第七十七審 『無個性な人間』
失踪です。
しばらく予定が詰まってて、予定通りに投稿できそうにないので今日のうちに予約しようか迷ってます。
そうして僕らは下ってきた階段を昇って入口があったフロアにたどり着くが、やはり一筋縄では行かない。
僕らの前に立ちはだかったのは分厚い鉄扉……というより、鉄壁そのものだった。
「……開きそうにないな」
「触れて見た感じ、かなり分厚いですね。先手を打たれてしまっていましたか」
「アゼム、壊せないのか?」
「このくらいであれば余裕です。離れていてください」
一歩後ろに下がった瞬間、アゼムが手を触れていた場所を中心に壁が凍りつき初め、衝撃音と共に人が一人通れる程の大きさの穴が空いた。
「……嘘だろ?軽く見積っても厚さ十糎はあるぞ……?」
「私を食い止めたいのならこれの三倍は分厚くしてくるべきです。さぁ、早く行きましょう」
しかし、とあることに壁を通り抜けてすぐに気がつき、僕らは同時に足を止めた。
「また壁だな……」
「……先程の彼があっさりと引き上げて行った理由が何となくわかったような気がします。さぁ、離れて」
彼は同じように壁に手を触れると、間もなくして再び穴が空いた。
「さぁ、行きましょう─────」
「アゼム、誰か来るぞ」
その言葉に、アカネの視線の先に瞬時に体を向け、数歩前に進み出て刀に手をかけた。
足音などはしなかったが、暗闇に包まれている廊下の向こうからは明確に人の気配を感じる。
「アゼム、先に進んでいてくれ。今ここに邪魔者が入ると脱出は難しくなるだろう。辿り着かれる前に、僕が前に出て食い止める」
「……わかりました。どうかご無事で」
背中にその言葉を受けると、僕は来た道を引き返し始めた。
それから、十数秒歩いただろうか。
詠唱を行い、刀を引き抜くと、薄暗い周囲を紫色の光が照らした。
軈て、足音を響かせながらこちらへ向かってくるそいつの姿が明らかになる。
「……どうも。さっきぶりだな」
「仮面、もう代わりを用意したのか?」
「あぁ、これは俺にとっての必須アイテムなんでね。予備はいつだって抱えているよ」
「……もしかしてだが、お前は僕の『何か』を知っているのか?」
「あー……。勘違いしているようだが、俺はお前の何でもない。そう、俺とお前は無関係だ。俺はお前について、捕縛した奴らの仲間としての情報以外は知らされていないし、お前も俺に関しての情報は知らないはずだ。そこまで有名人じゃないからな」
「お前がなんと言おうが、僕の目に狂いは無かったはずだ。それとも、お前がそういう異能力を持っていたりするのか?」
「まぁ、そんなところだ。俺が持っているのは『指定した対象に成る』異能力。お前の異能力、身体能力、見た目、全てを模倣できる。だが……」
確かに、そう考えれば全ての辻褄が合う。
実力がほぼ互角だったことも、僕と顔が酷似していたことも。
そいつは何かを言いかけ、数秒間沈黙した。
「ちなみに、ここで俺を足止めしても無意味だと言っておこう。お前は俺を仲間の元に辿り着かせたくないんだろうが、ここには俺以外の妖者もいる。追っ手が到着するのも時間の問題だ」
「知っている。だが目の前の問題を解決するのが最優先だ」
「言っただろう。それは『勇気』ではない。それでもお前は、自ら地獄に身を投じることを選ぶというのか?」
「あぁ。それに、分かっている。それは仲間を捨てる理由にならない。それだけだ。お前には聞きたいこともあるしな」
「頑固だな。お前を抱えている組織は苦労しているだろう」
「あぁ、これからも苦労をかけてやるさ……!」
その言葉を皮切りに、両者は共に刀に手をかけ、唐突に戦闘が開始された。
ℵ
マズい。かなりマズい。
俺は今、立てられた鉄製のテーブルに凭れてピストルのリロードをしていた。
あの後、足早に部屋を出ると、次々に廊下が鉄扉で封鎖されていき、気づけば俺は行き場を失っていた。
前も後ろも行き止まり。唯一そこにあった部屋の中に入ってみたのだが、誘い込まれていたのかもしれない。
お楽しみいただけましたか?
仮面の彼、かなり特殊な異能力ですね。
では、また次回。




