第六十九審 『Into the Gray』
失踪です。
白だの黒だの言ってましたけれども。
傘持ってない日に突然雨降り出すと割と絶望しますよね。
「…………は?」
「……まぁそうもなるか。ただ、これが事実である都合上私にはこう説明する以外に方法がない。この状況を飲み込めないのも悪いことではないだろう。取り合えず落ち着いて聞け」
アカネと名乗ったその女は、一度武器を仕舞って話を続ける。
「親となるドゥームズデイが開通させた門は、展開と同時に周辺で同じような門がいくつか生成される。それらは親を潰さなければ除去不可能だ。早い話、親を潰せば全て解決するんだが、それを守るかのように次現獣のリーダーらしき黒い龍が周囲一帯を陣取っている。そのリーダーと今戦っているがルナという訳だ。簡単に言うなら、私たちがやらなければならないのは湧き出てくる次現獣の処分と、『門』を抑え込むこと。住民の退去が済んだのならすぐにでも応援に向かうべきだろう」
話終えると同時に、通信機から聞き覚えのある声が語りかけてくる。
『こちらアゼム。周辺の住民への呼び掛けが完了しました。そちらはどうですか?』
「同じくだ。それと、お前が言っていたであろう仲間の一人と合流した」
『アカネさんですね、了解です。では、彼女には私と同じように残って周辺の次現獣を掃討するようにお伝えください。あなたはルナさんの応援をお願いします』
短く返事をすると通信は途絶える。
僕は再び目の前のそいつに向き直った。
「アゼムから連絡だ。僕ルナの応援に、お前はアゼムと残って周辺に湧いている化け物を掃討するように、とのことだ」
「了解。呼びかけた圏内よりも外に奴らが逃げ出さないようにする為だな。そうと決まったならさっさと向かってやれ、いくらルナと言えど、あれをどれだけ抑え込めるかは未知数だ。……にしても、お前は会って間もないアゼムに随分信頼されているんだな」
「……え?ま、まぁ……」
「あいつが頼りにしているんだ、ベストを尽くして来い」
その言葉に僕は頷き、彼女に背中を向けて走り出した。
ℵ
あの後、僕はルナと別れた場所に向けて走り続けた。
余程激しい戦闘をしているのか、目的地に近づくにつれて段々と地面や空気が震えているのが、体で感じられるようになってくる。
辿り着いた建物の薄暗い階段をひたすら駆け上がり、軈て到達した屋上の扉に体当たりして強引に通過していく。
そのまま僕は屋上を一直線に駆け、勢いのままそこを囲う柵に足をかけて屋上の枠組みの外へ飛び出した。
その瞬間、見下ろした先に映ったのは、かなりの大きさの……白と黒の『龍』のようなものが二匹。
一方の近くにいたルナは僕の存在に気がついたようだ。つまり、白い龍は味方側か。
「『妄執』、『喪失』、『果たされぬ過去との調和』……力を……寄越せ……!!」
その瞬間、これまで以上に強い輝きを放つ刀身が、鞘から顔を覗かせる。
同時にオーブが浮かび始めた空間ごと断ち切るように、僕は大きく振りかぶった刀を振り下ろした。
斬撃が打ち出された瞬間にオーブが消え去り、それは一直線に向かっていった先で轟音と共に砂埃を巻き上げる。
それを確認してから再度刀を振りかざし、斬撃を打ち出すと同時にその反動で後ろへ押し返された僕は、そのままの勢いで地面に着地した。
地面を滑って砂埃をあげながら、こちらに襲いかかる龍の攻撃を受け流す。
「ルナ!周辺住民への呼び掛けは済んだ、アゼム達は街中の化け物の対処に回って────」
その瞬間、話を遮るように振りかざされた巨大な爪が僕に襲いかかる。
力任せに振るった刀はそれとぶつかり激しく火花を撒き散らし、一度は弾き返すことに成功したが、続けざまに次の攻撃が迫った。
「下がって!!」
その言葉通りに反射的に後ろに下がると、そこにいたであろうルナの手が肩に触れた。
すると、瞬きした瞬間に僕らはその化け物の背後に移動しており、僕はそれに瞬時に気がついて再び刀を振るう。
ただ、攻撃が当たる前に気づかれてしまったようで、振り向きざまに僕の刀を受け止めたそいつと僕は数秒間に渡って睨み合いになる。
「その図体でどうやったらそんなに早く動けるんだよ……!!」
「『食屍龍』《グール》!!!」
背後でルナがそう叫んだ瞬間、先程も目にした白い龍のようなものが横から僕と押し合っていた黒い龍に襲いかかる。
それにより僕は攻撃から逃れることに成功するが、ルナは僕が今まで見たこともないような苦悶の表情を浮かべていた。
お楽しみいただけましたか?
次で七十話ですよ。
では、次は第七十審でお会いしましょう。




