第六審 『Six Feet Under』
失踪です。
シンプルに第六審とか何したらそんなことになるんでしょうね。
ちなみにですが、ハルサとルナは両方とも白髪の和服、ハルサの髪型はポニーテールみたいなビジュアルで想像しています。僕の癖に沿って作られたキャラなので。
薄暗い館内に悲鳴が絶え間なく響き渡る。
慌ただしい物音、さらには肉が抉れ、血が飛び散る音までもが耳に飛び込んできて、片時も静寂など訪れない。
僕は廊下の角で、壁に背中を付けて周囲の様子を伺っていた。
今はとにかく、あの化け物への対抗策を考えなければ、この事態は収まることは無いだろう。
そこで僕は通信機があることを思い出し、電源を入れてみるが……ノイズが鳴り響くだけで反応はない。
先程確認したが、当然のように出入口は施錠されており、そう簡単に外には出させて貰えないようだった。
「なら、あいつをどうにかするのが最優先だろうな……」
そう呟いて歩き始めるが、その視線の先には既に肉塊が転がっていた。
だが、転がっていたのは肉塊だけではない。
「……これ、借りてくぞ」
もう返事をすることすらできないそれに語りかけ、転がっていたピストルを拾い上げた。
遠距離での攻撃手段を持たない僕からしたらかなり丁度いい武器ではあるため、有難く頂いていくことにしよう。
刀を抜くのが難しいとすると、近接戦では打撃しか対抗する手段が無い、何か他に武器を回収出来ればかなり安心できるのだが……。
流石にあの図体の化け物に打撃だけで挑むのは自殺行為に他ならないだろう。
そんなことを考えながら歩き回っていた時、とあるものが目に入った。
「……勝手に借りていいんだろうか」
独白しながら手にしたのは、甲冑のオブジェが抱えていた斧。
見る限りしっかり刃は研磨されている。武器と言うには十分な程度だろう。
使い慣れない武器だが……まぁ大丈夫か。
少し手元で回転させてみると、先端に重みがのしかかるそれは、いつも振るっている刀とは大きく異なった感覚を齎す。
僕はその斧を抱えて歩いて再び探索を始めることにした。
あの時、広間が暗転した瞬間に聞こえてきた詠唱……。
恐らく、あれによってあの化け物は顕現したのだろう。だとするなら、詠唱した本人を討てば事態は収束するのではないだろうか。
「なんにせよ、とにかくその化け物を遣わせている本人を探さなきゃ始まらないな……」
そうこうしている間に、周囲から聞こえていた悲鳴は鳴りを潜め、館内には僕の足音だけが響いていた。
……だが、不思議だ。
あれだけの人数が招かれていたはずなのに、僕が目の前にしている廊下には血飛沫ひとつ残されていない。
この規模の人数を巻き込んでいるのなら異能力を使用可能な人間が混ざっていてもおかしくないのだが、目立った状況の変化が見られないということは、大した成果が得られなかったのだろう。
そうだとするなら、あの化け物の強さはそこらの有象無象のような半端なものでは無いということにもなる。
そんなことを考えながら歩いていた時、付近から叫び声が上がった。
反射的にその方向へ走り出して分かれ道に差し掛かった時、その化け物が血肉を切り裂き、肉塊を作り出す瞬間が視界に飛び込んで来てしまう。
その瞬間、そいつと目が合った気がした。
だが、気になったのはそこではない。
その化け物の後ろに、少女の姿らしきものが確認できた。加えて、それと同じような個体がもうひとついる。見間違いではないはずだ。
複数体居るとは考えたくはなかったが、どの道こいつらを倒さないと話は進まないだろう。
それに、その後ろに控えている少女についても気になるところだ。
「みーつけた。あなたが最後の一人ね」
その少女は抱えていた黒い何かをそれをこちらに向けてきた。
闇に溶け込んでいて存在にすら気づかなかったが、月の光に照らされてその正体が顕になる。
「ライフル……?!」
「アハハハッ!!!」
狂気に満ちた少女の笑いが反響した次の瞬間、激しい銃声と眩いマズルフラッシュが周囲に撒き散らされる。
咄嗟に曲がり角を利用して身を隠した。
呼吸を整え、銃声が止んだタイミングで飛び出そうとするが、角から視界に飛び込んできた巨体に、思わず足を止める。
振るわれた拳を反射的に回避し、斧を握り直して振りかぶり、柄で思い切り頭部を殴打した。
蹌踉めくそいつを蹴飛ばして距離を取り、角から飛び出すと、二体目の化け物もこちらへ距離を詰めてきているのが視界に入る。
瞬時に片手でピストルを構えて発砲。薄暗く、しっかりとは確認できないが、確かに弾丸はそいつの体に打ち込まれた。
怯んでいる様子も伺える。ダメージは通っているようだ。
数発打って銃を投げ捨てると、体勢を持ち直したそいつから目の前で振り下ろされた拳を回避する。
その拳は地面を突きぬけ、引き抜こうと隙を晒したそいつの腕に狙いを定めて斧を振り上げた。
黒い軌道を描いて振り下ろされたそれは、その化け物の片腕を切り落とす。
加えて、斧で殴打されたそいつは体勢を崩して近くの壁に打ち付けられる。
気づけば目の前まで迫っていたもう一方の化け物が薙いだ腕を姿勢を低くして回避し、斧を振り上げる……が、容易く避けられてしまった。
どうにも、そこまで簡単な話ではない。一筋縄では行かせて貰えないようだ。
その瞬間、再び廊下の奥で閃光が走り、銃声が鳴り響いた。
咄嗟に体を捻って回避を試みるが、その隙に化け物から振るわれた拳が目の前に迫り、僕はそれを斧の柄で受け止める。
体勢を崩してしまっていた状況でのことだったために、 大きく弾き飛ばされてしまった。
腕が痺れている……。郊外で戦ったAランクの妖者と同等、もしくはそれ以上の身体能力だろうか……。腕と斧がどちらも無事なのが不思議なくらいだ。
化け物はその図体で周囲の地面を揺らしながら走って距離を詰めてくるが、勢いそのままに放たれた拳を既のところで回避する。
その拳は、僕の後ろにあった壁に打ち込まれ、木片が飛び散った。
乗じて大きく斧を振るい、そいつの突き出されていた腕を切り落とす。
今が好機だと、そのまま流れるように斧を薙いだが、あと少しのところで回避されてしまう。
僕はカウンターに備えて斧を構えたが、何故かそいつはライフルを抱えている少女の元へ走り出した。
一体何をするつもりなのかと考えたのも束の間、そいつは腕に少女を抱えて近くの壁を蹴り始める。
まさか、壁を破って逃げるつもりなのか?!
「クソっ……!待ちやがれ……!!」
お楽しみいただけましたか?
武器の扱いや身体能力など、ハルサのフィジカルがかなり出た回でしたね。
スラム育ちは伊達じゃないようです。
では、次は第七審でお会いしましょう。




