第六十七審 『陰陽の龍』
失踪です。
クリーチャーを使役して戦うキャラってかっこいいですよね。
〜現在〜
「……お前、『あれ』を、使ったな?」
「あぁ、勿論。彼女に時間をかける訳には行かなかったし、時短を図るのなら使わざるを得ないと判断した。まぁ、まだ生きてると思うけど、それなりに重症だろうね」
「そこで、情けをかける意味は、あったのか?」
「自己満足に過ぎないよ。君たちは本気を出せないのに、私が彼女を殺すのは不平等だろう?……でも、本音を言うのなら、君たちの行動の詳細が読めないから、だね。何かが引き金となって方針を突然変えるかもしれない。私たちを殺しにかかってくるかもしれないと考えたら、ここで彼女を始末するのはリスクがあると考えたのさ」
「変わらず、理性的、だな」
「で、君はこれからどうするのかな?これで三対一になったわけだけど、流石の君と言えどこの人数を相手にするのは辛いんじゃないかな?」
「……そう、かもしれない」
そいつはそう言うと、ため息をついて構えていた杖を下げ、地面についた。
だが僕たちは警戒を解くことはなく、ルナと会話するそいつを一点に見つめ続ける。
刹那、どこかから何かとてつもないものが迫ってくる感覚を一瞬にして全身で感じとってしまう。
「だが、このままお前たちを、ただ見逃す訳にはいかない」
「二人とも!避けて!!」
言葉を遮るように叫んだルナの声が周囲に反響し、僕らは咄嗟に罅割れ始めていた地面を突き破って飛び出してくるものを回避する。
そいつの周囲の地面は崩れ落ち、そこからは紫色の炎のような、オーラのようなものが勢いよく溢れ出していた。
「歳若き白髪の戦士よ。お前のその目に、私はどのように映っている?年月を経るにつれ、人ならざる者へと変貌していく私が不幸に見えるか?だが、これよりお前を待ち受けるは地獄そのもの、過去の己すら思い返すことの出来ないお前に一体何を成せるというのだ?この物語は、地獄に耐えかねたお前によって、お前のその手によって終幕を迎える。その時は、私が『地獄で祝福して』やろう」
先程までとは打って変わって、言葉を区切らず畳み掛けるそいつは、途絶えることなく言葉を紡ぎ続ける。
「『異界接続』《クロス・オーバー》、お前たちに、最初の地獄を見せてやる。私たちを止めるなどという理想論を並べるのなら、先ずはこいつを打ち破って見せろ」
眩く紫色に輝く杖を掲げた瞬間、そいつの周りから吹き出していた紫色の炎が、より一層勢いを増す。
「仕事だ、『漆獄龍』《イル》」
その瞬間、炎の中から龍のような鱗を纏った巨大な獣が姿を覗かせ、耳を塞ぎたくなるような途轍もない咆哮を上げた。
それが完全に姿を現した時、そいつは僕らに背中を向ける。
「私は……失礼する。お前らが如何にして、こいつを抑え込むのか、見もの……だな」
言い残すと、例の如くそいつは生成された裂け目の中に踏み込んでいき、姿を消した。
「ハルサ、アゼム、面倒なことになった。君たちは今すぐ周辺の人達に避難を呼びかけてくれ。ここに来てる他のオペレーターもここに集合させるから、そっちは頼んだよ」
「なら、お前はどうするんだ?」
「私はこいつを食い止める。現状この役割を担える人間は私しかいない。私がやらないといけないんだ」
僕らに背中を向けて少し前に進み出た彼女は、視線だけもう一度僕らの方向に向けて、微笑みを浮かべた。
「安心しな、死にはしないよ。連絡だけ何時でも受け取れるようにしといてくれ」
そう言うと、彼女は何かを唱えた。
すると、近くの空間を引き裂いて、更に何かが顕現し、同じように咆哮を轟かせる。
「さぁ、行きな!!」
「ハルサさん、行きましょう。これより先の私たちには何よりも迅速な対応が求められます。避難を呼びかけるのは少なく見積って半径五粁圏内の住民、あなたは円を広げていくような形で少しずつ外側へ向かってください。私は外側から同じくあなたがいる方向に向かいます。他のメンバーと合流したなら、念の為私に連絡をお願いします。では、健闘を祈ります」
彼は言い終えると、杖で数回地面を叩きつけ、地面に描かれた魔法陣が完成して光り輝くと同時に姿を消した。
それに合わせて、僕も刀を鞘に納めて走り出したが、そこで僕はとあることに気がつく。
そういえば、僕に連絡先を渡してきたやつが居たはずだ。まずはそいつに連絡した方がいいのではないか。
咄嗟に端末を取り出した僕は、足を止めることなく渡されていた電話番号を打ち込んで電話をかけ始めた。
『やあどうも、今日はいい夜だね』
「イザナギ、今はそんな呑気なことを言っていられないぞ」
お楽しみいただけましたか?
久々にちょっと体を動かしただけで体が言うことを聞かなくなりました。歳ですかね。
では、次は第六十八審でお会いしましょう。




