第八審 『行動隊β』
失踪です。
このくらいの文字数で安定するといいですね。
「……って言うわけでこのガキを行動隊で引き抜くことになった」
「ガキじゃないし!」
その翌日のこと。ホタルは頬を膨らませて反論するそいつと僕を交互に見ながら苦笑いを浮かべた。
「えっと……ごめん、簡単にでいいからもう一回説明してもらえる?」
「僕らが捜査していた行方不明事件の犯人がこいつで、拠点に連れ帰ってきたらルナに行動隊で引き抜いてみたらと提案されたんだ。近衛局に引き渡す訳にも行かなさそうだったから、仕方なくそうすることにした」
「なるほどね。この子が行方不明事件の犯人だったんだ。こんな可愛い見た目なのに、なかなか強いんだね。……ところで、その斧はどこから持ってきたの?」
「ルナからも聞かれたんだが。これそんなに気になるか?これはこいつの家から持ってきた物だ。持って帰ってくるつもりはなかったんだが、気づかないうちに持って出てきてたらしい」
「いいよ、それあげる」
「え、マジで言ってんのか」
そんな適当にあげていいものでもないような気がするが。まぁ丁度打撃の限界を感じていたところなため、有難く頂いておくことにしよう。
「ま、まぁとにかく!これからよろしくね!私は硯 ホタル。ホタルって呼んで。こっちは─────」
「僕はハルサだ。好きなように呼びな」
「ホタル……ハルサ……。うん、覚えたよ。私はエナ、よろしくね」
「ところで、ハルサは今日どこか行く予定とかあるの?」
「あぁ、近くの街の方に出かけてみようかなと。元々スラムから出たことがなかった身だからな。少し興味が湧いたってところだ」
「分かった、行ってらっしゃい。今日はこの子と一緒に施設を回ってみることにするね」
その言葉を背に受けながら、相槌だけ短く返して僕は彼女の部屋をあとにした。
……そういえば、今日は戦う予定なんて無いのに、何故斧なんて持ってきているのだろうか。
刀は常備するようにしている為、これは置いてから出かけることにしよう。
そう考えながら廊下を歩いていると、もはや見慣れた顔が僕の前に姿を現した。
「おや、ハルサ。今日はお出かけかい?」
「まぁそんなとこだ。少し街の方に出てみようかと思ってな」
「いいね。楽しんでくるといいよ」
そう当たり障りない返事をする彼女に、疑問に思っていたことを投げかけてみた。
「……ひとつ聞いておきたいんだが。前話した通り、僕はエナの屋敷で化け物を二体殺した。それもエナ本人の前で。それなら、あの化け物を親だと認識しているあいつの目には、『親が殺された』って映るものなんじゃないのか?」
「それは私にも分からないけど、あれを親だと認識している以上、それに関連するものは自分に都合よく改変した上で情報として受け取っているのかもね。もしくは、あの屋敷では時間を置けばもう一度蘇ってきたり……ってことが起こる可能性もゼロじゃない。あれだけの人数を事件に巻き込んでおいて、その化け物が倒された回数が君の分たった一回だけだと思うかい?」
確かに……。一度にあれだけの人数巻き込んでいるのなら、僕以外にも化け物を倒して屋敷から逃げ出したやつがいてもなんら不思議では無い。
であるなら、何かしらの条件を満たすと復活すると考えるのが妥当なわけだ。
「とにかく……あの子の過去とか、両親について過度に触れないようにね」
そう言って手を振って去っていくルナを横目に、僕も出口に向かって歩き出した。
ℵ
橙色の空。それなりに涼しい夕暮れ時。僕は人通りが少なくなり始めた街路を一人歩いていた。
このような場所は任務の行き帰りでたまに通ったりした程度だったが、改めて見るとスラムとは活気も人の数も段違いだ。
これまでの殺伐とした空間から逃れられつつあるからか、肩の力を抜いて休憩出来ていると感じる。
少し休もうと思い、その辺にあったベンチに座って一息ついていると、視界の隅で何かが蠢いたような気がした。
「こんにちは!こんなところでなにしてるの?」
……誰だこいつは。人違いじゃないだろうか。
隣から僕の視界に映り込んでくるそいつを、横目で確認するだけして無視することにした。
「え?無視?突然声をかけたからって無視は酷くないかなぁ?これはBetter Tomorrowの新人として有るまじき行為だと思うよ?」
「……ん?待て、今Better Tomorrowって言ったか?」
お楽しみいただけましたか?
そろそろキャラの命名の法則に気づいた頃でしょうか。
では、次は第九審でお会いしましょう。




