第七審 『魂の意思』
失踪です。
タイトルに英語を使いたいんですけど、あんまり使ってる人見かけないですよね。使わない方がいい理由とかあるんですかね?
「クソっ……!待ちやがれ……!!」
壁には既にヒビが入り始めており、この距離だと全力で走っても逃げ切られてしまうだろう。そこで僕が取った手段は、かなり博打に近しかった。
「受け取れ!!!」
走りながら手元の斧を大きく振りかぶり、振るうと同時に手を離す。
その斧はたった今壁を破壊し終え、走り出そうとした化け物の背中を切り裂き、貫通して地面に突き立てられた。
地面に膝を着くそいつの頭上をスピードをそのままに飛び越え、突き立てられていた斧を手に取り、振り下ろしたそれは化け物の首を切り落とした。
徐々に姿が薄れていくその化け物だったものが抱えていた少女は、僕と目が合うや否や抱えていたライフルの銃口を僕に向ける。
「投降しろ。銃を下ろせ」
同時に僕も、片手に抱えていたピストルを構えた。距離を詰めてきた際にどさくさに紛れて拾っていたのだ。
「……あなたは、何者なの?」
「僕は何者でもない。人らしい身分すら持ち合わせていないもんでな」
「私をどうする気?」
「少なくとも僕は酷い目に遭わせるつもりは無い。早く銃を下ろすんだ」
「その銃、本当に弾が入ってるの?さっき投げ捨ててたの、見逃さなかったよ」
「お前が引き金を引いたら分かることだ。そうしたら、僕の弾丸がお前の頭を貫く」
「嘘ね、ならさっきはなんで────」
言葉を遮るように一発の銃声が僕ら二人の空間に響き渡った。
火薬の匂い。銃口から立ち上る白煙。
弾丸はそいつの耳を掠めて通過し、壁に埋め込まれていた。
再度額に照準を合わせて告げる。
「……早く武器を下ろせ」
一瞬にしてそいつの表情に畏怖の感情が浮かび上がり、震える両手でゆっくりとライフルを地面に置いた。
両手を挙げたことを確認すると、ゆっくりと近づいてライフルを回収する。
「来い。行かなければならない場所がある」
ピストルを下ろし、僕らは玄関に向かって歩き出した。
こいつが居ればここから外へは出られるだろうが、ここで死んだ奴らはどうなるのだろうか。
……まぁ、それは後で本人にでも聞いた方が早いかもしれない。今はとにかくここを離れることが最優先だ。
最後の一発を使い切ったピストルをその辺に放り投げ、僕らはその場を後にするのだった。
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「……それで、ここに連れ帰ってきたと」
「そういうことだ。こいつをここからどうするかとかは、一旦考えるべきかと思ってな」
僕たち二人に見下ろされる椅子に座らされた、フリルの目立つ上品な装いのその少女は、膝に手を置いて俯いている。
にしても、戦闘時に見せたあの様子とは真逆に、今はかなり落ち着いているように見える。なにか理由があるのだろうか。
僕らも同じように対面の椅子に座っていた。
「とりあえず、どういう流れでこの状況に至ったのか、もう一度詳しく説明してくれるかい?」
「そうだな……。まず、僕らがパラサイトと名乗る人物と鉢合わせた時のこと。あの時、森の中に妙に違和感を感じる場所を見つけたんだ。まるで元々あったものがその時だけ無かったことになっていたのではないかと思うような。その場所に再度向かってみた結果、見上げるほどの大きな屋敷が現れていた。その屋敷に足を踏み入れると、玄関にいたメイドに屋敷を案内され、案内された先には何十人もの人間が一同に席に着いている状況。理解できないまま、僕は椅子に座らされ、周囲の人々は用意されていた食事を食べ始めた。僕はそれに一度も手を付けなかったがな。そこからが問題だ。数十分後、部屋の照明が落ちたかと思えば、突然悲鳴が上がった。再度点灯すると、そこに居たのは血飛沫を上げて倒ている人と、返り血を浴びた人型の化け物。その化け物はこいつを庇うような様子を見せたから、それを倒してこいつを連れ帰ってきた」
