失踪 -Sisso-
第一部 『黎明奇譚 Restart The World』

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第八十審  『Can you see me?』

失踪です。

八十話記念。

一見誰もいないように見えるこの空間に直立したままの俺の頬を、何者かが切った風が撫でる。


先程、天井が突然抜けて、監視カメラに映っていたあいつが飛び込んできた。


電子機器に囲まれ、モニターからの光が周辺を照らす薄暗い部屋の中、そいつが残す僅かな痕跡も見逃さぬように、絶えず視線を動かし続け姿を追って見せようと試みるが、結果は言うまでもない。

特別動きが早いわけでもなさそうだが、問題は異能力の精度の高さだろう。


全くと言っていいほど『見えない』。対妖者用に開発された監視カメラにすら、痕跡ひとつ残らないレベルの精度だ。

肉眼で見破るのは至難の業なんてレベルじゃない……!!


「後ろだ」


声を聞き取ってからでは遅かった。

振り向いた瞬間に視界に飛び込んできたのは発砲によるフラッシュ。

咄嗟に顔を守るように片手を(かざ)すと、激しい痛みと共に、手元を液体が流れる感覚を感じ取る。


痛みで顔を歪めたその一瞬のうちに、そこにいたはずのそいつは再び姿を消していた。

このままでは(らち)が明かない。それどころか俺から攻撃を仕掛けられないまま厳しい状況が続くことは容易に想像出来る。


「姿が捉えられないのなら、やることはひとつ……!」


指揮をするように手を薙ぐと、天井から数台の銃火器が顔を覗かせる。

見えないだけで、当たらない訳では無い。これまでの行動を監視していた俺はそう解釈した。

懐から取り出したピストルを片手に構え、間もなくして機銃掃射が開始される。


薄暗い室内は一気に明るくなり、四方に弾を撒き散らす銃火器と、隠れ場所を潰していくように細部を撃ち抜いて確認していく俺によって、瞬く間に室内は荒れていく。


そのような状況が一分程度続いただろうか。一度掃射の手を止めて周囲を見回した。

舞い上がった書類。弾丸を打ち込まれたモニター。地面を転がる薬莢(やっきょう)の音が響くその場所には、やはり人の気配は無いように思える。


ふと、書類が舞っていた一点に視線を向けると、先程まで何も無かったはずのその場所に、書類の隙間から一瞬そいつの姿が見えた。

瞬時に再度掃射を開始するが、手応えは得られない。


「甘いね」


瞬きをした瞬間に目の前に現れたそいつは俺が抱えていたピストルをナイフで弾いて体勢を崩させ、立て続けに攻撃を加えようと刃を振るった。


しかし、その瞬間に俺とそいつの間に滑り込むように飛来した機械の破片によって隙を作ることに成功し、即座に再び大きく距離をとってピストルの引き金を引く。

だがその一瞬ですら、そいつの姿を捉えることは叶わなかった。


「クソっ……!!」


痺れを切らした俺は目の前に手を伸ばし、それと同時に周辺の複数のモニターの画面が点滅を始める。


間もなくしてそれらを媒介として部屋全体に電気が放出され、視界は激しく点滅した。


手応えは……なし。

一応少し歩いて周囲の様子を確認していくが、それらしき姿は見当たらない。


「君みたいなのが相手で助かったよ。俺と似たような妖者なんていくらでも前例があるだろうに」


背後に気配を感じた俺は振り返ることなく横目でそいつの姿を視界の隅に確認しながらその声を聞きとった。

見たところ、現在そいつと俺は背中合わせの状態らしい。


「それとも、直接対面したことはなかったかな?これでも学習したつもりなら、どうしてメインウェポンを銃火器にしたのか聞きたいね。こんなのじゃあ接近されたら無力化したものと変わらないじゃないか」


余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)といった様子で、そう語るそいつは鼻で笑う。


「もしかして、自分諸共標的を蜂の巣にする覚悟があったとか?放電による攻撃も、自分を巻き込む覚悟でやられてたらさすがにマズかったかもね」


背後のそいつの気配が少し遠ざかったかと思えば、背中に金属のようなものが押し当てられた。


「今回は、殺すつもりは無いよ。早く助けが来るといいね」


一発の銃声。迸った激しい痛みと共に俺は気づけば地面にうつ伏せになっていた。


「『ずっと目の前にいたのに』、気づかない君はアホらしくて面白かったよ」


その言葉を最後に、俺の意識は闇に堕ちた。

お楽しみいただけましたか?

去年の分を使い切りました。次回からは新しく書いたものを投稿していきます。


では、また次回。

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