第七十九審 『違和感の正体』
失踪です。
去年執筆した分を消費しきりそうです。
あの後、何度も、何度も刀を振るっても、決定打と言えるような攻撃を加えることはお互いに出来ていなかった。
やはり、互角。寸分の狂いのない実力の差。
こいつが言っていたことに間違いはないようだ。
しかし、お互いに決定打を与えることが出来ないのであれば、僕に備わっている『刀の力』を活かして勝ち切るしかないのだろう。
応えるように、振るい続ける刃が紫色の輝きを強めた。
二度、大きく刀を振るい、斬撃を打ち出すと、そいつは迫ったその斬撃に刃を添えるようにして体を逸らし、弾かずに受け流す。
続いて腹部に迫る二発目も、刀を反転させて刃先で僅かに方向転換させた。
距離を詰めた僕が振るった刀は容易く受け止められ、互いの刀が交わった状態で、接点からは激しく火花が散る。
僕は刀を弾き返すと、再度刃を振るってくるだろうと予想して構えたが、読めていたかのように放たれた蹴りが僕の腹部に直撃した。
その衝撃で弾き飛ばされ、地面を転がるが、体勢を持ち直して地面を滑るように減速。間髪入れずに再びそいつに向かって駆け出す。
刺突された刃を既のところで回避し、晒した隙に叩き込むように片手で刀を振るうと、刃先は仮面の頬を斬って通過した。
更なる追撃に出ようとした瞬間、刀を握っていた手の手首を勢いのままに掴まれ、気づけばそいつが振るった刃が目の前に迫ってきている。
咄嗟の判断だった。頭上から額目掛けて迫る刃を素手で掴み、僕の表情は一瞬、痛みで言い表せないほどに歪む。
「ッ……ハハ」
手首を伝って滴る血液が顔に付着し、視界の一部が赤く染まりながらも僕は笑いを零した。
「受け取りな!!」
そのまま僕は刀を槍のように握り、そうそいつに告げた。
そいつには、再び思い切り刀を振りかぶった僕の攻撃を刀から手を離して回避するか、回避せず直撃を選ぶかの二択が迫る。
だが、答える間もなくして飛び散る鮮血により答えが提示された。
刀を握っていた方の腕の肩に突き刺さった刀を引き抜いて、そいつは頭部を狙って放った僕の蹴りを仰け反って回避すると、続く追撃もそのまま体を反らせ、屈み、軽々と回避していく。
僕との距離を取ろうとするそいつに対して、僕は更に紫色の輝きを放った刀を振りかざし、斬撃を打ち出した。
数発放たれた斬撃は、いずれも完全に回避することは叶わず、浅い傷から僅かに血が飛び散る。
その最中、隙を逃さぬように距離を詰めて、握りしめた拳を振るい、そいつの腹部に叩き込んだ。
微かな呻き声と共に、そいつは数米地面を転がるが、間もなくして刀を抱えて立ち上がる。
「不思議なもんだなぁ……お前の刀は」
そいつは俯いたまま僕が抱えている刀に視線を向けた。
「俺も見た事はない。珍しいタイプの『遺術物』だなぁ……そんなもの、どこで拾ったんだ?それに、その刀からはお前の力を吸い取っている何かの意志を感じ取れる……。もしかしてその刀、元は『誰か』だったんじゃねぇのか?」
数秒間の沈黙の後、聞き覚えのある声が通信機から耳に飛び込んで来た。
『アゼムです。こちら脱出完了しました。既に道を辿って外に出ることができるようになっているはずです。外で待機していますので、どうかご無事で』
その言葉を最後に通信は途絶えた。
更なる数秒の沈黙の後、そいつは血を滴らせながらも片手で握っていた刀を地面に落とし、大きくため息をつく。
「…………行け」
「……は?」
「勝機が見えねぇ。それに、今仲間から連絡が入ったんじゃないか?俺は重症を負った。強引に撤退されちゃあ今の俺には追いつくことすら不可能だ。これ以上やり合う意味を感じない、行くなら行け」
「……良いんだな」
「あぁ、勝手にしな」
それを聞いた僕は警戒を解かずに刀を鞘に納め、身を翻して走り出すのだった。
お楽しみいただけましたか?
そろそろ、なろうで活動し始めてから書いた分に手を出さなければならなくなる頃です。
では、また次回。