「なるほどね。その斧は、君が言う化け物を倒した時に使ったものなのかな?」
「そうだ。この斧は─────」
そう言いかけて自分の近くに立て掛けてあるものに視線を向けた時、少しの間思考が固まってしまった。
あれ、持って帰ってきてしまってたのか。
「突然現れた屋敷からそんなもの持って帰ってきて大丈夫なのかい?まぁ、それはいいとして、話を聞く限り行方不明事件の真相はその屋敷ということで良さそうだね。その屋敷は、君が作り出したものということかな?」
ルナはそうやってその少女に問いかける。
すると、そいつは少し顔を上げて、ゆっくりと言葉を並べ始めた。
「……お屋敷に、食べさせてたの」
「え?今なんて……」
「異能力の発動、もしくはその維持に人が必要、ということかな?」
「多分……そう、だと思う」
「それであの屋敷に訪れた人が行方不明になってたわけだ……。屋敷は君の異能力で出現させてたってことで間違いないかい?」
「うん、あれは私のお家。好きな場所に作り出せるみたい」
「屋敷で死んだ人達は言う通り『食べられた』ことになるんだろうな。それで、キラーとしての役割を担ってたあいつらはなんの関係があるんだ?」
「あれはお父さんとお母さんだよ。あの二人が来た人をお家に食べさせてるの」
「あれが……?どうやったらあんな姿になっちまうんだ」
「あんな姿って?二人ともいつも通りだよ?お母さんもお父さんも仲良しで、毎日楽しそうにお喋りしてるもん」
「いや、恐らくそれは─────」
言いかけた瞬間、隣に座っていたルナが、僕の口元を片手で押さえ込んだ。
そして、少し焦った様子で話題を逸らすように違う話を彼女に振る。
「そういえば、まだ君の名前を聞いてなかったね。何歳かも教えてくれると助かるよ。それと、屋敷にいるメイドについても教えてくれるかい?」
「『柳 エナ』、十六歳。あのメイドさんは、お父さんとお母さんが雇った人。ご飯とかもあの人が作ってくれてる」
恐らく玄関から僕を案内したあのメイドのことだろう。あの人は別に変わった様子はなかったが……。
そんなことを考えている間に、彼女は僕の口元から手を離した。
「さて、ハルサ。この子はどうしようか。現状、実力主義のこの国では、このような形の殺人は凄く重たい罪になるわけでもないし、近衛局に突き出すのが必ずしも正解だという確証も無いよ。まぁまず、こんな子供が異能力を巧みに使って行方不明事件を起こしていただなんて言ったところで、まともに取り合ってくれるかすら分からないしね」
言われてみれば確かに……。
異能力を完璧に扱えるようになるにはまだ早いのではないかと聞かれれば、否定しきれないところではあった。
通常、個人差はあるものの、異能力は十四歳頃から徐々に発現、発達していき、完璧に扱えるようになるには数年間と時間がかかるものだ。
人によっては二十歳を過ぎても発現しない人もいるのだから、こいつの歳で異能力を完璧に扱えると言っても信憑性に欠けるのは事実だろう。
「……ハルサ、いい考えがある。聞くかい?」
嫌な予感がした。
だがそれ以上に助け舟が欲しい状況でもあったため、躊躇いながらもゆっくりと頷いた。
「この歳で君が言うレベルで異能力を使えるのなら、言うまでもなく将来有望だよね。理解度はあまり高くないように見えるけど、それはこれからどうにでもなることだ」
そこまで言われて、僕は予想通りだったと言わんばかりに両肘をテーブルに着き、両手で顔を覆った。
「君の行動隊で引き抜くのはどうだい?君たちにとっても、かなりの戦力になってくれるだろうしね」
お楽しみいただけましたか?
喋り方に特徴を出すのって、キャラが増えてくると難しくなってきますよね。
近衛局は、僕らの世界で言うこの領土の警察みたいなものです。
では、次は第八審でお会いしましょう。




